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5:出立

 カラッとした晴天の下、王宮前の広場ではアインザルフ帝国の騎士達が荷物の積み込みや出発準備を行っていました。


 人を運ぶための馬車が3台、食料や水を満載した荷馬車が5台、騎兵が6騎、騎士が30人とそれなりの人数が動いているのですが、馬の嘶き一つ立てずに出発の準備が整っていく様はまさに圧巻で……私は手持ち無沙汰気味にため息を吐きました。


 こういう場面で何もせずにただただ突っ立っているだけというのは心苦しいのですが、まともに歩けるのかもわからない人間がウロチョロしていても邪魔なだけですし、大人しくしているのが彼らにとって一番の助けになるのかもしれません。


 そう思いながら通り過ぎる騎士達に『疲労軽減』や『祝福』の魔法をこっそりかけていたのですが、マリアンさんが凄い形相をしているので程々のところで自重しておきましょう。


(見に来ている人は…よく知らない人達ばかりですね)

 仕方がないのでこれで見納めとなるラークジェアリー聖王国の風景を眺めていたのですが、チラホラと見物人が居る事に気がついて……知り合いでも居たら挨拶くらいは出来るかと思ったのですが、どうやら私が知っている人は来ていないようでした。


(と、いうより)

 賠償会談が秘密裏に行われていたのでそれほど人が居る訳ではありませんし、彼らはアインザルフ帝国の人達を野蛮人か化け物でも見るような目つきで眺めながらヒソヒソと話し合っているだけで……確かにアインザルフ帝国の騎士達は毛皮やハードレザーを多用した野性的な鎧を着ていますし、芸術品のようなフルプレートタイプの全身鎧を着たラークジェアリー聖王国の騎士達より見た目の洗練度という点では劣っているのかもしれませんが、その動きは機敏で力強く、決して蔑むような目で見て良いような人達ではないと思います。


「レティシア様、その、本当に…お荷物はよろしいのですか?」

 そんな思いで眺めていると、甲斐甲斐しく世話を焼いてくれているマリアンさんが声をかけてきて……時折その視線が鋭くなる事があるのですが、基本的に業務を忠実にこなしているという実直な人なのだと思います。


 因みにマリアンさんはマリアン・フォン・ロッシュフォールというれっきとした男爵家の子女だったのですが、「しがない男爵家ですので、これまで通りで」と言われてしまい、同じ聖女という事もあって気安い感じで接しさせて貰っています。


「はい、大丈夫です」

 アインザルフ帝国は私の荷物を運ぶ為の馬車を用意してくれたのですが、持って行く物はリヴェイル先生からお守り代わりに貰った形見のナイフだけで……と、いうより、それ以外の私物と呼べる物は大聖女に就任した時に処分されてしまっていたので手元に残っている物がありませんでした。


 実は着る服すらまともに持っていないと知った時には物凄く驚かれてしまい……マリアンさんが慌てて着る服を用意してくれたくらいです。


「それより、用意してくれた服の事で質問があるのですが…?」

 どうにも着慣れなくて聞いてしまったのですが、マリアンさんが用意してくれた服というのは厚手の黒いローブに白色のケープというアインザルフ帝国の聖女服で……ラークジェアリー聖王国と大きく違う点は実戦的なアインザルフ帝国らしく強度を高める為の鉄糸が縫い込まれている事と、防具目的(お腹を守る)のハードレザーのコルセットを剣帯代わりにするところなのですが、アインザルフでは聖女ですら帯剣して薬品類や一食分の食料を持ち歩くのが常だと聞いて驚きました。


 そんなコルセット型の剣帯で押さえられる事が前提のスカートは足さばきに影響が出ないように大きめのスリットが入れられており……どこかダボっとしたラークジェアリー聖王国の聖女服を着慣れた私からすると下半身がスースーし過ぎているような気がするといいますか、どこか頼りがなくて恥ずかしいデザインのような気がしてしまいます。


「大変お似合いだと思います」

 そして恥ずかしいのは恥ずかしいのですが、右側が動かない私は一人で着替える事が出来ず……満足げに頷くマリアンさんには何も言えなくなってしまい、ただただ苦笑いを浮かべてしまいました。


(ヴィクトル様が「あちゃー」みたいな顔をしていましたし、騎士の皆様にも見られているような気がするのですが…本当にこれで良いのでしょうか?)

