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◆先見の明のダンジョン攻略◆①



   ◆◆◆◆◆



 ーー黒迷宮ノワールダンジョン


 

 王国一と名高い支援魔術士アティ・ギル・クレンセンの加入。


 その試験的、動作確認。

 単純で簡単な新体制の確認作業。


 目標とするのは50階層踏破。

 推奨ランク、Bランクパーティー。


 Sランクパーティーである「先見の明」にはとても簡単なものになる。


 はずだった……。


「な、何をしてんだよ! お前らぁ! さっさと、俺を守りやがれぇえ!!」


 本来であれば、史上最年少にして最速で冒険者ランキング10位内に入ったS級冒険者であるネロ・グリムードが、こんなに声を荒げる事など起こるはずがないのだ。



『グモォオオオオオ!!』



 グザッ!!



「カハッ!! ァアァアァア!!!! うぁあああああ!!!!」


 もちろん、こんな絶叫も響くはずも、盛大に血反吐を吐くようなはずもない。


 彼らが本当にSランクパーティーの実力を持っているとするならば……。




  ※※※※※【SIDE:ネロ】



 王都の転移陣で黒迷宮の近くの街"ノワール"まで転移し、ダンジョンの入り口へと足を進める。


 ゴードンは「ふぁわあ」と見るからに二日酔いで大きなアクビをして、カリムはアティに声をかけ続けては、軽く流されている。


「ねぇ、ネロ。わざわざ50階層まで行かなくても、確認だけなら25階層くらいでいいんじゃない?」


 そう言って俺の上目遣いで胸を押し当ててくるクレハに俺は「ふっ」と軽く笑みを溢した。


「……50階層までだ。階層主のジャイアントオークを討伐する」


「そっか……。そうだよね。せめてAランクの魔物を相手にしないと確認もなにもできないか……」


「"あの2人がいても"、188階層まで潜れたし、まだ余裕があった。アルマのクソやろうが食料をもっと持って来てたら、もっと先に行けたんだ」


「……そう、だったね。ま、いいじゃん! あんなヤツの事なんて。とりあえず、50階層だね!」


「あぁ。……まぁお前の出番はないと思うがな」


 クレハは「……ふふっ、そうかもね」と少し困ったように笑顔を作る。


 今回の攻略で、「治癒」を必要とする事はないだろう。ジャイアントオーク程度の相手で傷を負う可能性なんてゼロだ。


 これまで、Sランクの魔物を相手にしたって、擦り傷程度の怪我しかした事がない。


 クレハはただの"道具"だ。


 ちまたじゃ、「無時間の治癒師(ノータイムヒーラー)」なんて持て囃されてるが、コイツは俺のパーティーにいるから、"2桁入り"を果たしただけの金魚のフン。

 

