7:襲撃
魔法についての話をした次の日、私はガタガタと揺れる馬車の座席に座りながら「どうしてこうなったのだろう?」と首を捻っていました。というのも前かがみになって手を伸ばせば届くような対面の座席にヴォルフスタン皇帝が静かに座っているからで……。
(てっきり、魔法についての質問をされるものだと思っていたのですが)
こうなったのはどこかよそよそしさを感じるようになってしまった騎士の皆さんとの朝食が終わった後、ヴォルフスタン皇帝が呼んでいるとマリアンさんが呼びに来た事が発端で……この時点でどこか様子がおかしかったのですが、マリアンさんが私を騙したり罠に嵌めたりする理由がなくて……とにかく案内されるがままにヴォルフスタン皇帝が乗る馬車に乗り込むと、何故か呼び出した側がビックリしている間に馬車が出発するというよくわからない事態に陥ってしまいました。
(移動中は暇なので、誰かと楽しくお喋りをしたかった…という事なのでしょうか?)
業務的な内容でなければ雑談的な理由かと思ったのですが、その割には終始「喋りかけないでくれ」みたいな空気感を漂わせていて……馬車の中に充満している魔力のせいで圧迫感が凄い事になっていますし、仕方がないのでウニョウニョと動いているヴォルフスタン皇帝の魔力を摘まんだり引っ張ったりしていると戸惑ったように身じろぎをされてしまい……少し子供っぽい事をしてしまったと誤魔化すように笑っておきました。
(2人きりというのも護衛的な観点で考えると問題があるような気がするのですが…ヴォルフスタン皇帝に対しての信頼が厚すぎるという事なのでしょうか?)
この人が本気になれば騎士団の一つや二つくらいなら軽々と滅ぼす事が出来ると思いますし、私が戦ったとしても瞬殺されてしまうと思うでのその辺りの心配事に関してはただの杞憂なのかもしれません。
それくらい目の前に居る人は圧倒的な強者であり、独特な危険性を孕んだ人ではあったのですが……こうして対面に座っている印象は粗暴に見えて用心深い気遣い屋さんといった感じで、野性的な美しさと抜き身の剣のような危うさを感じるという不思議な人でした。
「………」
そんなヴォルフスタン皇帝が何とも言えないような顔で腕を組みながら無言を貫き通していたのですが、どうやら陛下も状況が呑み込めていないようで……どこか戸惑ったように魔力が揺れていますし、何かしらの思考に耽っているようでした。
なので呑気にお喋りという空気でもありませんし、手持ち無沙汰気味に外の景色を眺めていたのですが……どうやら今通っているのはラークジェアリー聖王国の国境付近の森の中のようで……少ない経験と照らし合わせてみると後少しでドヌビス王国に入るというくらいの場所なのだと思います。
(前回来た時は簡単な関所があったのですが…今回通っているのは裏道でしょうか?)
国を治める人達からすると釈然としない事なのかもしれませんが、こういう風に何となくそろそろ越境するような気がするといった感じに国境を跨ぐ事が多いようで……場所によっては魔物の動向や瘴気の発生を見張る為の監視所が建てられているのですが、主要路から少しでも離れると放置されているも同然だったりするのだそうです。
そういう場所は巡回もおざなりで……鬱蒼と生い茂っている木々の裏にモヤモヤとした瘴気がこびり付いていますし、もう少し濃度が上がってくると靄や霧のように漂い始めてしまうのでしょう。
(職業柄、瘴気がモヤモヤとしているのが気になってしまうのですが…1人で粋がっていてもしかたがないですね)
そんな事を考えながら憂鬱な景色から目を離して馬車の中に視線を向けてみれば、内装は質素ながらも戦闘に備えた堅牢な造りをしているようで……ヴォルフスタン皇帝の魔力に耐える必要があるというのもあるのですが、馬車全体に魔力伝達効率が悪くて強度の高い黒曜鉄がふんだんに使われているようでした。
(居住性は二の次のようですし、こういう場所に押し込められていると話し相手の1人や2人くらいは欲しくなるというものですね)
重量のかさむ素材や座面を倒して寝台車に改造する事が出来るギミックなどを満載しているせいなのか、乗り心地という点では私が乗っていた馬車より劣っているようで……悪路に入っているだけという可能性はありますし、ラークジェアリー聖王国から送られて来る聖女の為に乗り心地の良い馬車が用意されていただけなのかもしれませんが、そういう気遣いが出来るだけの優しい人達の親玉がヴォルフスタン皇帝なのかもしれません。
