命の価値
手塚治虫先生とブラック・ジャックに捧ぐ。
緊急手術室は緊張に包まれていた。
医師たちの手は確実で迅速だったが、その表情には深い集中と責任感が宿っていた。
モニターからのビープ音が不安を煽り、看護師の靴音が響く中、手術室は命をかけた戦いの舞台となっていた。
医師たちの緊張感が部屋を満たし、手術灯の下で血しぶきが舞い、モニターのピッピッという音が不安を煽る中、外科医たちは一丸となって患者の命を救うために闘っていた。
***
事件が起きた。
犯人も重症を負ったがまだ生きている。
大病院へ救急搬送された。
外科の権威である主治医は緊急手術を行う。
事件の概要を知らされた主治医は、この者がおそらく死刑になると分かっていながらも、目の前の命を全力で助ける。
主治医だけでは無い。
この手術チーム全員が一丸となって助けている。
***
「なぜ助けた。知ってるんでしょ。事件のこと」
意識を取り戻した患者が消え入るような声で主治医に尋ねた。
「助けられる命だからさ。それが俺の仕事だ」
***
時は流れ、逮捕が可能と判断されたこの者は逮捕・勾留された。
裁判員裁判に掛けられ、殺人の罪として有罪となり、死刑が確定した。控訴はしなかった。
そのことを聞かされたあの時の主治医は何を思うのか。
全力で助けた命が法で裁かれ、命が奪われる。
これが法治国家というものだ。
外科医も人間だ。ロボットではない。自分の身内が殺されたらその者を救うことが出来るだろうか。
あの主治医は今日も全力で命を救っている。
命とは何なのか。
その価値とは何なのか。