北の書37 ~新入生・新社会人へ 1~
アタシは今、自宅で鼻歌を歌いながらテンション高くお化粧している最中。愛理ちゃんが志望校に合格したと連絡をくれていたので、今日はアタシのおごりでお祝いの日。愛理ちゃんの妹はお父さんが見てくれるそうだから安心ね。
ぶっちゃけ愛理ちゃんは担任の先生からも油断しなければまず合格するでしょうと言われていたらしいから、あんまり驚かなかったんだけどね。でもまぁ、合格したのは愛理ちゃん自身の努力の結果であることは確かな事実。デジタル時計はそろそろ昼の12時を示そうとしている。今日は飲食店が混むお時間帯を避け、少し遅らせてお昼ごはんにしようと約束しているの。そろそろ家を出ましょうか。
「あ、のり子さん!こんにちは!」
アタシが渋谷駅に着くと、もう愛理ちゃんは到着していたようで待ち合わせに指定していた改札を出たところに声をかけてきた。今日の愛理ちゃんはピンク色のパーカー姿、ちょっと大きめサイズをわざと着ているのが可愛い。
とはいえさすが休日の渋谷駅、相変わらずすごい混んでいるわね。アタシ達は通行の妨げにならないように、素早く通路の隅の方へ避難する。もうすっかり気温も春の陽気になり、今日のような雲一つない良い天気だと、すでに半袖姿の人もチラホラ見受けられた。
「相変わらずかなり混んでますね。それでどこへ連れて行ってくれるんですか?」
満面の笑みでアタシを見てくる愛理ちゃん。うーん、この笑顔で人懐っこく話しかけられたら女性免疫の無い人はイチコロで好きになっちゃうんじゃないかしら?同じ女であるアタシですらかわいいなと思ってしまうのだから。
時刻は13時、飲食店の混雑が落ち着き始める時間だ。外食するときに混んでいる時間帯が苦手なアタシは、いつも混む時間帯を避けている。それは愛理ちゃんも同じなようで、こういう細かいところで気が合うのも嬉しく感じるポイントよね。
「だってあんまり混んでると"早く食い終わらせて席空けろよ!"的な視線を感じる気がして。誰もそんな目で見てないと分かっていても気を使っちゃうんですよね。」
そういう愛理ちゃんに対し分かるわー!などとやや大げさにリアクションしながら歩いている内に目的のビルに到着した。このビルの7階にある飲食店が今日の目的地なので、すかさずエレベーターに乗り込むアタシ達。
「わぁー!おしゃれ…。」
エレベーターを降りてすぐ目の前にあるそのお店は、暖色系のライトに照らされたカフェレストラン。アタシの事前調査通り、ところどころにドライフラワーや動物のマスコットなどが置かれており、女子ウケは抜群。案の定席をざっと見回すとほとんど女性客であり、しかも混雑する時間帯を避けて入店しているにもかかわらず、席も8割は埋まっているだろう。
このお店は元パティシエが開いたお店らしく、中でもクロッフルというクロワッサンとワッフルを合わせたメニューが大人気と評判。普通クロッフルはスイーツなのだが、このお店は生地の味や付け合せのソースにバリエーションを工夫しているらしく、ツナマヨやえびアボカドなどのいわゆるおかず系も用意されているのが、店の内装と合わせて人気のポイントになっているという。
アタシ達はそれぞれ好きなものを注文してから本題に入った。愛理ちゃんは何やら新生活に不安があるというの。
「私、高校生活が心配で。ほら中学の友達とはほとんどバラバラになっちゃうでしょ?新しい友だちできるかなとか、クラスで孤立しないかなとか。受験合格の喜びが去ったあとはそっちの心配が大きくなって来ちゃったんです。」
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※この話は一部フィクションです。