「もう少しだ」
そんな事を考えながらヴォルフスタン皇帝を眺めていると、突然陛下が口を開いて……。
「そのようですね…何事も無ければ良いのですが」
私が即座に頷くと、ヴォルフスタン皇帝が「本当に分かっているのか?」というような顔をしたのですが……ちゃんとわかっているという事を伝える為にニッコリと笑ってもう一度頷いておきました。
「ヴィクトル様からドヌビス王国で襲撃にあう可能性がある事をご指摘いただいておりましたので、その注意喚起…ですよね?」
多分そうじゃないかと思って確認を取ってみると、陛下は感心したというように軽く頷きながら説明を付け足してくれました。
「ドヌビスからモゼールが来ていた…鷹派に属する奴の事だ、絶好の機会と捉えて仕掛けて来る筈だ」
魔力が漏れないように声を潜めながら説明をして下さるのですが、それでも込められている魔力で馬車の車体がミシミシといって息が詰まってしまいます。
「無論、こちらからも裏工作をしかけて厭戦気分を高めるように手を打っている…が、襲撃を蹴散らした方がより効果的だろう」
そんな圧力を受け流しながら話を聞いていたのですが、ヴォルフスタン皇帝は仕事の話だと意外とお喋りなようで……説明というよりまるで独り言というような言葉ではありましたし話を合わせる方が無難ではあったのですが、聖女として不必要な戦闘を肯定するのもどうかと思ってついつい口を挟んでしまいました。
「このまま厭戦気分が高まるのでしたら戦わないというのも選択肢の一つだと思います…被害を被るのは立場の弱い者達からですし、今後の外交的なものを考えると揉め事は少ない方が良いのではないですか?」
反論される経験が少ないのか、口答えともいえる言葉にヴォルフスタン皇帝が驚いていたのですが……陛下が言い返す前に馬車の周囲が騒がしくなります。
「それも一つの考えかも知れないが…そうもいかないようだ」
「みたい、ですね…仕方がありません」
どうやら私の心配を他所に争いごとが起きてしまったようで……立場を考えるのなら率先して動かなければいけないのですが、半身不随の私は動く馬車の中では機敏に動けなくて……ヴォルフスタン皇帝がいそいそと周囲の確認をしているのをのんびりと眺めているという可笑しな状況になってしまいました。
(だからといって、今から慌てて立ち上がるのも…?)
それはそれで割り込んでしまう形になりますし、奇妙な空気に耐えながらガタゴトと揺れるヴォルフスタン皇帝の背中越しに窓の外を眺めていると、馬車の横を並走しているヴィクトル様が身振り手振りで何かを伝えて来ているようで……。
「……」
緊迫する二人の間に会話はなかったのですが、襲撃があった時の打ち合わせは事前に済ませていたのでしょう、ヴォルフスタン皇帝が頷き返すとヴィクトル様はあの大きな大剣を担いだまま追い抜いて行きました。
「襲撃のようだ、ドヌビスの事だ、対魔物戦になるのだろう…アインザルフの力を見せてやる…と、言いたいところだが」
試すようにヴォルフスタン皇帝が視線を向けて来るのですが、私はその視線に対して力強く頷いて……。
「このような体ですのでどこまでやれるのかはわかりませんが…任せてください」
消極的な事を言った後だったので確認される事になったのですが、窺うような視線のヴォルフスタン皇帝に戦う意思を伝えると好意的な眼差しを細められました。
こういう笑顔を見ているとごくごく普通の人にしか見えないのですが、感慨深げに眺めている間に慌ただしく馬車が止まったかと思うと御者をしていた騎士がドアを開けて……ヴォルフスタン皇帝が出て行くのと同時に先頭集団に追いついたと思わしきヴィクトル様の号令が響き渡りました。
「馬車を中心に円陣を組め!!対ウルフ!ロルフとテファンは左右の遊撃!ドヌビス兵は近くに居ないようだが油断はするな!ここが敵地であるという事を忘れるんじゃないぞ!!」
お腹の奥底から響くような号令に従い陣形が組みあがっていくのですが、身体強化をかけながら片足立ちの要領で馬車から降り立った私はこの後どのように動くのが正解なのでしょう?
