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東の書1 ~入学式~

 アタシは今、とある公園に来ている。そこへ学校帰りの愛理ちゃんが現れた。

 「どうですかのり子さん、私の制服姿!かわいいですか?」

 満面の笑みでアタシの前に立ちくるりと一周回って見せる愛理ちゃん。えぇとってもかわいいわ、アタシはお世辞抜きでそう返した。

 愛理ちゃんの学校はブレザーで、卒業生に現役のファッションデザイナーがいるらしくその人が去年ブレザーのデザインを一新したらしい。パット見はネイビー色のスッキリとしたデザインだが、袖口や襟元などに白のラインが入り、シンプルながらおしゃれである。


 愛理ちゃんは入学式と校則などのルールや教科書などが配られて、今日は授業はなく午後に帰宅になったとのこと。アタシは彼女の帰宅時間に合わせて事務所を抜け出し、ここへやって来たというわけである。と言ってもサボっているわけではなく、とあるイラストレーターから公園の写真がデッサンの素材として必要なので、雲一つない青空の日に公園の風景を写真と動画で撮影してほしいという依頼を受けたのだ。しかし仕事のデキるアタシは愛理ちゃんと合う前にさっさと終わらせておいた。一応気を利かせて夕方頃にもう一度撮影しておこうと思っている。


 4月とは言え雲一つない良い天気ともなると結構温かい、むしろずっと日の当たるところにいるとちょっと汗ばんでくるくらいだ。比較的風がないのも暑く感じる要因だろう。たんぽぽや菜の花と言った春を彩る花が姿を表し、この公園にも数本植えられている桜も満開だ。平日の昼下がりだがその下にはシートを引いた親子連れや老夫婦が、桜を見ながらお弁当を食べている平和な光景も見られる。


 アタシ達はちょうど空いている木製のベンチに座って話し始める。ここは木陰になっており程よく温かい。

 「へぇー、今どきはどの教室にも空調が付いているのね。アタシの学生時代はギリギリ無かったかな、だから夏の前後なんて地獄だったわよ。大学はあったけどね。」

 「熱中症などの重症化が見直されて学習環境を改善しよう!ということから数年前に全室へ空調を入れる工事をしたらしいですよ。それに私のクラスの担任、かなりぽっちゃりの男の人なんです。数学担当で、結婚はしてないって言ってました。年齢は今年で40だとか。でも結構ベテランの先生みたいで、気さくな先生なので男子は早速仲良くなってましたね。」

 「良かったじゃない、なんだかんだ言ってベテランの先生だとクラスが安定するのよね。新米の先生だと生徒との距離感を間違えて友達感覚になっちゃったりするし。悪いことじゃないんだけど、そうすると生徒にナメられたりするからね。それでどうだった、お友達できた?」

 「はい!のり子さんに言われた通り、教室についてすぐ周りの子達に挨拶をしました。出席番号順に席順が指定されていたんですが、左隣と右後ろが女の子で、話しかけたら好感触でした。今日は学校の説明や移動ばかりであまり話せなかったけど、早速連絡先も交換してもらえましたから。男子にも声かけたんですけど、目を合わせてくれなかったのがショックだったなぁ。おはようってちゃんと返ってきたからいいんですけど。」

 (その男子、いきなり女の子から話しかけられて照れくさかったんじゃないの?愛理ちゃんは自分がかわいいことを分かってないのかしらね?それとも分かってやってるの?どっちみちこういうタイプは罪作りな子なのよね。)


 「でしょ?最初はみんな不安なの、裏を返せば話しかけたモン勝ちなのよ。その調子で明日からも、クラスで一人でいる子や不安そそうな子がいたら、とりあえず挨拶から打ち解けていけると良いわね。」

 「はい、あとこれ早速使ってます。」

 愛理ちゃんがブレザーの前ボタンを外すと、アタシがあげたピンクのボディバッグが現れた。やはり使ってもらえると嬉しいものである。

 「今ってロッカーが全部鍵かかるようになってるんですね、忘れ物したからって勝手に教科書や体操服持っていったりされるのを防止する目的らしいんですけど。でもこのボディバッグ、スマホも鍵もまとめて入るのですっごく便利です!」

 「でしょ?ポケットに入れておくと落としたり、体育の授業のときなどは出し入れしたりどうしても失くすリスクが出てくるから。ボディバッグなら体育の授業でもそのままバッグごと持っていけばいいからね。」


 しかしアタシが聞きたいのはそんなことではない。


 いつも閲覧・評価ありがとうございます。感想・誤字の指摘などありましたらよろしくお願いいたします。

 ※この話は一部フィクションです。



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