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東の書7 ~人は弱いからこそ…。~

 アタシがここまで現役女子高校生の愛理ちゃんの恋を応援するのは、明確な理由がある。お風呂の給湯器のスイッチを入れたあと、ベッドに腰掛けながらあの頃のことを考える。それは自分の高校時代のことだ。

 アタシは教室で良くも悪くも目立っていた。変わり者というか、ちょっと斜に構えた女子だった。少なくとも周りの子達はアタシに対して一線を引いて接していたし、むしろそれはアタシが作り出した一線だったから。

 アタシは中学の頃にある先生へ恋をしていたことが周囲にバレからかわれたあの一件以来、少し人間不信になっていたんだと思う。自分のことを開示したらからかわれる…軽いトラウマみたくなっていたのかもしれない。アタシは人とおしゃべりするのが好きな方だからこそ、いつまた自分自信で墓穴を掘ってしまうか気が気でなく怖かった。お友達と会話するのはもちろん楽しいけれど、口は災いの元。思わぬ一言が自分を傷つけることにも、友を傷つけることにもなる。


 だから高校時代は極力一人でいるようにしていた。と言ってもいじめられたりハブられたりしていたわけじゃなくて、クラスメイトとはむしろ男女別け隔てなく会話ができるタイプだったし、アタシの占い趣味を聞きつけて他のクラスから占ってほしいという子がアタシの元を訪れることもあった。

 アタシはとにかく友人たちとの深い付き合いを避けた。いわゆる広く浅く付き合うことに徹底し、休み時間はなるべく本を読むようにしていた。人はよほど急用でもなければ、読書に集中している者をわざわざ邪魔することなどまずしない。入学後ほどなくしてそのことに気づいたアタシは、学校の図書室や市の図書館でいろんな本を読んだわ。おかげさまで占いの知識も腕も上がったけどね。


 ただ今でも後悔しているのは、過去のトラウマに捕われずもっとみんなと仲良くすればよかったということ。女子高生だった当時、弱点のない人がカッコいいと勘違いしていたアタシは、クラスメイトから悩み相談されることはあっても自分の悩みを打ち明けることができない生徒だった。自分で言うのもなんだけど勉強や運動をそつなくこなせていたことも、今思えば無駄にカッコつけていた自分に拍車をかけていた気がする。先生からあなたは成績優秀ねと1年のときの2者面談で褒められ、とても誇らしく感じたこともある…それが無駄なプライドに繋がっているとも気づかずにね。


 大人になった今なら分かる、人はみな弱みがある生き物なのだ。それは胴長短足や低身長のような外見に関することかもしれないし、短気だったり落ち着きがなかったりと精神的なことかもしれない。アタシのように、恋愛にトラウマを抱えている人だっているだろう。

 そう、弱みがあるから人間は魅力的なのだ。この人も私のように悩んでいるんだと親近感を覚えることができるのだ。つまり裏を返せば弱みのない人間など取り付く島もなく、本当にそんな人がいたら恐ろしくさえ見えるだろう。


 アタシはカッコつけるのに必死になって、青春時代をあまり楽しめていなかったように思う。いえ、正確にはそれなりに楽しかったわ。でももう少しだけ自分に素直になれていたら恋も遊びも、確実にもっと充実していたはず。

 だけどタイムマシンがあるわけじゃない。今のアタシにできることはせめて、アタシがしたような後悔を愛理ちゃんに味あわせないこと。そのためにはどんなに苦い記憶でも呼び起こして、少しでも彼女が青春を謳歌できるように知恵として明け渡していこう。




 お風呂が湧きました、給湯器の音声案内が聞こえてきた。


 いつも閲覧・評価ありがとうございます。感想・誤字の指摘などありましたらよろしくお願いいたします。

 ※この話はすべてフィクションであり、実在の人物・地名・事件・建物その他とは一切関係ありません。


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