(私も陛下の後に続いた方がいいのでしょうか?)
ある程度の自己判断は委ねられているといいますか、ついて来たいのならついて来たいのならついて来るが良いといった感じなのですが……よそ者がしれっと混ざっているというのは色々と問題があるような気がして辺りを見回すと、どうやら私達は小高い丘を登っている途中で襲撃を受けたようで……道幅は馬車が3台同時に通れるくらいの広さでしょうか?藪からの奇襲を警戒して2台2列で移動中だったのですが、防御方針としては命綱となっている荷馬車を守る形で徒歩の騎士達が守りを固め、前後に配置された腕利きの騎兵が遊撃をおこなう予定なのだと思います。
「レティシア様…ご無事ですか?」
そんな人の動きを眺めていると、別の馬車から降りてきたマリアンさんが声をかけてきて……ようやくどうしたらいいのかを聞く事が出来る人が来てくれた事に対して安堵の息を吐きました。
「はい、大丈夫…です、が?」
ヘニャリと笑うと、何故かマリアンさんは私の様子を確認するようにジロジロと眺めてきて……。
「どうぞ、こちらへ」
どこか打算的でありながらも安堵したような笑みにコテリと首を傾げてしまったのですが、マリアンさんは特に説明のないまま歩き出して……私達は簡単な作戦会議を行っているヴォルフスタン皇帝やヴィクトル様達と合流する事になりました。
「先行させていた部隊から鏑矢が上がったのですが、怪しい動きをするドヌビス兵を発見、問い詰める前に魔物を放たれてしまったようで…もう少し進んだ場所で待ち構えているものだと予想していたのですが…申し訳ありません、読みを外されました」
ヴィクトル様は苦々し気に前方を睨みつけながら説明をおこなっていたのですが、私達が追いついて来たのを認めると軽く目を見開いてから憐みにも似た視線を向けて来て……それから「何故連れて来たんだ?」みたいにマリアンさんを睨みつけていました。
「コホン、失礼しました…面目次第もございません…お叱りは後程、今は対応を優先したいと思います」
それから今は大事な作戦会議の途中だったと申し訳なさそうに目を伏せるヴィクトル様なのですが、ワチャワチャとしている2人を無言で眺めているヴォルフスタン皇帝は怒っている訳でもないようで……土地勘は相手にあるので多少の失策は致し方なしと考えているようですし、この2人がワチャワチャとしているのはいつもの事なので殊更咎めたてる気にもなれないのかもしれません。とにかくそういう感じに情報交換がおこなわれていたのですが……。
(報告を聞いている限りだと、待ち伏せをしようとしたら待ち伏せを仕掛けられた…という感じでしょうか?)
襲撃を仕掛けて来るドヌビス兵を逆包囲しようと分散先行させていたら正体不明の一団を発見したそうで……そんな状況で“ドヌビス兵”と断定しているところがアインザルフ帝国とドヌビス王国の仲の悪さが滲み出ていたのですが、とにかく急ぎ敵部隊発見の鏑矢が飛んだか飛ばないかくらいのタイミングでヴォルフスタン皇帝が居ると思われる方向に向かって魔物の群れを放たれてしまったのだそうです。
(ドヌビス王国が終戦協定を無視して襲い掛かって来ているという事にも驚きなのですが、他国だと魔物すら使役しているのですね)
どのように魔物を使役しているのかがわからなすぎて震えてしまうのですが、周囲に居る騎士達が「また魔物使いの奴らか!」とか「性懲りもなく!」とか憤慨しているので魔物を使った小競り合いが日常的におこなわれているのでしょう。
後日完璧に魔物を操っている訳では無い事を教えられて少しだけ安心する事になるのですが……とにかく瘴気が殆ど存在しない場所での対魔物戦となるとこちら側が少しだけ有利になりますし、早期に接敵した事で相手の予定を狂わせる事が出来たと考えると状況的にはトントンなのかもしれません。
そんな事を考えながら作戦会議に顔を出していたのですが、私が戦況や技術の進歩について思いを馳せている間に状況が移り変わっていき……。
