童話も私のリアルもハッピーエンドがいい
「ヒルデや、娘夫婦は頑張っているようだね」
「ええ陛下、また手紙が届きました。一緒に読みましょう」
すっかり健康を取り戻された陛下と並んでソファに腰を下ろし、王太子妃の封蝋が施された封筒から便箋を取り出す。
字も綺麗になったし、物事を上手にまとめて書けるようになった。
あれから王太子夫妻は方々に頭を下げて回り、信頼の回復に努めている。
ただ道は私が予想したより険しかった。物凄く。遥かに!
ストレチア王子を支持していたのは武闘派の派閥で、負け知らずのグロリオーサ帝国軍の威光に泥を塗った王子への侮蔑、風当たりの強さと来たら私に対する王子のいじめ以上のそれは凄まじいものだった。
武闘派の体質は体育会系で、脳筋連中の庇護なき弱者に対する態度っていうのは推して知るべしだ。
徹底して冷遇されており、王宮で一番日当たりが悪く、じめじめとして壁にもカビが生えているような粗末な館に押し込められているという。
贅沢に慣れ、プライドの高い二人には心身共に相当堪えているのは想像に難くない。
「猿山のボスみたいだね」
「せめてライオンと言って差し上げてください」
陛下も無邪気にお人が悪い。
ボス猿は喧嘩に負けるとヒエラルキーの最下位に落とされ、チー牛オスやメス猿はおろか、子どもにまで顎で使われるそうだ。
「ちょっと口を出してみるかい?」
「その必要はなさそうですわ」
しかし私たちの娘の内助の功は効いている。
あちこちに詫びを入れる際の進物の代金は、殿下が裁判を受けている間にユーフォルビアが用立てた。
支度金は贅沢で使ってしまっていたから、うちから持って行った宝石を諸侯に売り払ったのだ。
買い叩いた者、温情に溢れる対応をした者、誰が殿下の本当の味方かはこれで大体推し量ることができた。
まだ自分の側に付いてくれる者を重用し、足固めをしていると手紙にはそう書いてあった。
「二枚目からは幸せ報告だね」
「あらあら、大変なお惚気だこと」
苦しい場面だからこそ二人で支え合い、きちんと向かい合って会話している様子が伺える。
あの意地悪なストレチア王子が私以外にはこんなに優しいのかと思えばちょっとムカついたし、少女時代の恨みつらみ憎しみは絶対に忘れはしないし死んでも許さないが、娘に狼藉を働かないならギリで良しとする。
「掌返してユーフォルビアをいじめるようなら、今度こそ命はないと思いなさい……」
「どうしたんだい、突然!? 顔が恐いよ! 落ち着きなさい、機嫌を良くしていないとお腹の子に悪いからね。続きを読もう」
陛下の手がお腹を撫でて、私の心は幸せで一杯に満たされる。
あの後、私はすぐに陛下のお子を身ごもった。
この時代の出産は不安しかないけれど、やはり嬉しさの方が勝る。
「おや!」
「まあ!」
王太子夫妻にも子供ができていたのだ。
「この子は0歳で叔父さんか叔母さんになってしまうんだねえ」
「珍しいことでもありませんわ」
「年の近い親戚がいるのはいいことだよ。男の子と女の子だったら……」
「陛下ったら、いくら何でも気が早すぎるでしょう。まだ産まれてもいないのに」
「わしは元気な子が産まれてくると信じているよ。大変だろうが頑張っておくれ」
「はい、陛下」
こうして私は見事死亡フラグを回避し、大団円とは行かないながら一応は丸く収まった。
童話はハッピーエンドがいい。
めでたしめでたし。
ここまで読んでくださってばりありがとうございました!
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※心ある方から、本文が前章のものだとご指摘をいただき再投稿しました。どうもありがとうございます!




