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北の書42 ~女同士の恐怖~

 漫画ならゴクッ、と喉を鳴らして目を大きくするシーンだろう。愛理ちゃんのリアクションはまさにそんな感じね。

 「のり子さん、何かあったんですか?」

 「これはアタシの身の上に起きたことじゃないんだけれど、学生時代の話ね。愛理ちゃんも気をつけた方がいいわよ。」



~~~~~

 これはアタシが高校1年生だった頃の話よ。確か夏休みも終わった2学期頃だったわね、その頃にはアタシも学校の雰囲気に馴染んでみんなと同じような女子高生生活を送っていたわ。と言ってもアタシは友達とおしゃべりするのも好きだったんだけど、本を読むのも同じくらい好きだったから、休み時間は友達を話すか本を読むかをして過ごしていたの。

 それでね、アタシのクラスには栗本さんっていう女子のリーダーみたいな人がいたのよ。今どきの言葉を使うならクラスカースト1軍女子って感じね。アタシは名字が川島田だから出席番号も近くてね、特に番号順に並ぶ授業のときには、普通におしゃべりするくらいの仲だったのよ。その栗本さんはいつも仲の良い5人で行動していてね、他には島野さんって女子とAさんBさんCさんで合わせて5人ね。

 さらにアタシが女子高生の頃7Picsっていうイケメン男性アイドルグループが全盛期でね、クラスの女子はほとんどが大ファンだった。もちろん栗本さんもね。アタシは別に好きじゃなかったけど、一応クラスメイトの話についていくために新曲や出演している番組をチェックするくらいはしていたわ。


 ここからが本題。そんなある日アタシはいつものように自分の席で本を読んでいたときに、栗本さんの席でその仲良し5人組が集まっておしゃべりし始めたのよ。席が近いからいつのものだったしアタシは特に気にしていなかったんだけど、事件が起きたのよね。


 栗本さんと仲良しの島野さんがね、7Picsって正直あんまり歌うまくないよねって言い出したの。まぁ当時ネット掲示板なんかでも『所詮はビジュアル売りのアイドルだ』なんて叩かれていたから、もしかしたら耳のいい人が聞いたらそんなに上手じゃなかったのかもしれないわ。


 ただその一言が栗本さんの地雷だったのよ。その瞬間それまで談笑していたその場の空気が一瞬で暗黒の空気に変わったのをアタシは全身で感じたわ…冗談じゃなくてね。その栗本さん、毎日バイトを頑張って7Picsのグッズを買ったり全国ライブを追いかけたりするくらい本気でファンやっていたから。そんなガチファンの栗本さんに対して島野さんは口を滑らせてしまった。


 その日から島野さんへのイジメが始まったわ。といってもドラマなんかで見る教科書をビリビリに破くとか上履きがゴミ箱に入ってるとか、そういう苛烈なものじゃなかったけど、無視なのよ。

 とにかく無視。女同士ってすごいわよ、さっきまで仲良く会話していたのにいきなり存在が消えたかのように島野さんのことを無視し出したのよ。しかも栗本さんは女子のリーダー的な存在だった上に大好きな歌手を貶された被害者なわけだから、事情を知ったクラスメイトもほとんどが栗本さんの肩を持ったのね。

 島野さんは見事にクラス内で孤立…きっと地獄だったんじゃないかな。アタシもかわいそうだなとは思ったんだけど、そもそもは島野さんが余計なこと言ったのが原因でしょ?彼女が謝らないことには解決しないと思ったし、アタシが余計なことしてもっと問題がこじれたらと思うと難しくてなにも行動には移せなかったわ。


 その状態で1週間くらいが経過したある日、アタシは担任に呼び出されたの。男の先生だったけどそれまで仲良しだったグループから島野さんだけが突然仲間外れにされていたら、さすがに何かあったと気づくわよね。それで出席番号の近いアタシが呼ばれ事情を聞かれたわ。

 アタシから聞いたという事は内緒にするという条件で、アタシは事の顛末を伝えたの。ただやっぱり今回の件は口を滑らせた島野さんが原因というのは先生も同意見でね。それに暴力沙汰や物が紛失したとかそういう騒ぎにはなったわけじゃないから、とりあえず様子を見ようってことになった。


 そのまま結局島野さんへ対する無視は無くならなかったし、たぶん島野さんも謝ってないんじゃないかな。2年に進学するときにクラス替えが実施されたんだけど、島野さんだけがぜんぜん違うクラスへ移動し栗本さんとABCさんの4人はそのまま。当時高校生ながら、先生も露骨なことするのねーってアタシは思ったわ。

~~~~~



 両腕を抑えながらうつむき、怖ッとつぶやく愛理ちゃん。決してこの店が寒いわけではなく、恐怖感に対する無意識の防御反応から来る姿勢だろう。

 「だから愛理ちゃんも、くれぐれも余計なことは言わないほうがいいわ。そうね…取り敢えずクラスメイトの好きなものや趣味を徹底的に調査して、馬鹿にするようなことは言わないのが懸命ね。とにかく褒めたり、よく知らないから教えてほしいという姿勢を貫くのよ。当たり前だけど、誰だって自分の好きなものを貶されたらいい思いしないからね。」

 「はい、気をつけます。」


 いつも閲覧・評価ありがとうございます。感想・誤字の指摘などありましたらよろしくお願いいたします。

 ※この話は一部フィクションです。



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