「敵襲!正面!森林狼が…8匹!!」
斥候に出ていた2騎の騎兵が大声を上げながら戻って来ており、その後ろに森林狼……緑色の体毛を持つ5メティ程度の狼が何かに追い立てられるように走って来ていました。
「くそっ、なかなか厄介な相手だが…マリアンは補助を!前衛は俺に続け!踏み込んで来ないと思うが、伏兵にも気をつけろ!荷馬車に近づかせるな!!」
緑の津波ともいえる巨大な狼達を迎え撃つ戦力は40名中の17名で、セオリー通りであれば1匹あたり20~30人の騎士で囲むべき相手ではあるのですが……それでも味方側に動揺は見られず、各々武器の様子を確かめながら押し寄せて来る魔物の群れを見つめていました。
「出る」
そんな状況でヴォルフスタン皇帝が前進するのですが、止めた方が良いかと思って視線を向けた私は『狼皇帝』という異名の一端を見る事になって……。
(これが…陛下の力)
やっている事は圧倒的な魔力で全身の強化をおこなうというシンプルな戦い方なのですが、陛下の体から溢れ出している魔力が圧縮されていったかと思うとチラチラと逆立った黒髪が魔力に煽られるように揺れていました。
そんな状態で自分の拳に何重もの魔力を込めていくと尖った爪を持つ巨大な手の様な形に変形していき……変換効率が悪すぎるので不揃いな化け物じみた見た目になっているのですが、これだけ強めの身体強化を施してしまえば並みの武器では握っただけで壊れてしまうのでしょう。
「へ、陛…ッ!?」
「GYAHUx!!?」
そして何事かと叫び声を上げるヴィクトル様の言葉が終わる前にヴォルフスタン皇帝が地響きを立てて駆け出したのですが、行掛けの駄賃だというように一番真ん中に居た森林狼が引き裂かれていき……その勢いと通り抜けて行く時の衝撃波で残りの森林狼が左右に吹き飛ばされていきました。
私としてはそのまま退散してくれればよかったのですが、奇妙な魔力の波が森林狼の後ろから広がって来たかと思うと散り散りになりかけていた狼達がワタワタとこちらに向かって来てしまい……異様な動きを見せる森林狼に違和感を覚えたのですが、考えるのは一旦後回しにしましょう。
(先手必勝…と、いきたいところなのですが)
巡回聖女だった時はサッサと蹴散らしたのですが、勝手に突出する訳にもいきませんし……どのように戦うのかもわからないヴィクトル様達の邪魔をしないように足並みを揃える必要がありました。
(だから…まず、は!)
奇妙な魔力の出所辺りにドヌビス王国の人達が潜んでいるのだと思うのですが、今はそれより目の前に迫って来ている森林狼達の方が問題です。
問題なのですが、ヴォルフスタン皇帝はドヌビス兵を見つけ次第蹴散らすでしょうし、虐殺を止める事が出来ない無力感といいますか、寂寥感の様なモノが積もっていくような奇妙な重さを感じたのですが……ここでウダウダと悩んでいても被害が増すだけですし、今の私に出来る事は出来るだけ早く森林狼との戦いを終えて駆け抜けて行ったヴォルフスタン皇帝に追いつく事だと前を向きました。
(全力を尽くしましょう!)
魔物達の不自然な動きは気になるのですが、こちらの動きに対して何かしらの対処を行うという訳でもないようで……とにかく戦闘が避けられない状況のようですし、軽く呼吸を整えながら周囲を見回します。
ラークジェアリー聖王国での戦い方は学んでいるのですが、アインザルフ帝国の戦い方はわかりません。なので戦闘スタイルを合わせようとマリアンさんを見てみると、付与の聖印を切っているところで……。
「ハイニッシュティーアズ!」
魔物のエネルギー源は瘴気の塊である魔石にあるのですが、これがなかなか難物で……浄化されていない魔石が体内に残っていると普通の武器ではなかなかダメージを与える事ができませんし、肉体を損壊させるレベルのダメージを与える場合は強力な魔法を使うか特別な武器が必要でした。
(数パールディジト離れた空間への固着…でしょうか?)