 なんて事を考えながらスカートを摘まんでみるとスリットから太腿が覗いてしまい……着心地(多少キシキシする)に関しては慣れてくると思うのですが、ベルトで要所要所を絞っているせいで出る所が出てしまう作りになっているのが気になってしまいます。


 因みに寒冷なアインザルフでは上着を羽織ったりローブと同色の膝丈くらいの長めのベールを被ったりロンググローブやハイソックスやタイツやズボンで防寒をするのが一般的なのですが、それらの細々とした装備は派遣される場所や季節に応じて用意される物なので温暖なラークジェアリーだと必要がないだろうと持ち込んでいないようで……なんて文句を言っていたら同じ服装(アインザルフの聖女服)で頑張っているアインザルフの聖女達に申し訳ないので黙っておく事にしましょう。


 そんな事を考えながら微かな羞恥心を胸の奥の方に仕舞い込んでいると、陣頭指揮を執っていたヴィクトル様が号令をかけました。


「もうすぐ陛下がお越しになられる!荷物の積み込みが終わったら整列!のち、待機だ!」

 その言葉に積み込みを終えていた騎士達が一斉に動き出したのですが、その整然とした動きは見学をしていた人達が騒めくような秩序だった動きで……。


「陛下がお越しになられるようですね…レティシア様もこちらへ」


「は、はい」

 私もマリアンさんに促されるように居並ぶ騎士達の()()()に並ぶ事になったのですが、横に居るヴィクトル様から「またややこしい事を」みたいな顔をされてしまい……今更モゾモゾと引っ込むわけにもいかないので笑って誤魔化しておきましょう。


(どれくらい待てばいいのかがわかりませんが…と、いうほど…待つ必要もなさそうですね)

 同じ姿勢でじっとしている事には慣れていますし、このままゆっくりさせてもらうつもりだったのですが……陛下がやって来るタイミングはしっかりと計算され尽くされており、長期戦を覚悟する間も無く周囲の騒めきが途絶えました。


(相、変わらず…凄い魔力ですね)

 少しすると、空気が揺らぐ感覚と共に広場に繋がる王宮の扉が開き……近衛騎士2名に先導されたヴォルフスタン皇帝が姿を現します。


 揺らめく魔力、ボサボサの黒髪に意志の強さが滲み出ている黄金の瞳、アインザルフ帝国の紋章を意匠化した模様が縫い込まれている黒いスーツとコートを着こなす姿は異質で武骨だったのですが、周囲の誰もが黙り込むような威圧感を漂わせており……そんなヴォルフスタン皇帝の後ろには聖王国を代表する形でジュリアン王子が続いていたのですが、その姿が従者か何かのように見えるくらい二人の風格や威厳には違いがありました。


(ジュリアン王子も悪い人ではないのですが…役者が違いますね)

 何となく眺めていた私を他所に居並ぶ騎士達はザッと揃った音と共に胸の前で両拳を握るという簡易敬礼を行い……一糸乱れぬ騎士達に視線を向けた2人が棒立ちをしている私に視線を向けたのですが、ヴォルフスタン皇帝は私の顔を見ながら目を見張り、ジュリアン王子は私の服装を見ながら口が半開きになっていました。


「?」

 もしかしたらラークジェアリーの聖女が最前列に居る事に対しての疑問だったのかもしれませんし、アインザルフ帝国の聖女服を着ている事への驚きだったのかもしれないのですが……私が?マークを浮かべていると2人は何とも言えない顔をしながら視線を逸らします。


「あ~…こほん、それでは見送りはここまでとしよう…わざわざラークジェアリー聖王国が仲介してやったのだ、この度のドヌビスとの約定を違えぬよう努力するのだな!」

 間を取り持つように咳ばらいをしたジュリアン王子が言わなくてもいい事を言っていたのですが、ヴォルフスタン皇帝はその言葉を無視して歩き続けました。


 たぶんヴォルフスタン皇帝としては「聞かなかった事にしてやる」みたいな感じだったのかもしれませんが、自分の発言が無視される形となったジュリアン王子の表情がみるみるうちに変化していき……その様子に外野が騒めき始めて緊張感が高まるのですが、こんな事で終戦協定が破れても何ですので、現時点(出発前)ではどっちつかず(所属が不明)の私が首を突っ込む事にしましょう。