 アルマと何も変わらない無能だ。


「ネ、ネロ? そんなに見つめられたら恥ずかしいじゃん!」


 ただ、見た目はいい。

 俺に従順だし、なんでも言う事を聞く。


 いつでも性欲を満たせる女として置いてるだけだ。


 そう伝えてやっても、俺の側を離れようとしない。「嬉しい……」だなんて涙を浮かべて……、自ら奉仕する。


 本当に愚かな女だと思うが、バカではない。


 俺に尽くす選択は間違いじゃない。


「ネロ? ど、どうかしたの……?」


「ふっ、怪我するなよ?」


「ぅ、うん……」


 クレハは嬉しそうに顔を赤くする。


 傷がある女なんて抱く気も失せる。それしか取り柄がないんだから、せめて傷を作らないようにしろってだけだ。


 俺はクレハの腕から左手を抜き、クルリと振り返る。


「お前たち、準備はできてるな?」


「ガッハハ! 準備もなにも、50階層までだろ? ここって、前も楽勝だったダンジョンだし、余裕だ、余裕!」


「ダンジョンの中では何があるかわからないだろ。気を抜くなよ、ゴードン」


「とか言って、ネロには"見えてる"んでしょ? 僕たちが余裕で攻略しちゃうのがさ!!」


「ふっ。そんなもの"見なくても"わかってるんだよ、カリム」


 コイツらはみんな、俺が全ての未来が見えていると思っているようだが、俺に見えるのは3秒後の未来だけ。


 だが、そう信じてやまない。

 それは、いつだって俺が正しいから。


 まぁ、俺の思い描く通りに世界は回っているのだから、全てが見えてると言っても過言じゃないがな……。



「ガッハハハ! さっさと済ませて、さっさと帰ろうぜ! 二日もかけなくていいんじゃねぇか?」

「ハハハッ! そうだね! もう今日中に終わらせちゃおうよ!」



 ゴードンとカリムは、トコトコと黒い岩でできた遺跡の入り口に向かっていく。



 黒迷宮ノワールダンジョン


 100階層以降は地獄。

 世の中の冒険者たちはそう言っている。

 まぁ、ザコだから仕方ない。


 俺が規格外ってだけの話だ。



 ズワァア……



 侵入されるのを拒むように入り口から風が吹くがそんなもの気にするまでもない。


 俺はチラリと新加入の"駒"を見やる。


 【亜空間】と呼ばれる自分だけの領域を持つスキルに加え、強化、弱化、探索、結界などの無属性の魔術を無数に所有している王国一の支援魔術士。


 王国魔導師団の副団長も務めた経歴。

 公爵家の令嬢という出生。


 ブラウンの短い髪と瞳。

 容姿もスタイルもかなり優れている。


 24と少し年上ではあるが、働き次第では俺の女にしてやってもいい。

 

「……期待しているぞ、アティ」

 

「……は……ぃ」


 アティは少し顔を引き攣らせ曖昧に返事をする。


「ん? どうした?」


「い、いえ。……地形の確認。回復薬の配給。順路と魔物の確認。役割の振り分け。……その他もろもろ、確認事項などを話し合われたりしないのですか?」


「クッ、ハハハハッ!! そうだな! クククッ……ハハハハッ!! それが"普通"なのかもな!!」


「……ネ、ネロ様。ダンジョンは生き物です。慢心は死を意味するとお聞きしております」


「ククッ……そう心配するな。俺たちは今まで一度もそんな事をしていない。出てきた魔物を斬り伏せて進むだけだ」


「……そう、ですか」


「頭を作り替えろ。無駄に時間を消費することはない。これが、俺のやり方だ」


「……"無駄な時間"はわたくしも大嫌いです」


「クククッ、まずは順路だけサポートしろ。好きな道を選べばいい」


「はい……」


「慣れてきたら適当に支援魔術をかけてくれ。……モタモタしてたら、連携を確認する前に終わってしまうがな……!」


「……承知致しました」


 アティはニッコリと笑顔を浮かべる。


 ふっ、結局は温室育ちのお嬢様なのか? 

 俺がその"作り笑い"に気づかないと思ってるのか? 


 まぁ、俺の戦闘を見れば言葉の意味がわかるだろ。……なぁに、帰る頃には、頬を染めて俺を求める事になるさ……。


 俺は黒迷宮ノワールダンジョンを見上げてニヤリと頬を緩める。


 ーーお前らも少しくらい荷物持てよ!


 うるさい"無能"もいない。


 ーータン、タラんッ……。


 耳元を飛び回る"ハエの音"も聞こえない。


 こりゃいい……。



 サァー……



 風の音しか聞こえない……。



 「俺が守ってやる」と言ってもピクリとも表情を動かさないクソ女の態度にイラつく事も、


 ーーしっかり"聞け"よ?


 偉そうなクソザコの射るようなまっすぐな瞳も、ここにはない。


 ……完璧にストレスがない。


 俺の選択は正しかったと、もうすでに証明されたかのようだ。


 クククッ、やっぱり俺は間違えない!



「おーい!! みんなぁ!! 何やってんの!? 早くおいでよ、アティ!!」



 遺跡の中からカリムの声が響く。



「行くぞ……。ここが覇道の始まりだ」


 俺はアティとクレハを扇動して、ダンジョンに足を踏み入れた。





絶望の始まりです!


〜作者からの大切なお願い〜


「面白い!」

「更新頑張れ!」

「ざまぁ楽しみ!」


 少しでもそう思ってくれた読者の皆様。

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