なのでマリアンさんが最初に行ったのはヴィクトル様が持っている黒曜鉄という付与には適さない大剣に強力な付与をおこなう事だったのですが、マリアンさん程の実力者ならもう少し上手い方法があるような気がしてしまい……私が首を傾げている間も騎士の皆さんが牽制用の矢を射ていたのですが、森林狼が鬱陶し気に顔を振るだけで弾かれダメージを与えていませんでした。
(でも…?というのは後回しにした方がいいですね)
陣形も森林狼に合わせてハの字の鶴翼に移行しているようですし、他の騎士達が防御を受け持ち勢いを削いだところにヴィクトル様を突っ込ませるという作戦なのでしょう。
「支援続きます!身体強化!!」
色々と気になる事はあるのですが、この状況で余所者が出しゃばると足を引っ張りそうですし……全体の底上げと牽制のフォローをおこなおうと左手を高らかに翳して魔法を発動させました。
因みに私の『簡易魔法』の場合は言葉にしなくても発動させる事が出来るのですが、無言で発動させるとどういう補助が入っているのかがわかりづらいようで……これもリヴェイル先生の教えではあるのですが「行き成り身体強化をかけられたりしたらビックリするでしょ?」という至極まっとうな教えを守る形でどんな効果の魔法をかけたのかを言うようにしています。
(3倍程度に抑えておきましたが…とりあえずこれで!)
久しぶりの広範囲の補助魔法だったのですが、荷馬車を守るために密集していた事や人数が少なかった事が良い方向に作用したようで、結晶化した状態でも全員分の強化をする事が出来ました。
勿論やろうと思えばもう少しくらい補助魔法を強める事ができたのですが、魔法をかけられている側が慣れていないと感覚のズレが発生するという弊害があって……強化された騎士達が少しだけザワついていたのですが、説明をしている時間が惜しいので牽制用の攻撃魔法の準備に入ります。
(ふぅ…ッ!?と、意外と)
説明を省いたのは皆の戦闘スキルを信頼した上での選択だったのですが、私が魔法を使った事でマリアンさんがこちらを確認するように振り返り……「フォローは任せてください」という意味を込めて頷き返しておきました。
それから威力を上げる為にマナを込めると水晶化している右側がチリチリと痛むのですが、痛みを和らげるために『祝福』をかけながら再度左手にマナを集めて……。
「ホーリーアロー!」
ルティナさんくらいの使い手であれば森林狼くらい撃ち抜く事が出来るのですが、私の場合は色々な細工が必要で……なので今は威力より広範囲と満遍なく叩き込む事を意識して、襲撃体勢に入っている森林狼達に向かってマナを固めた無数の光弾を降り注がせました。
※ヴォルフスタン皇帝が喋り始めたのはレティシアにある一定以上の理解力があった事と、自分が会話をしても問題がないという事でちょっとだけ浮かれていました。たぶん馬車の中で長々と喋っていた事をヴィクトル達が知ったらかなり驚かれると思います。
※国境沿いにラークジェアリーやドヌビスの見張りがいないの?という疑問があると思うのですが、ラークジェアリーはそこまで気を回せる人達が居ないですし、ドヌビス側は奇襲を仕掛ける為に兵を潜ませているので見える場所に配置をしていませんでした。
※この当時の連絡手段は偵察部隊による索敵が主で、引き返して来るまで状況がわからないという事がざらにありました。これはジャーン!ジャーン!みたいな銅鑼や鐘といった鳴り物を使うと魔物を引き寄せてしまうからというこの世界特有の事情があるのですが、遠距離からどうしても伝えないといけない事があった場合は忌避剤(効いているのかは不明)を混ぜた狼煙を上げたり視認できる中距離や緊急時の場合は短弓による鏑矢(音が鳴る矢で、括り付けている紐や布の色で情報のやり取りを行う)が使われていました。
とはいえ全体的にこの辺りの技術は進んでおらず、主戦場が近距離戦闘(魔物とは至近距離での遭遇戦が多い)において体を鍛えた騎士が全力で走って行き来する方が早かったりするからという事情があったりします。
※瘴気が殆ど存在しない場所での対魔物戦 = 瘴気の濃い場所だと魔物がパワーアップしたり自動回復がついたりします。
※魔物の名前についてなのですが、国別に表記ゆれがあったり細かな種類の違い(地域差あり)で名称が代わっていたりします。具体的に言うと今川焼とかおやきとか回転焼きとかいう部類の問題であり、会話で出て来る場合は何となくニュアンスが伝わればいいやみたいな扱いをされています。