「お見送りありがとうございます…ジュリアン・デルブレル・ド・ラークジェアリー殿下には重ねてお礼を申し上げると共に、皆様一同のご健勝を心よりお祈り申し上げます」

 私が頭を下げるとジュリアン王子は引っ込みがつかないという顔のままだったのですが、意外と素直に人の言葉を聞き入れるところがあるといいますか、根っこのところにある人の良さが出た王子は私の言葉に耳を傾けました。


「ふん…これだから未開の蛮族は嫌なのだ!礼儀の何たるかも知らん!せいぜいお前も聖王国の名を貶めぬよう励むのだな!」

 それでも改めて他国の悪口(未開の蛮族扱い)を言っているジュリアン王子にヴォルフスタン皇帝がしかめっ面をしていたのですが……言いたい事を言うだけ言った事で冷静さを取り戻したのか、ジュリアン王子は居並ぶアインザルフ帝国の騎士達を見回してから渋々というように(分が悪いと感じた)引き下がりました。


「承知しました」

 ここでごねても火に油ですし、大人しく笑顔を返す私に対してジュリアン王子がバツの悪そうな顔をしていたのですが……どういう事なのでしょう?


 その表情の意味がわかる前にバタバタと出立する事になったのですが、ラークジェアリー聖王国を抜けるまではメネシア期(春季)特有の青々とした草原と過ごしやすい気温に支えられた旅路となり……ヴォルフスタン皇帝が馬車に籠りっきりで顔を出さない事やピリピリとした空気が騎士達の間に広がっていたのですが、トラブルらしいトラブルもなく旅路が進みました。


(魔物の襲撃もありませんし…長閑なものですね)

 自分達が守っている平和というものの大切さを噛みしめながら……真面目すぎるアインザルフの人達と上手くやっていけるかと思い悩んだりもしたのですが、質実剛健すぎるアインザルフの人達は有能で有益であればどのような人間でも受け入れるという空気があって……最初の内はどういう風に接していいのか分からないといったお客様感覚が抜けなかったのですが、ちょこちょこと手伝いを申し出ていると騎士の皆さんとも挨拶をするくらいには打ち解けたように思います。


「それでは…今日は地理の授業から始めましょうか」

 因みにラークジェアリー聖王国を出るまでに4日、ドヌビス王国を抜けるのに10日、アインザルフ帝国の帝都までは7日という計21日の行程となり……勿論その時の天候やら何も無ければという前提がつくのですが、その間にアインザルフ帝国の事やら聖女のお仕事についてのあれやこれをマリアンさん(先輩聖女)から教えてもらう事になりました。


「はい、よろしくお願い致します」

 アインザルフ帝国……大陸東方に位置する縦長の国で、土地の面積は単純比較でラークジェアリー聖王国の2倍ほどの大きさがあるのだそうです。


 そして東側が広大な海に面しているのはいいのですが、西側が敵国であるドヌビス王国に塞がれており……北方(北西側)に広がるピエニモンタ連邦と南方(南西側)に広がるバーハ共和国とは急峻(きゅうしゅん)な山々が遮っていたり魔物が犇めく大湿地帯が広がっていたりと孤立気味の立ち位置をしていました。


「そう、ですね…あと、は…隣国(ドヌビス)と比べて雪が多いのが特徴でしょうか?なのでこの時期(春先)は交通網の整備に苦労するのですが」

 碌に他国と繋がっていないという事情もあって、帝国内は主要都市を繋ぐ交通網がかろうじてあるだけで……ドヌビス王国の国境から帝国中央やや海側にある帝都エリュタスの間には中央道というメインストリートが走っており、この中央道を挟んで北側には雪原を含んだ山々が広がり、南側の西半分が湿地帯、それ以外は荒野が広がっているのだそうです。


 それでも一応南方地域(帝都からみて南東側)にはかろうじて商業圏といったものを築くだけの余裕があったのですが、国土の大半が荒れ地と瘴気に侵された土地であり……聖女の仕事といえばそれらの土地に蔓延る魔物を倒す事と交通網の確保と国中に充満している瘴気との戦いなのだそうです。


 驚いた事に、ラークジェアリー聖王国の2倍の面積を持ちながら聖女として活動しているのは第1から第9騎士団に所属する9人の聖女だけで……それすら欠員が出ていたり見習い聖女が務めていたりする場所もあるというくらい、アインザルフ帝国では聖女が不足していました。


