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 美月文乃みづきあやのは機嫌が良かった。

 ワンボックスカーのハンドルを握り、ラジオから流れてくる音楽に身を任せながら、時折それにあわせて口ずさむ。ただ、時々、妙に音がズレている気がして、少し気持ちが悪い。

 その後部座席で、草薙響くさなぎひびき七尾梢ななおこずえは、黙ったまま外を流れる景色を眺める。

 文乃は『妖かしの一族』で、八神家の一つである美月の一族で、彼女は『騙し神』と呼ばれている。そして、七尾梢は『憑神』と呼ばれ、彼女には妖力を吸い取る『白狐』が取り憑いていて、彼女はその力を使いこなしている。

 そんな二人に響が同行し、福島に向かっているのは事情があった。


 文乃が一条家にいる響を訪ねてきたのは一昨日の夜のことだ。

「実は、梢ちゃんから相談されているんだ。彼女の友達のお兄さんが妖かしに命を狙われているんじゃないかっていうんだ」

「妖かしに? 狙われるには理由があるのでは?」

「――かもしれない。しかし、彼女の話では、お兄さんはそんな人じゃないって」

「それを信じるんですか?」

「どうだろうねぇ。ただでさえ自分の家族のことはわからないものさ。それに自分の家族のことは悪く思いたくないものだからね」

「梢さんの友達ってどんな人なんです?」

「さあ、知らないよ」

「知らない?」

「うん、知らない。会ったことないもの、当然でしょ」

「話は?」

「それも詳しいことはまだ聞いてないよ」

「聞いてない?」

「道すがら聞けばいいじゃないの。何か問題でも?」

「問題もなにも……そんな状況で行って何が出来るっていうんですか?」

「なんとかなるもんさ」

 文乃は何の不安もないかのようにケラケラと笑った。

「なんとかって……どうするんです?」

「さあ、どうすればいいと思う?」

 文乃は響に向かって聞き返した。

「ノープランですか?」

「だって、まだ何もわかっていないじゃないの。まずは知るところからはじめないとね。響君だって、本当のことを知りたいとは思わないかい?」

「それは……そうですが」

「よし、決まった」

 上手く言い含められた気がするが、その結果、響は文乃に連れられその男がいる福島へと向かうことになった。


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