北の書34 ~思春期最大の悩み パーティに苦手な子が来る!~
今日はクリスマス・イヴ、当然のように世間のムードはクリスマス一色。コンビニやスーパーはもちろん、民家やマンションもライトの装飾で彩ったりクリスマスツリーを飾ったりしているのがキレイね。あと一週間で今年も終わり…なんだか一年が過ぎるのがすごく早く感じるわ。
今日のアタシは某依頼人のペットシッター。なんでも今日と明日の2日間、家族でテーマパークのクリスマスイベントへ泊りがけで行くらしく、年末なのでペットホテルも取れなくてアタシたちのところへ先週依頼に来たの。
事務所に来たのはとある食品工場の工場長とその奥様の老夫婦。かわいいお孫さんに迫られて断りきれず、雅樹くんが配ったチラシを見て来てくれたみたい。依頼内容は飼っている犬2匹の面倒を見ることで、朝昼晩のご飯とお散歩を頼まれたわ。依頼人の家がアタシの自宅から近いため、アタシはいちいち事務所に顔を出さず家から指定された時間に直接出向くスタイルを取った。もちろん、雅樹くんと所長の八重島さんには許可を取っているわ。
それよりもアタシには、今日開かれる愛理ちゃんのクリスマスパーティが気がかりだ。午前中のご飯と1時間の散歩を終えたアタシが自宅に一度変えると、案の定愛理ちゃんからメッセージが入っていた。一応仕事中はマナーモードにしているから、ワンちゃん達の相手をしている間は気づかなかったのね。
『のり子さん、緊急事態です!時間があったら返信ください!!』
緊急事態?どうしたのかしら…パーティに持っていくプレゼントは用意したと言っていたし、パーティでの立ち回り方はもう打ち合わせ済みだし、例の男子の連絡先を聞く作戦も立てたし。まさかインフルエンザかなにかで中止?
そんなことを考えつつ返信を打ってみると、休み時間なのかすぐに返信が返ってくるのでそのままやり取りしてみる。
「どうしたのよ、緊急事態って。今日はあんなに楽しみにしていたクリスマスパーティでしょ?がんばって!」
『あの、まさにそのことで相談が…。実は落合さんって子が風邪で熱出ちゃって来られないから、代わりに太松さんって子が来ることになったんです。それで私、その太松さんって子が苦手というか、あんまり好きじゃなくて…。』
なるほどね、要するに愛理ちゃんの嫌いな太松って子がパーティに飛び入り参加するのね。嫌なら行くなっていうのは簡単だけど、それじゃあ何も解決しないしせっかく相談してくれているのに短絡的な回答するのも気が引けるわ。ここはちょっと違う方面で向き合ってみましょうか。
「愛理ちゃん、アタシはその太松って子を知らないから何とも言えないわ。どうして愛理ちゃんはその子のことが嫌いなのかしら?」
『太松さんって噂が大好きな子で、私そういう人ってちょっと信用できないんです。それに私が小野くんを好きなことがちょっとでもその子にバレたら即みんなにバラされそうで怖いし…。どうしよう、パーティに参加するのやめた方がいいんでしょうか?』
まぁ思慮深い愛理ちゃんなら当然そういう選択肢が出るわよね。アタシは素早くスマホを操作して返信をする。
「それはあまり良い選択とは言えないわ。想像してみて?主催者は人数分でケーキや料理を用意しているはずよ、ドタキャンなんかしたら他の人に迷惑がかかってしまうわよね?」
『はい…でも、ただでさえ小野くんが来るってことで今から緊張しているのに、苦手な太松さんまで来るなんて私どうしたらいいんでしょうか。』
住む世界を選べる大人と違い、学生は学校という狭いコミュニティーが全てなのよね。ここはアタシも慎重に対応しなくちゃね。
「愛理ちゃん、そんなに重く考える必要はないわ。いい?"挨拶だけはしなさい"。人生の先輩としてこれだけは言っておくわ。そのあとはパーティの間だけと割り切って、話しかけられても愛想よく相槌だけ打っていればいいわ。」
『挨拶だけ、ですか?』
「そう。なにも嫌いな相手と無理して仲良くなる必要なんてないわ。そんなことをしても自分にストレスが掛かるだけよ。でもね、挨拶だけはしておいて損はないわ。おはよう・ありがとう・おつかれさま…最低限それだけ言えばいいの。」
『そうですよね、それに嫌いだからって無視したら私の印象悪くなるだけですもんね。』
「さすが愛理ちゃん、察しが良いわね。挨拶されないとイラッとするけど、挨拶されて嫌な気持ちはしないわ。これは今後大人になっても基礎的で、かつみんなが忘れがちなことだから覚えておくといいかもね。」
『はい!』
「あと誰かの悪口や噂話の話題になったら、絶対にノッちゃだめよ。"あの子も言ってたよ"なんて広められたら最悪ね。一度誤解されたら誤解を解くのはかなり大変だからね。」
『それが一番怖いんですよ~!ウワサ大好きな子で、結構みんな警戒してるんです。学校ではクラスが違うから、パーティだけ乗り切ればなんとかなるんですけど。』
「一番良いのは素早く話題をすり替えることね、この時期の中学生なら志望校のことや年末年始の予定なんかの話題あたりは自然かつ無難だわ。恋バナも話題すり替えには最適なんだけど、小野くんのことを隠したい愛理ちゃんは使わない方がいいわね。」
『分かりました!愛想よく最低限の挨拶だけして、ヤバそうな話題はそれとなくすり替える…こういうことですね!』
「そうよ。じゃあ今夜のパーティの報告、楽しみに待ってるわね。」
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※この話は一部フィクションです。