「ですので、レティシア様には期待しております」

 先輩聖女(マリアンさん)にそんな事を言われて身の引き締まる思いなのですが、そのままの流れでアインザルフ帝国の聖女は体を鍛えて戦闘に備えている事やドヌビスや他国との関係性などを習い……ヴィクトル様に呼び出しを受けたのはマリアンさんとの勉強会を始めてから3日目で、明日にはラークジェアリー聖王国を出てドヌビス王国に入るというタイミングでした。


「少し…いいか?」

 もうすぐ夕暮れになるという時間帯、野営の準備を始める騎士達を横目に見ながらヴィクトル様が声をかけてきたのですが、これから焚火に使う木の枝をマリアンさん達と拾いに行こうと思っていた私はどのような用事だろうと首を傾げます。


「はい…どう、しました?」


「あー…難しい話ではないんだが、明日にはドヌビスに入るからな…その確認みたいなものだ」

 との事なのですが、何かしらの気がかりがあるのか言いづらそうに辺りを見回していたヴィクトル様が切り出したのは少し意外な言葉で……。


「先行させている部隊からこの辺りには魔物が居ないという報告は受けている…が、ドヌビスに入れば状況は変わるだろうし何が起こるかわからんのが世の常だからな…それで確認なんだが、レティシア嬢の戦闘経験はどの程度のものなんだ?」

 ここから先は危険だから魔物と戦った事はあるかという確認だったのですが、質問の意図としては戦力として計算しても(戦えるのか?)良いのか?という事なのだと思います。


「お心遣いありがとうございます、ですが…大丈夫です、大聖女に就任するまでは巡回聖女として各地を巡っておりましたので…と、言いたいのですが…流石に今はこんな体(結晶化)ですので、どこまでお役に立てるのかはわかりませんが」

 ここ数日、全力で治癒魔法をかけ続けて何とか指先の痺れや震えはマシになってきましたし、平地だったら躓かない程度に歩く事が出来るようになってきました。


 でもまだまだ万全とは言い辛い状態で……右腕が動かないという事には変わりがないですし、体内のマナの流れも右半分は動かず左側で何とか運用しているという状態です。


 全盛期の半分、もしくはそれ以下の出力しか出す事が出来ず……後は年齢に応じた小手先の技術でどこまで誤魔化す事ができるかといった感じなのかもしれません。


「ああ、そちら(魔物退治)の方にも期待している…が、その、なんだ…俺が聞きたいのは…そうだな…人を殺した事はあるか?という事だ」

 そんな事を考えていた私はヴィクトル様の言葉に息を飲み……。


(つまり、この先ドヌビスの妨害(対人戦の可能性)がある…と、いう事でしょうか?)

 終戦宣言が行われたといっても戦争からそれほど月日がたっておらず、2国間の積み重なった憎しみといったものは根深い問題なのかもしれません。


(ですが…今更、ですね)

 わかりやすく騎士団を動かす程ドヌビス王国も無謀でも短慮でもないと思うのですが、偽装盗賊団や不慮の事故を装った襲撃があるとヴィクトル様は考えているようで……その時に取り乱す事がないかという決意を聞かれているのだと思います。


 そして聖女としてこんな発言をするのはどうかと思うのですが、これからアインザルフ帝国の為に頑張っていこうと思っている身としては嘘偽りを言うのは気が引けますし、決して忘れてはいけない事なので正直に答える事にしました。


()()()()…ラークジェアリー聖王国にも盗賊は居ましたので」

 巡回聖女を続けていると武装農民に近い盗賊団との戦闘が発生する事があって……9人、助けられない人達(盗賊達)が居ました。


 当時は思い悩んだものですし、先々代の大聖女としての任期を終えていたルティナさん(先生の親友)にわざわざ会いに行った事があるのですが……思い悩む弟子に対して困ったような顔をしながらルティナさんは言ったものです。


『武器を取って人を襲おうとした時点で衝突は起きるものだから、あなたがどれだけ戦いたくないと思っていても衝突は起きるものよ…あなたが殺すか、誰かに任せて殺させるか…その違いでしかないわ』

 当時の私はルティナさんの言葉にそれはそうなのですがと思ってしまい、何とも言えない気持ちを飲み込んでいると優しく頭を撫でてくれて……。


『と、言っても悩むものよね…悩むのが人として正しい感性よ、私も巡回聖女としてそういう人達をどうしようかと思い悩んでいた時は…フフ、リヴェイルの奴がね、いや、ちょっと酷い事を言っていたのを思い出して』

