北の書36 ~高校受験~
年が明けてしばらく、愛理ちゃんから連絡がなかったから、アタシは薄々察していた。でもアタシからズケズケとメッセージを送って思春期女子の気持ちを無理矢理ほじくるようなことはしたくなかったからね、あえてスルーすることにしていたの。愛理ちゃんは仮にも受験生だし、勉強の邪魔になるようなこともしたくない。
そうしたら今日、お昼に犬の散歩依頼をこなしていたら愛理ちゃんから久しぶりに連絡が来たわ。年始にあけましておめでとうとメッセージを送り合って以来ね。一応仕事が終わってからスマホを確認してみる。
『のり子さん!おひさしぶりです。初詣なんですが、小野くんと会えませんでした…。作戦通りきちんと日付を合わせて、午前中に来ると読んで朝9時から昼過ぎまでいたんですが…。』
やっぱり会えなかったのね。
「そうねぇ、でも気を落とすことはないと思うわ。あそこは受験生がみんな行くだろうし、受験と関係ない大人も来るだろうことを考えたら、むしろ都合よく会えるほうが奇跡かもよ。まぁいいじゃないの、初詣で会えなかったからって失恋したわけじゃないし、とりあえず目の前の受験に集中しなさい。」
アタシはこのように返信した。するとすぐに返信が返ってきた、どうやら今度は別のお悩みのようね。
『それなんですよ~、受験の方も心配で。緊張して頭が真っ白になったらどうしようとか、面接で変なこと言っちゃったらどうしようとか。そういうマイナスなことを考え始めたら、受験勉強が手につかなくなっちゃって。それでメッセージしたんです。』
ま、そうよね。多くの中学生にとって、それまでの人生で一番の大勝負と言っても過言ではないものね。
「でもね愛理ちゃん、大切なイベントを前にして緊張しない人間なんていないと思うわ。だからこういうときは発想を転換して考えたら良いと思うの。要はイメージトレーニングよ。」
『…受験のイメトレ?』
「そう。有名野球選手のIは、インタビューで試合の緊張に打ち勝つために寝る前は毎日大勢の人の前でホームランを打つ光景をイメージすると言うわ。そうするとね、実際その場面に立っても不思議と緊張が和らぐんですって。要するに"慣れ"が緊張に打ち勝つ最大の要素なのだそうよ。だから愛理ちゃんもイメトレを真似してみたら良いんじゃない?イメトレするだけならタダだし、むしろやらなきゃ損よ。」
『分かりました!でも受験の会場ってどんな感じか、私まだ経験したことがないから分からないです。私立を受ければ良かったんですけど、公立一本に絞ってしまったので…。』
「そうねぇ、筆記の方は学校のテストと一緒よ。教室の広さや人数がいつもの教室でのテストと違うだけ、意外と平気よ。知らない人ばかりでしょうけど別に試験中におしゃべりするわけじゃあるまいし、気にするだけ無駄ね。そして問題は面接の方だけど、それは学校の先生に話してみたらいいわ。この時期の先生たちは絶対に協力してくれるから、もしダメだったらまた事務所に来なさい。アタシ達で良ければチカラになるわよ!もちろん、依頼がない日限定だけどね。」
『ありがとうございます、明日担任の先生に面接練習を相談してみます!』
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※この話は一部フィクションです。




