北の書35 ~思春期最大の悩み クリスマスパーティの報告~
12/26 AM9:30
今アタシはいつも通り事務所に出勤している。クリスマスパーティ中に何かしら愛理ちゃんから連絡が来るかと思いきや、1回も連絡が来なかった。恐らく例のカメラマン作戦を実行したのね…スマホでクリスマス会の様子を撮影しながら、同時にアタシと連絡を取り合うのは無理があるからね。
しかしその後も連絡はなく、日が明けたというわけ。アタシはモーレツに気になっている、クリスマスパーティの行方がどうなったのか。そしてアタシのアドバイスが役に立ったのか。
そういえば雅樹くんも昨日クリスマスに合コンへ行ったようだけど、そっちの報告もまだ受けていない。ただ彼の性格を考えると何かしら良いことがあったなら深夜でもメールを寄越しているはず、つまり何も連絡がないということは結果は聞くまでもないかしらね。
今日は男性陣2人が朝から夕方まで出払っている。彼らは近所の小学校に駆り出されたの、本当は受付をしたアタシが行く予定だったんだけど、よく詳細を確認すると年末に開かれるお祭りの準備らしくて。力仕事が多いからできれば男手もほしいと頼まれたから、ちょうど予定の開いていた二人に行ってもらったの。ちなみに雅樹くんはぶーぶー言っていたけど、八重島さんは筋トレついでに稼げてちょうどいいと張り切っていたわ。そういうわけでアタシがお留守番。
~♪
アタシのスマホが鳴った。素早く画面を確認すると、送信者は愛理ちゃん。来たわね!
『のり子さんおはようございます、昨日クリスマスパーティ行ってきました!』
逸る気持ちをコーヒーを飲むことで抑えながら、返信を打つアタシ。とりあえず例の男子の連絡先をゲットできたかどうかを尋ねてみた。
冬休みに入った愛理ちゃんはどうやら家にいるようで、返信がすぐに返ってくる。
『おかげさまで、小野くんと連絡先を交換できました!昨日はずっとパーティの様子を撮影してて、その後はみんなに画像や動画を配っていたから連絡できませんでした。』
「それはよかったわね、これで愛理ちゃんの恋もやっと一歩前進よ!例の苦手な子とはうまくやれた?」
『はい、なんとか。好きな人いないの?って聞かれたけど、今は受験勉強に集中してるからって言ってごまかしました。』
「ナイスよ!噂好きな子の前でもし口を滑らせていたら、冬休みの間にみんなにバラされてしまってもおかしくないからね。」
『でも小野くんと連絡先を交換したはいいんですけど、今度はどんな内容のメッセージを送ったら良いか悩んでしまって。朝早いとウザイかなとか、日中は友達と遊んでて忙しいかな、とか…。』
カワイイわよね、コレよコレ!まさに青春の悩みってやつね。アタシにもこんなことで悩んでた時期があったのよねーと懐かしく思いつつ、夜中でも平気でメッセージを送りつけてくる雅樹くんに聞かせてあげたいくらいねとも思った。
「夜中や明け方じゃなければそんなに気にしなくていいんじゃないかしら。考えすぎたらせっかく連絡先をゲットしたのに、宝の持ち腐れ状態になってしまうわよ?」
『のり子さんならどういうメッセージ送りますか?』
悩める思春期の乙女にテキトーなことは言えないわね、なんなら責任重大よ?アタシは窓の外を眺めながらちょっと真剣に考えてみる。
世間はクリスマスが過ぎた途端年末年始の空気に変わり、いつもは雑踏音が騒がしい窓の外も比較的静かだ。車の往来もいつのも半分以下って感じね。アタシもここで働き始めて何度目かの年末だけど、年末年始に突発の依頼人は来ないのよね。みんな帰省したりしているんだろうけど、おかげでアタシはゆっくりお留守番ができているんだけど。
「そうね。時期的にも受験の話が無難でしょうけど、それだと堅い話題ってイメージになるわね。それに相手も受験生ならあまり勉強のこと言われるのも鬱陶しいでしょうし、親や先生から言われているでしょうからね。」
『はい…私もそう思って志望校が同じとはいえ、なかなか切り出せなくて。』
「ここは1つ、"年末年始"の話なんてどうかしら。そうね、例えば初詣の予定とか。きっと合格祈願に行くでしょうから、それとなく日付だけでも聞き出せればベストね。でもどこのお寺に行くか、までは聞いちゃダメよ?」
『えっどうしてですか?』
「決まってるじゃない、好きバレを避けるためよ。愛理ちゃん、彼のことが好きってことを周囲に隠してるんでしょう?彼と同じ日時に、同じお寺に行ってみなさい。」
『私の恋心はバレバレ…ですよね。』
「そういうこと!それにね、この辺で受験生が行くのは国寧穏寺って相場が決まってるのよ。祀っているのが学問の神様だし、最近はテレビや動画配信者がこぞって有名校受験者が必ず合格祈願に行くお寺!って紹介されまくっているからね。」
『あ、私もそこへ行こうと思ってました!じゃあきっと小野くんもそこに…。ちなみに彼が合格祈願に行くのは、多分1月3日だと思います。』
「あら、愛理ちゃんもなかなかやるわね。直接彼に聞いたの?」
『クリスマスの日に小野くん、パーティに来てた他の男子から遊びに誘われていたんです。そのとき1日と2日は親戚が来て甥っ子の面倒を見るから、家から出られるのは3日以降だって話していましたから。』
「決まりね。あとは時間だけど、こればっかりは本人に聞かないと分からないわね。どうしても会いたいっていうなら、受験生でごった返しになる国寧穏寺に朝から晩まで張り込むしかないわ。」
『さすがにそこまではできません!でも会えたらいいなくらいの気持ちで、私も1月3日に初詣へ行くことにします。こんな相談のり子さんにしかできないから…ありがとうございました!』
「新年早々の運試しってところね、じゃあ勉強頑張って。」
メッセージのやり取りに夢中になって気づくと1時間も経っていた。アタシはまたお悩みを1つ解決した、清々しい気持ちになっていた。ただコーヒーを飲みながら気づく、そういえば愛理ちゃんの元々の相談ってなんだったかしら?
まぁいっか、愛理ちゃんも満足そうだったし。アタシはパソコンの前に座ると、男性陣に頼まれていた今月の収支データ入力をやり始めた。
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※この話は一部フィクションです。




