北の書6 ~思春期最大の悩み モテモテ男子~
愛理ちゃんはお手洗いに立った。その隙にアタシは自分のスマホを取り出し、素早くインターネットでとあるワードを検索してみる。
今の時代は便利なものね。ちょっと前までは関係ないページまで無数に検索結果に表示されていたけれど、今は関係ありそうなページをAIが自動的に選んでくれるんだから。自分の好みをAIに見透かされているみたいでちょっと怖いけど。
それはさておき、すぐに関係のありそうなサイトが出てきた。これ…中学生陸上の大会写真じゃないかしら?いくつか見ていると、『1等賞』の賞状とゼッケンを嬉しそうに頭上へ掲げている男子の写真が現れた。ゼッケンには小野、と書かれている。
「熱心に何か調べごとですか?」
いつの間にか愛理ちゃんが戻ってきていた。アタシは回りくどいことが苦手だし嫌いだから、この際本人に聞いてみることにするわ。
「ねぇ愛理ちゃんの好きな彼ってこの人?」
「えっ!あー私がお手洗いへ行ってる間に検索したんですね、そうですよ。私の中では一番のイケメンです!」
髪の毛はスポーツ刈りだけど端正な顔立ちで身長も中学生にしては高そうね。それにあの人に似てるわ…えぇっと誰だったかしら。イヤよね、最近パッと有名人の名前が出てこなくて。
「そうね、イケメンが好きなアタシの目から見てもなかなか高得点だと思うわ。」
素直に認めると、愛理ちゃんが身を乗り出してノッてくる。
「でしょ!この写真はたぶん地区大会の写真かな、ぶっちぎりの1位だったと学校中の噂になっていました。そのあとの全国大会は惜しくも優勝を逃しちゃったみたいですけど。あとルックスが野球選手のYuに似てて、学校ではオノユーって呼ばれてます。ただ彼は野球より陸上やサッカーが好きみたいで、いつもみんなからイジられてますね。」
さっきまで言葉少なめで控えめだった愛理ちゃんが急に饒舌になった。アタシには分かる、これは本気ね。こういう一面が見られるから女子会って楽しいしやめられないわね。
「あ、そうそうYu選手よ!アタシも誰かに似てると思ったわ。でもこのルックスで運動神経も良くて、背も高そうね彼。ライバル多いんじゃない?」
「はい、正直モテるみたいです。実際に結構な人数の女子が小野くんのこと狙ってるって友達から聞きました。小野くん目当てに陸上部のマネージャーを希望したり、女子陸上部へ入部する人もいるくらいだって。」
「あら!じゃあ片想いする前にその小野くんとやらに彼女がいないことを確認しないと。もしいたら泥沼になるわよ?」
「それは大丈夫です。先週も昇降口で、男子達に『お前モテるのになんで彼女作らないんだよ~』ってからかわれていましたから。ただそうなると小野くんにはちゃんと好きな人がいるのか、そもそも恋愛することに興味がないのか…。そうやって考え出すと勉強に身が入らなくなっちゃって。」
愛理ちゃんって妹の面倒も見てしっかりしてると思っていたけど、やっぱり中学生の女子よね。アタシにもこんな悩みで葛藤する、青春の時代があったなぁ~。
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※この話は一部フィクションです。