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北の書5 ~思春期最大の悩み 解決不可能?な悩み~

 それを聞いてアタシはちょっと固まってしまったわ。

 「えっと…つまり愛理ちゃんは小野くんって男子のことが好きで、その男子と同じ高校を受験するってことよね?良いことじゃない!好きな人と志望校が一緒なんて、これ以上ない最高のモチベーションよ?後悔しないようしっかり勉強しないとね。でも何をそんな悩んでいるのかしら、せっかくだからざっくり説明してくれない?」


 「はい。小野くんが同じ高校を志望校にしているというのは、移動教室のとき小野くんのクラスの前を通ったときに偶然聞きました。その1週間後くらいに担任の先生と受験先を最終確認する面談があって、それとなく同じ高校を受験する人を聞いたときも小野くんの名前が出たから間違いないと思います。」

 そこまで言ってお茶を一口飲む愛理ちゃん、ふむふむなるほどね…なんとなく言わんとすることは分かるわよ?

 すぐにまた話し始める彼女の言葉に私はジッと耳を傾ける。


 「ここからが本題なんです。私の知る限り、小野くんの成績だと聖修高校の合格ラインに届いていないと思います。クラスが違うので、あくまで噂で聞いた程度ですが…。もちろん余計なお世話だし、私も受験生だから人の心配してる場合じゃないのは分かってます。でもやっぱり彼と一緒の高校へ進学したい気持ちは本物だし、どうしても大丈夫かなって気持ちになって。そう考えると勉強に身が入らなくなっちゃうんです。」

 言い終わると下を向いてしまう愛理ちゃん、ちょうどお互いのお茶がなくなったからアタシは席を立って新しいお茶を淹れに行くわ。

 そういうことね、自分じゃなくて好きな男子の成績か。たしかに自分の成績なら勉強をがむしゃらに頑張れば上がるけど、人の成績は上がらないものね。これはまた難しい相談ね。


 お茶を持って愛理ちゃんの元へ戻ると、助けを求めるような視線を向けられたわ。まぁそうよね、恋する女子中学生にとってはアタシにもすがりたい状況よね。

 「その男子と愛理ちゃんが恋人同士なら、受験を口実に一緒に勉強しなさいで済むんだけどね。さっき片想いって言ってたから、一方的に誘うだけじゃ迷惑になりかねないものね…。ちなみに愛理ちゃんはどうなの?その聖修高校の受験。」

 「今のままの成績を維持すれば大丈夫だろうって、担任の先生が太鼓判を押してくれました。油断せず自宅学習を続けるようにって。」

 「余裕があるからこそ彼のことが気になっちゃうわけね、自分が合格ギリギリのラインだったら人のこと心配してる暇なんかないものね。」

 「余裕なんて、そんな…。」

 「ただ分かっていると思うけど、彼を心配するあまり愛理ちゃんが落第しちゃったら本末転倒よ?まずは自分が合格しないとね。それに大丈夫よ、もし別々の高校へ行くことになっても付き合っちゃいけないって法律も憲法もないんだから。気持ち切り替えて勉強がんばってみたら?」

 そうですよね、と返す愛理ちゃんの顔はひとまずの区切りがついたという表情に見えた。


 いつも閲覧・評価ありがとうございます。感想・誤字の指摘などありましたらよろしくお願いいたします。

 ※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。


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