東の書6 ~何事も情報収集が基本~
「まぁいいわ、愛理ちゃんは高校生になったら確かバイトをするのよね?」
「はい!でもまずは学校の許可を取って、それからアルバイトを探して面接受けて…ってするから実際にバイトが始まるのは5月頃の予定です。」
話題が切り替わるとさっきまでとは代わり、ハキハキとした口調になった。これが本来の彼女の話し方であり、つまりさっきまでの重い口調はそれだけ意中の彼のことで悩んでいるということなのよね。
「そういえば小野くんって男子は何の競技なのかしら?聞いてなかったわね。」
「彼のメイン競技はハードルです。」
「メイン?」
「はい。ただ足が速いので、短距離走やリレーの方に出場することもあるみたいです。それらの競技はグラウンドにハードルがあるかないかだけの違いですからね。あとやっぱり足が速いっていうのはいろんなスポーツの基本でもありますから、サッカー部やバスケ部の上級生が入学式早々スカウトに行ったという話も聞きました。」
「あら!ますます将来有望じゃないの、そんな彼と一緒の陸上部に入部する気はないの?部活動の時間だけでもお近づきになれると思うけど?」
アタシは至極当然の提案をしてみたが、愛理ちゃんの表情はまた曇ってしまう。
「それは悩んだんですけど…。でもやっぱり私、自分で遊ぶお金は自分で働いて手に入れたいですし。幽霊部員で名前だけっていうのもカッコ悪いのでやめておきます。私、自分でお金を稼いでのり子さんみたいなイイ女になりたいです!」
「あら、お世辞でも嬉しいわ。ありがとう。」
そうこうしている内に夕方になってしまった、5時を過ぎてもまだまだ明るいので時間を忘れておしゃべりしていたらしい。気づけば風も冷たくなりだしていた。アタシは愛理ちゃんを先に帰らせると、依頼者のために夕焼けに染まる公園の景色もカメラに収めてから帰路についた。
やはり今の時代は便利なものだ、とアタシは思う。自宅に帰り夕飯に納豆パスタを作りそれを食べ終えたあと、スマホと向き合っている。
小野拓志くん…彼は中学陸上部ではかなり有名な選手なのか、いろいろな記事や個人ブログで紹介されていたため彼のSNSを見つけるのは簡単だった。愛理ちゃんへ的確なアドバイスを出すためにも、ここは男子の情報をできる限り入手したい。
どうやら噂通り、彼にはまだ彼女がいないらしい。しかしフリーだということはモタモタしていると他の女に取られてしまう可能性があることを意味している。初恋かつ失恋が怖く二の足を踏みがちになってしまう愛理ちゃんの気持ちも分かるが、やはりなんとか行動させないといけないわね。
それから愛理ちゃんの恋のライバルになりそうな十和田さん、これは小野くんのフォロー欄から簡単に見つけることができた。今どきの子なら同じクラスであれば喧嘩でもしていない限り相互フォローしているはず、というアタシの直感は見事にあたった。
そして愛理ちゃんの情報通り、この子も彼氏がいないみたいね。他に付き合ってる男がいるとなれば少しは安心できたんだけど。その上SNSの投稿には『クラスに数人イケメンがいてテンションUP♪』などと書かれている。考えるまでもなくこの数人の中には小野くんも含まれているのだろう。
とはいえアタシが自宅で一人思い悩んだところで何も進歩しないのよね、恋愛なんて当事者同士の問題だし。
(直接本人と話せれば手っ取り早いんだけどね…。ん?そうよ!それが一番手っ取り早いじゃない!)
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