北の書11 ~思春期最大の悩み 鋭すぎず、鈍すぎず。1~
「それに胸キュンな話は現役中学生で絶賛初恋中の愛理ちゃんに任せるわ。アタシはそんな愛理ちゃんが大火傷しないようにする指導係ってところかしら、人生の先輩としてね。」
「のり子さんさっき『まずは』って話し出したから、もしかしてまだ黒歴史があるんですか?」
彼女は申し訳無さそうな表情を浮かべているけど、目はワクワクしている。おそらくどちらの感情も本当なのでしょうね。
「黒歴史というか、未だに心残りなことはあるわね。…アタシ、社会人になりたてのときにやらかしたことがあってね。当時おそらく両思いだった男性がいたの。」
「おそらく?」
「えぇ、限りなく黒に近いグレーみたいな感じかしら。そのくらい学校で仲が良かったし、その人とは家に帰ってからも連絡も取り合ってたりしたの。しかも男子で唯一ね。」
「気になる!どんな人だったんですか?」
「背は平均くらいだったけど、顔は当時の大ヒット映画にも出ていた俳優のNに似ていたわ。ほら、この人よ。」
アタシが自分のスマートフォンで画像を検索して愛理ちゃんに見せると、かっこいいと反応する。どうやら好みが似ているみたいね…そんなことより。
「アタシが大学生の頃の話なんだけどね、中道くんって名前だったの。お互い連絡を取り合って同じ講義を受けることも多くて、周りの人からラブラブだなーお前ら!なんて言われることもあったわ。だけどアタシ、そうやってからかわれても悪い気しなかったのよね。話がおもしろくてリアクションも芸人さんみたいにオーバー気味で、アタシは気づいたらその人に夢中だったわ。」
「キュンキュントークは私に任せるって言っておきながら、結構のり子さんもノリ気じゃないですか!それでそれで?」
愛理ちゃん、モナカを手に持っていることを忘れてるわ。アタシの話に食いついてくれるのは嬉しいんだけど、無意識に手に力が入っているのかモナカがひび割れてポロポロとカスが落ちている。ま、あとでちょっと掃除機かければいいか。
「中道くんの気持ちを直接聞いたわけじゃないわ、でもアタシのことは嫌いじゃなかったと思うの。講義だけじゃなくお昼の学食もよく誘ってくれたし、誕生日のプレゼントを渡し合ったりしていたから。」
「ていうかそれ、ほとんどカップルがやることじゃないですか?私の学校も何組かカップルいますけど、見てるとそんな感じですよ。」
それで付き合ってないなんて不思議!と続ける愛理ちゃん。純粋だなとアタシは思う。
「ただね、当時アタシはバイトしていて忙しかったのもあって別に彼氏が欲しいとは思わなかったのよね。それは中道くんも察してたと思うのよ。それに…お互いにどちらかが気持ちを打ち明けて、もし答えがNoだったら今の楽しいこの雰囲気が壊れるんじゃないか。そんな怖さもきっとあったわ。」
「誰だって告白してフられるのは怖いですもんね。」
そう同意しながらも、早く続きを聞きたそうにしている。アタシも話しているとなんだか心が軽くなる気がする、これじゃどっちが相談しに来たのかわからないわね。
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