北の書41 ~入学祝い~
店員さんがアタシと愛理ちゃんの前に皿を置き、蓋を取る。そこにはメニュー表にはない、生クリームやフルーツで色鮮やかにデコレーションされた特別豪華なクロッフルが用意されていた。
「えっなにこれすごい!」
「お店の人に事前に電話して予約しておいたの。誕生日をはじめとした特別な日の場合、前日までに予約しておけばこういうお祝いプレートを作ってくれるそうよ。さっきのボディバッグは合格祝いで、こっちが入学祝いよ。ダイエットは今日だけおやすみして、食べましょうか!」
アタシはこういうことに関しては抜け目がない方なのよ。事前にきちんとお店の情報を調べておくって本当に大切なことよね。
愛理ちゃんも満面の笑みで食べ始めたが、すぐに食べきれるかしら…と心配そうな表情になった。何を隠そうこのお祝いプレート、1つが2人前以上のサイズらしい。つまりアタシと愛理ちゃんので2皿、合わせると4~5人前のクロッフルということになる。しかし心配ご無用。
「大丈夫よ、お持ち帰りできるから。タッパー代はかかるけどそれもアタシが出すからね。」
そういうと愛理ちゃんはちょうど半分にして食べ始めた。思慮深い彼女のことだ、きっと半分は手を付けないまま妹に持ち帰ってあげたいのだろう。彼女ならきっとそう考えると思って、実はアタシがわざと大きいサイズを注文しておいたんだけどね。
ある程度食べ進めたところで、愛理ちゃんがフォークを置き話し出す。アタシも一度食器を置いて話を聞く姿勢を取る。
「3日後、オリエンテーションで一度聖修高校へ行くんです。」
「入学前に制服が配られたり、学校ごとに年間行事の説明や部活動の紹介なんかがあるのよね。アタシの時代もあったわよ。たしかそのときにクラス分けも発表された気がするわね。」
「そうなんです!なので思い出したら緊張しちゃって…。」
ほとんど見ず知らない人達の輪の中に飛び込んでいくのだから、緊張しない方がおかしい。愛理ちゃんの場合、小野くんと同じクラスになれるかどうかも気になるポイントだろうし。
「とにかく、彼と一緒のクラスになれると良いわね。といっても問題はその彼に恋人を作る気が起きるかどうかだけど…。本人がいつまでも恋人いらないモードだと、周りがいくらアタックしても虚しいだけに終わるから。」
「なんとなく今の話しぶりで察しちゃったんですけど、のり子さんの身近にもそういう人いるんですか?」
「いるわよー。職場の上司なんだけどね、背高いしイケメンだし細マッチョだし、その人目当てに女性の依頼者が度々訪れるくらいなの。でも本人にこの前聞いたら"俺には恋愛感情がどういうものか分からない"なんて済まし顔で答えてきたわよ。ああいうのを罪作りな男っていうのよね、周りの女性をホイホイ惚れさせて相手にしないんだから。しかも本人無意識だから余計に性質悪いし。」
「のり子さんは、そのイケメン上司は恋人候補に入らないんですか?ほらドラマとかでよくあるじゃないですか、職場でよく話す上司といつの間にか仲良くなって~みたいな!」
恋バナになると急にヒートアップするところはアタシと似てるのよねこの子、などと頭の隅で冷静に分析してみる。
「無理無理、職場恋愛なんて少なくともアタシには縁がないわね。その人かっこいいけどね、別にプライベートで遊んだり連絡取り合うわけじゃないし。そもそもアタシが脳内で仕事の人って割り切っちゃってるから、どう転んでも恋愛にはならないわね。それより愛理ちゃん、高校に入ったら同級生の恋バナもアタシのところに持ち帰ってきてよ!現役JKの恋愛事情なんてアタシにはとても興味深いからね!」
任せといてください、と自信満々の愛理ちゃん。この様子なら高校生活のスタートダッシュはきっと大丈夫そうね。
「でもね愛理ちゃん、水を差すようで悪いんだけど、女の世界は怖いから油断しちゃダメよ?」
いつも閲覧・評価ありがとうございます。感想・誤字の指摘などありましたらよろしくお願いいたします。
※この話は一部フィクションです。




