北の書3 ~思春期最大の悩み 恋愛と受験~
と言っても女同士、察しの良いアタシには薄々愛理ちゃんの悩みが分かってたりするのよね。アタシにだって中学生だった頃があったもの、いわばアタシも通った道よ。
何か言おうとアタシの方を見たり、やっぱりやめてお茶に手を伸ばしたりを繰り返したりする愛理ちゃん。中々言い出せない様子だけど、ここで無理矢理聞き出そうとしちゃダメなのよね。そんなことをすれば、開きかけた玄関のドアをセールスマンだと分かって即閉める主婦のように素早く閉め出されてしまう。アタシはピザとお茶に夢中なフリをして彼女の言葉を待った。
「あの…実は私受験をするんです。中3だから当たり前と言われればそうなんですけど、ここ最近勉強に身が入らなくて。それでのり子さんに話を聞いてもらえたらまたやる気を出せるかなと思って連絡したんですけど…。」
ほら来た!ま、受験生にとっての秋冬は大詰めの時期ですものね。その原因もアタシには薄々分かっているけど、ここは引き続き知らないフリをしましょう。
「あら、それは大変じゃない!あと2ヶ月くらいで受験でしょう?アタシで良ければできる範囲で力になるわよ、言ってみて。」
相談する側というのは、この人になら言っても大丈夫かな?という心理が常に働いているものよね。だからアタシはこういうとき、アタシは常にあなたの味方よというスタンスを徹底する。安心感がないと相手も相談しにくいってことは自分自身よく分かってるから。
それが…と言いかけて一旦お茶を飲む愛理ちゃん。中学生が悩み事でモジモジする様はなんと初々しいことだろう。アタシにもこんな時期があったのかなぁと思いながら、また知らんぷりしてマルゲリータを一口かじるアタシ。
思い切りができたのか、いきなり身を乗り出して勢いよく愛理ちゃんが言ってきた。
「私、好きな人がいるんです!同じ学年の小野拓志くんっていうんですけど、片想いなんです!それで勉強に集中できなくてどうしたらいいと思いますか?のり子さんならどうしますか!?」
大声かつ早口で一気に言われ、思わずピザを片手に固まるアタシ。愛理ちゃんも言い終わってハッとなったのか、小さくすみませんと言うと顔を真っ赤にして下を向いてしまった。
「ふ…ふふ…あはははは!」
アタシは大声で笑ったわ。事務所に他に誰もいないのを良いことに、口元も隠さず下品な笑い方で。アタシの反応が意外だったのかちょっと怒り出す愛理ちゃん。
「な…、笑うなんてヒドイ!私真剣に悩んでるんです!」
「ごめんなさいね、おもしろがって笑ったわけじゃないの。深刻そうな顔して随分間を置いていたでしょ、だからアタシも何言われるかと思って無駄に身構えちゃって。でも分かるわよ愛理ちゃんの悩み、女同士ですもの!恋も受験も両方大切なのよね?」
「はい、のり子さんが私の立場ならどうしますか?」
本当は何を言い出すかなんてアタシの予想通りだった、でもここは明るい雰囲気にしておきたいのよね。だって暗い雰囲気で相談なんかしたって、楽しくないし良い話し合いもできないから。
その証拠に愛理ちゃんの表情が言い出す前の張り詰めた顔と一転、いつもの柔らかい感じに戻っている。
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※この話は一部フィクションです。