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第一話 猫の現れ

 あたいは、いつものように、学校に行っていた。


 もうすぐ中三なんだが、私の村の学校は、小学校から高校まで、同じ施設である。


 だから、この村にいる限り、よっぽどのことがない限り、受験などせずとも高校に上がれる。


 あたいが生きている間では見たことはないが、私の村の高校に村の外から入る人だけ、受験をするらしい。


 ちなみに、学校の生徒は、小中高合わせて6人だ。


 男子1、女子5、の割合である。


 帰り道、いつものように村の学校仲間と家に帰っていた。


 すると、突然あるものが道をふさいだ。


 猫だ。


 猫は止まって、こちらを見つめている。 


 「ゆらぽんの猫ってあんなんじゃないよね」

 「うん、全然違う。こん猫、黒いもん」


 ゆらぽんとは、学校仲間の一人、川崎(かわさき) 由良(ゆら)のことである。


 白い猫を飼っているんだけんど、今出てきた猫とは明らかに違う。


 すると、猫は近づいてきた。


 「きゃっ!」


 突然、その猫は、私の隣にいた、(やなぎ) 和音(かずね)、かずーの足にとびかかった。


 「この黒猫、すっんごいかずーに懐いとるねー」

 「わ、わたし、別に何もしとらんのに・・・」

 「あーしもさわりたーい!」


 そう言ったのは、現小三、あたいの妹、代津子だ。


 「ど、どーぞー」

 「ひゃっほー!かあいいなー」


 そう言って、なでなでしだす。


 「しっかし、この猫、どうしたんだろ。迷子かな?」

 「迷子でこんなとこ来よるけ、不可能やろ」


そう言ったのは、学校仲間、松崎(まつざき) 明日香(あすか)


 「とりゃーず、とっちゃんとこでどうすっか聞いてみっか?」

 「そだな」


 あたいのとっちゃん(お父さん)とゆらぽんのとっちゃんとかずーのばっちゃとじっちゃは村の本部みてっとこやっとって、なんかあればすぐ相談すっとこみていになっとる。


 そして、その黒猫を持っていった。 


 「おう、帰ったか。おけーりー。みんな」

 「ただいまー!」

 「ただいまですー」


 すると真っ先にとっちゃんは猫を指さした。


 「あれ、そん猫、由良ちゃんとこんやあないよな、どしたんだ?」


 猫はこの村ではゆらぽんしか飼っとらんから、猫と言えば由良ってな具合で、みんな知っとる。


 「途中でいきなり出てきた迷い猫っぽいんやけど・・・」

 「だからこんなとこ迷って来れんって!」


 そう言うと、とっちゃんは、腕を組んだ。


「確かに、明日香ちゃんの言う通り、迷ってくるにはこげんとこくるんはおかしいよな…」

「そやろ!そやろ!」


それからとっちゃんは何やら、迷い猫か…どうしたものだ…このままやとかわいそうやし…と一人でぶつぶつ独り言を言っていた。。


そんなとっちゃんに、代津子が水を差した。


「とっちゃん!どうすんねんな、これ」


すると、とっちゃんは寝耳に水をかけられたように、いきなり一人で驚き、我に返った。


「とりゃーず、こん猫はみんなで見つけたもんやろ。だから、だれか君らの誰かが飼ったらどや?」

「あっそれ、えいにゃー!」

「どう決める?」

 「あーしがもらいたーい!」

 「代津子、みんなそうだから。みんな欲しい?」

 「私、欲しい!」

 「明日香!でも、私も欲しいなあー」

 「ゆらぽんは飼ってるじゃん!」

 「え~いいじゃ~ん。この子かわいいし」

 「私も欲しいんですけど・・・」

 「かずーもか!よーし、みんな欲しいんなら、じゃんけんだ!」

 「おっけー!せえ~の~!」

 

 みんな身構える。


 「じゃ~んけ~んぽ~ん!」


 ゆらぽんとかずーが勝った。


「あー!ゆらぽんずるーい!」

「かずーいまあとだししたー!」

「えっすっすみません・・・」

「もっかいやろ!もっかい!」

「せっかく私勝ったのにーー」

「ゆらぽんはえいやん!」

「いくよ!じゃ~んけ~んぽん!」

「代津子ー!待ってよぉー!」

「ねえねえがちゃんとださんとてあかんやろ!」

「っでも!!」


そんな感じで、ちょっとにらみあっていた。


そしたら、とっちゃんが助けてくれた。


「こらこら。取り合って決めるもんでねぞ!取り合うなら、みんなで飼いなさい」


すると、由良が、考えついたような顔をしていた。


「みっちゃんのとっちゃん!それ、えがなー!よし、みんなで飼うだ!」

「う~ん。確かに、みんなで飼うんはよさそやな!あたいさんせーい!」

「私も…それで、いいと思います・・・。」

「じゃあ決まりやな。みっつ、あんたこの猫、どこで見つけてきたん?」


みっつとは、あたいのとっちゃんがあたいに言ってるあだ名である。


「学校から降りてったとこの石碑があるとこの近くやよ」

「ほうか。んだら、こん猫、ここで飼っておくから、みんな、見に来たいとき来い!夜は・・・川崎さんとこって、大丈夫か?」

「え?いやーまあでも、ちょっと難しいかも・・・」

「ほうか・・・ほいだら、おれんとこで預かっとく」

「ああ!美津子と代津子ずるーい!」

「でも、そういうことらしいし、しゃーないで!」

「でも、安田家なら、二人でかわいがれるし、ええやない?」

「そだな!その方が、楽やし、猫もよろこんでくれんな!」

「あ!この子、名前つけてあげんと!」

「名前か・・・」

「黒猫だから・・・くろ!」

「いやさすがにありがちじゃない!?」

「じゃあ、明日香!」

「私!?違うでしょ!」

「う~んどうしよ~う」

「この猫・・・よく見たら、マルーン色じゃないですか?」

「マルーンかあ・・・マルーン、あずき・・・」

「あずき!いいじゃんあずき!この子の名前!」

「あずきいいね!じゃあ、あずきにしよう!」

「かずー!ありがとー!」

「いえいえ、ゆらぽんが連想してくれたから・・・」


そう言っているかずーの言葉は、少し嬉しそう。


「じゃあ、名前も決まったし、もっと遊ぶー!」

「んもう、代津子、はしゃぎすぎないでね」


こうして、「あずき」とこの村の日々が、スタートした。

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