北の書4 ~思春期最大の悩み 恋愛と勉強、どっちを取る?~
アタシの顔色を伺うように遠慮がちな目を向ける愛理ちゃんに、アタシはハッキリ言った。
「そうねぇ~。結論から言えば、"どっちも大切"…かしら?」
そういうと彼女は目をまん丸にして驚く。
「え…驚きました、のり子さんは『受験が大切に決まってるでしょ!恋にうつつ抜かしてないで勉強しなさい!』って言うのかと思って。」
「じゃあ聞くけど、勉強に集中しなさい恋なんてやめなさい。そう言われてキッパリ即やめられる?小野くんだっけ…その男の子のことすぐ嫌いになれる?」
「それは…。」
「無理よね?自分でも分かってるはずよ、大体それができたら最初からその2択で悩む必要がないもの。つまり愛理ちゃん自身も分かってるのよ、"恋も勉強も両方大切"ってことが。」
図星だったようで、下を向いて黙ってしまう愛理ちゃん。
「だから別に恋愛するなとは言わないわ、するなって言っても人の気持は簡単に捨てられないし。でも優先順位はつけるべきね。」
「優先順位、ですか…。」
「そう、端的に言えば恋愛なんていつでもできるわ。大げさに言ってしまえばおばあちゃんになってからでもね。だけど受験はそうはいかない。分かるでしょ?」
「はい。」
「むしろ恋愛してるのは受験のモチベーションに繋がるから悪いことではないわ。例えばアタシなら"志望校に合格したら彼に告白するんだ!"とか、そういう考え方に持っていくわね。そうすれば勉強にも身が入るし恋愛を無理に忘れる必要もなくて一石二鳥じゃない?どうかしら。」
「そうですね、ありがとうございます。」
さっすがアタシ、今日も見事に女子中学生のお悩み解決よッ!さ、あとはピザでも食べながらその陸上男子のことを根堀り葉掘り聞き出してみようかしら?中学生の恋愛について聞ける機会なんて滅多にないからね、男達もいないし!
ちらりと愛理ちゃんを見やると、してやったりで満足気なアタシと裏腹な表情で浮かない様子。
「どうしたの?アタシ変なこと言ったかしら?」
「いえそうじゃないんです、受験へのモチベーション維持のことは確かに参考になりました。ただもっと気になることがあって、本当に相談したいのはそっちなんです。」
愛理ちゃんはまた気持ちを落ち着かせるためか、お茶を飲みながら黙ってしまう。
恋の方は別に問題なさそうね…となると、成績とか勉強の方かしら?困ったわね。アタシ現役の学生を卒業してからもう数年経ってるわよ?ましてや中学生時代の勉強内容なんて忘れてるわよ…。
アタシが勝手にうろたえていると、愛理ちゃんがお茶を置いて話し始めた。
「私の志望校、都立聖修高校なんです。」
「聖修受けるの?すごいじゃない、あそこかなり頭良いところよね?有名大学への進学率も高くて毎年入学希望者の倍率が高いの知ってるわよ。それで本題って勉強のことかしら?悪いけどアタシ勉強は…。」
「違うんです。私と小野くん、志望校が一緒なんです!」
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※この話は一部フィクションです。
※聖修高校という名前は適当に付けました、今現在Google検索して被る施設名はありませんが、もしあっても無関係です。