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君に愛を

作者: あおか

「だーれだ!ふふっ。」


彼女はそうやっていつも俺をからかってくる。デートで待ち合わせをするといつもこうだ。でもそんな彼女がとても大好きだった。


ある日俺らはデートの約束をしていた。

いつもの木の下で。

だか彼女は来なかった。何故だろうか。俺は彼女に電話をかけた。そしたら違う声が聞こえてきた。誰だろう。そう疑問に思っていると、


「今すぐ病院に来てください。」


そう言われた。俺は急いで向かった。何か胸騒ぎがしたからだ。


病室に入るとそこには呼吸器をつけた彼女の姿があった。俺は急いで彼女のもとに向かった。意識がない。一体何が。そんなことを思っていると一人の医者が声をかけてきた。医者によると待ち合わせ場所にくる途中誰かに刺されたそうだ。そしてもうひとつ、末期癌が見つかったそうだ。もって1週間だそうだ。

目の前が真っ暗になった。どうして彼女が。どうして。



そうして一週間がたった。彼女は目を覚まさない。一度でいいんだ。もう一回目を開けてくれ。しかし叶わず彼女は息を引き取った。何故だ。どうしてなんだ。どうして別れの言葉さえ伝えさせてくれないんだ。それにまだ伝えていない言葉があるんだ。それなのに何故。何故……


その日からだろうか。周りの色がなくなった。彼女がいない世界で生きる意味は?なんだ?俺はどうすればいいんだ?どう生きればいい?どうすれば……


月日がたった今俺は病室の天井を見上げている。彼女がいなくなって40年以上はたっただろうか。俺も彼女と同じ末期癌だそうだ。余命1ヶ月と言われてから2ヶ月たっている。どうせ死ぬなら早く死にたいものだ。


1時間後俺の様態が急変した。やっと楽になれる。今思えば後悔ばかりの人生だ。もし生まれ変われたら、彼女に会えるだろうか。

こんな時まで彼女ことが頭によぎる。本当に後悔ばかりだ。



次に目を覚ますと何もない空間だった。俺死んだのか。そう解釈した。そして歩きだそうとした瞬間だった。


「だーれだ!ふふっ。」


一瞬で誰だか理解した。やっと会えた。振り向くとあの頃の彼女がいた。涙が止まらない。


「大丈夫だよ。」


そう言い、俺の頭を撫でてくれた。本当に、本当に彼女だ。

俺の世界が色づいていく。そうだった。久方ぶりに思い出した。

彼女の髪の色が赤くきらめく。


「ほんと、綺麗だなお前は。」

「もう、何よ全く。ふふっ♪」


彼女が向日葵のような笑顔を見せた。俺が彼女に惚れた理由が改めてわかった気がする。本当に綺麗だ。今なら言える気がする。

あの言葉を。伝えることができなかった言葉を。


「愛してる。これからもずっと君のことを。」


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― 新着の感想 ―
[一言]  読ませていただきました。  ふと「君の膵臓・・・」を思い出しました。  とはいえ、目の前の現実にもくれず、40年も彼女のことを思い続ける一途な主人公はせつないですよね。  ありがとうござい…
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