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"天才鍛治師の力持ち"②



 ーーギルド長室



 ロミリアの引き留める声に、「勝ったぁ!!」と心の中でガッツポーズをするが、


「……ん? "思い出させた"?」


 俺は大きく首を傾げた。


「も、もう怠惰な生活は要らない。逃避行は終わり! もう一度、夢に向かって走るなら、君の隣しかないって、そう思ったんだ!!」


「……」


「君のピアノのせい……。いや、君の『没頭』が、楽しそうな姿が、僕に思い出させたんだ!! 責任とってよ!!」


 ロミリアはスクッと立ち上がり、ポロッと涙を流す。


「……お前の夢ってなんなんだ?」


「……最高の素材を自分で発掘して、自分にしか生み出せない作品こどもを……自分の手で……!!」


「……」


「もう中途半端は絶対にしない。誰かにオカシイヤツだって笑われても、気持ちが悪いって蔑まれても、もう捨てない!!」


 ロミリアのグリーンの瞳は真っ直ぐに俺を見つめている。


「僕は君の隣で夢を叶えたい」


「……」


「……僕だって創造者なんだ!!」


 ロミリアは頬に涙をながしながら、グッと唇を噛み締めて瞳を燃やしている。


 まるで好敵手ライバルに向けるような視線に、俺は「ハハッ」と小さく笑い、


「……面白いな、お前!」


 笑みを抑えられない口元を手で覆った。


 みんな、気味悪がるか、呆れるか。

 リーシャや「孤児院のヤツら」のように好意を向けられるのは例外だし、基本的にはその2択。


 ロミリアの瞳は初めて向けられるものだ。


「……君には負けない!」


 俺が更に頬を緩めていると、ずっと黙りこくっていたリーシャが俺とロミリアの間に入る。


「あなたは生活魔術を使えるの?」


「……えっ?」


「火や水を調達できる? そんな"モノ"を作れるの?」


「ま、まあ、素材があれば、簡単に作れるけど……?」


「……力持ち?」


「……う、うん。僕はドワーフだからね」


「じゃあ、"荷物持ち"してくれる?」


「えっ? うん。2人の装備も作るし、メンテナンスもするよ? 一応、盾役タンク前衛アタッカーも、」


「必要ない。あなたは荷物さえ持ってくれればいい。私が戦うし、サポートは"アル"1人で充分だから」


「……じ、自分で言うのもアレだけど、僕、けっこう強いよ? どんな旅をしてるのか知らないけど、一緒に連れて行ってくれるなら僕も、」


「必要ない……」


「……え?」


「本当は2人でも充分なの……」


「いやいや、そうじゃなくて……」



 ロミリアは困惑気味に俺の様子をうかがう。


 だが、俺は正直、(……さっきまでの無駄な駆け引きなんだったんだ?)と完璧にスイッチを切っていた。



「"アル"と私だけでいいのは本当。……ただ、私たちは荷物を持ってくれる生活魔術を使える人を探してたの」



 ロミリアはリーシャに見惚れたようにポーッと顔を赤くする。


「"作れる"ならお願いしていい? あなたはあなたのやりたい事をすればいい。探索でも鍛治でも好きにすればいいと思う」


 リーシャは無表情で淡々と呟くと、俺を見つめて、「これでよかった?」と首を傾げる。


「……に、荷物持ちしてくれて、諸々の雑務もサポートしてくれるならそれでいい」


「……えっ? なにそれ。僕を連れて行きたくないんじゃ……。さっきまでの交渉は、」


「言うな、"ロミリア"」


「……は、ははっ! 恋人同士みたいだから、好きな時にえっちな事できないし、拒絶されてるのかと思ったよ!」


「ふっ、別にそんなんじゃない。"雑用"として加入させるために『なんでもする』って言わせたかっただけだ」


 ロミリアはギュッと拳をつくる。


「……じゃあ、いい? ……僕も、君たちと……。……て、鉄を打ち始めると、君みたいに周りが見えなくなることがあるんだけど……、いいかな……?」


 視線を伏せ、緊張した面持ちのロミリアに、親近感を抱く。



 ーー君は怖くないの?


 思えば初めて声をかけられたのは、こんな問いかけだったな。


 なるほど……。

 "君は怖くないの?"か……。


 俺だって笑われたいわけじゃない。

 頭がオカシイと思われたいわけじゃないし、孤立することを恐れる気持ちがわからないわけじゃない。


 ただ、そんなものより大切なモノがあるだけ。それに俺はいつだってピアノがいてくれる。



 孤立はしても孤独ではない。


 

「ふっ、お互い様だ。邪魔なんかしないし、お前も邪魔してくれるな」


「……うっ、うぅ……」


「好きにやろう。俺たちは自由なんだから」


「うっ……うぅっ……。ぅん……うん!!」


「"アルマ・ウェルズ"……。D級冒険者の【演奏家】だ。よろしくな、ロミリア」


 俺はスッと手を差し出した。

 

 ロミリアはウルウルと瞳に涙を溜めると、


「う、うん!! 僕はロミリア・チェル・ガルノ!! 鍛治師だよ!! よろしくね、"アルマ"!!」


 ガバッ!!


 俺に抱きついてきた。


「うぅ……ぼ、僕、なんでもするよ! ……君に、僕の最高の作品こどもを1番に見せて、うぅ……それで、認めさせてみせる。ぜ、絶対、世界一の鍛治師だって、君に認めさせてみせる……!!」


 俺の肩に顔を埋め、泣き続けるロミリアに「ふっ」と笑みをこぼして頭を撫でてやる。


 なんでこんなに『俺』に執着してるのかは知らないが、コイツがどんな"モノ"を生み出すのか、少し楽しみだ。



 なんて思っていると、


 ガッ……!!


 ロミリアはリーシャに首根っこを捕まれ、余裕で引き剥がされた。


「……リーシャ・レスティン。よろしくね、ロミリア」


 ロミリアは涙と鼻水だらけの顔をサァーッと青くすると、


「……ぅ、うん。よろしけね。リーシャちゃん……」


 一瞬にして泣き止んだ。


 俺は「ん?」と首を傾げたが、当初の予定通り"使えるポーター"をゲットできたし、まさかの「古代の楽譜(エンシェント・スコア)」も見つけられたし、


「ふぅ~……最高だ!」


 大きく、大きく伸びをした。


 頭の片隅で「お前らも、ちゃんと村への帰り支度を進めているのか?」などとネロたちの事を思った。


 



次からお待ちかねのざまぁが始まります!

誤字報告ありがとうございまーす!


〜作者からの大切なお願い〜


「面白い!」

「更新頑張れ!」


 少しでもそう思ってくれた読者の皆様。

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