北の書2 ~お腹すいた、は女子会の敵~
「わざわざありがとうございます。」
うがいと手洗いを済ませた彼女にアタシがお茶を出すと、うやうやしく頭を下げる愛理ちゃん。ちなみに彼女の希望で温かい緑茶よ。
「それで、相談なんですけど…。」
「ちょっと待って!せっかくのピザよ、冷めたらおいしくないから先に食べましょう。あ~いい匂い!ピザ食べながらの女子会、アタシってなかなかセンスあるわよね~。」
今日出前を取ったのはオーソドックスなマルゲリータと、人気No.1のてりやきチキンのスペシャルピザを1枚ずつ。女二人だからどちらもサイズはMサイズよ。
なおも遠慮がちな愛理ちゃんの取り皿にさっさと一切れずつ置いてあげると、観念したのかいただきますと言ってようやく食べ始めた。アタシも食べましょう。
「ん~、おいしい!色々な味に手を出すけど、マルゲリータって定期的に食べたくなるわよね~。」
「てりやきチキンの方もジューシでとってもおいしいです!」
おいしいものを食べているとき、人間は無言になるものだとアタシはいつも実感する。2種類のピザがそれぞれ半分のサイズになるまで、アタシと愛理ちゃんは夢中で食べた。
そろそろいいでしょう。
「じゃあある程度お腹が膨れたところで、話を聞かせてもらえるかしら。もちろん食べながらで良いわよ?」
「はぁ…でもどうして、お腹が膨れてからなんですか?」
彼女は当然のように質問してくるが、アタシは中々鋭いなと思った。普通はそんなこと気にも留めず、さっさと自分の身の上話をはじめる人間が大半だからね。
「愛理ちゃんもこれから人の相談に乗ることがあるだろうから、覚えておいて?『人間、空腹での相談事』はNGなの。」
「どうしてですか?」
「人間っていうのはね、空腹だとイライラしたり神経質になりすい生き物なの。生き物は食べ物を摂取しないと生きていけないでしょう?いわゆる生存本能みたいなものだけど、そんな状態で相談をしても良い結果は出ないものなのよ。最悪、お互いの間に壁ができたりね。」
「うーん…そういうものでしょうか?」
「そうね、じゃあこんな説明はどうかしら。愛理ちゃん、ちょっとイメージしてみて?好きなものをお腹いっぱい食べた後って、どんな気分になる?」
「それはもちろん、とてもハッピーな気持ちになります!あーおいしかったな、また食べたいなぁって…あ。」
「そういうこと。お互いが空腹で神経質な状態のときに相談事をしても、後ろ向きな考えばかり出てきやすいのよ。対して、ある程度満腹状態なら前向きな考えができたり解決策が出やすかったりするものよ。もちろん食べ過ぎたら眠くなっちゃうけどね。」
「だからピザを食べてからなんですね、ありがとうございます。」
改めて頭を下げる愛理ちゃん、まぁピザはアタシが食べたかったから勝手に出前したんだけど。
「ちなみに昔からドラマなんかでよく、部下を連れて居酒屋で話を聞くってシーンが使われるでしょ?あれはアルコールでリラックスさせ、料理でほどよく満腹感を満たすことができるからよ。それによりお互いが相談しやすく相談に乗りやすい、理にかなった環境ができあがってるわけね。」
「へぇ~!なんだかのり子さんと話すと色々勉強になってたのしいです。」
現役中学生から羨望の眼差しというものを向けられるのも悪くないわね。さて、本題といきましょう。
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※この話は一部フィクションです。