 ルティナさんはひとしきり思い出し笑いをした後「ごめんごめん」と短く謝罪してからリヴェイル先生が言っていた事を教えてくれました。


『『護衛の騎士達に任せたら首を斬られるか心臓を突いて殺されるでしょ?だったらさっさと制圧すればいいの…魔物と違って手足の2本か3本吹き飛ばしたら無力化出来るんだから、だったら戦闘が終わるまで適当に転がしておけばいい…そんでもって、全部終わってから治療してやればいいんじゃない?』ですって』

 それは治療魔法に長けたリヴェイル先生らしい目から鱗な言葉で、当時は流石リヴェイル先生だと思ったものですが……今考えるとかなり過激な事を言っているような気がしてしまいます。


 とはいえ先生が言う事なので疑問を抱く事すらおこがましいのかもしれませんし、ありがたい薫陶を受けた私は相手を無力化してから捕縛、戦闘が終わってから治療をおこなうという一連の流れを確立する事が出来ました。


 勿論どうしても暴れ出す人達も居たのですが、数回死にかけると泣き喚きながら大人しくなってしまい……なのでリヴェイル先生の言っていた事は正しいのだと思います。


「大丈夫です、任せてください!」

 その言葉を思い出しながら力強く頷くと、ヴィクトル様は私の決意を感じ取ったのか大きく頷き返しました。


「そうか、わかった…もしもの時は頼む!」


「………」

 そうして私とヴィクトル様は強く頷き合い……そんなやり取りを傍から見ていたマリアンさんが私達の会話には何かしらのズレがあるといった感じの顔をしながら自分の頭に手を当てていたのですが、改めて何かしらの発言をする事はありませんでした。


「あ~…それで、だな」

 要件としては危険(戦闘の有無)の周知と戦闘経験の確認だったのですが、改まった様子を崩すヴィクトル様は別の話もあるといったように言葉を濁して……言おうかどうかと悩んでいるヴィクトル様に対して私はどうしたのだろう?と傾いでみせました。

※服装に関してはマリアンさんの趣味と言いますか、色々な理由が複雑に絡まり合った結果の諸々です。アインザルフで生足なんて出していたら凍傷まっしぐらですし、ローブの下にズボンとかタイツを穿くのが一般的です。


※ジュリアン王子がビックリしたのはダボっとした服を着ていたレティシアのスタイルの良さに驚いた感じで、美人に弱いという彼の弱点が出ていました。そして「惜しい事をしたような気がする」とか「味見をしておくべきだったか?」とか考えながらちょっとだけ「しくじったか?」みたいな思いをしていました。


※この世界の季節は地軸の傾きや公転周期がどうのという話ではなく、何かしらの属性魔力の影響を受けた結果になります。なので東西の移動だけでもガラっと季節が変わる事がありますし、同じ場所でも年度ごとにまったく違う状況になる事があります。


 そういう年度ごとの影響を最小限にするために季節と季節の間には中日というどっちつかずの期間(約2週間程度)が設けられており、専門家が色々と調べて季節の移り変わりを発表したりしています。


※ラークジェアリーを通過中、騎士達がピリピリしていたのは敵地だからです。後は単純にお互いに慣れていなかったという感じで、やや距離感があったり素っ気なく感じたというのがピリピリ感に繋がりました。


※巡回聖女 = この世界は魔物を倒した後や自然発生している瘴気を浄化していかないといけない為、巡回している騎士団と共に各地を巡っている聖女がいます。正確に言うと明確な魔物討伐出なければ(単純な浄化任務なら)聖女+護衛の騎士団という構成であり、部隊名は聖女の名前からとられる事が一般的です。


※盗賊コロコロ問題についての補足なのですが、何でリヴェイル先生じゃなくてルティナさんに相談しに行ったかというと、大聖女に就任した順番が「ルティナさん→リヴェイル先生→レティシア」であり、レティシアが巡回聖女をしていた時期のリヴェイル先生は大聖女として『門の間』に控えていたからです。基本的に『門の間』は関係者以外立ち入り禁止なので、会いに行く事が出来たルティナさんに相談する事になりました。


 因みに犠牲者が出たみたいな言い方をしていますが、味方や民間人には被害が出ていません。あくまでうっかり殺してしまった盗賊達の人数が9人というだけです。


※アインザルフ帝国の魔法技術的に付与は厳しそうなので聖女服の魔法付与を修正しました(4/29)。

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