プロローグ 村ととっちゃん
「やすちゃ!久しぶり!」
「みちおぅ!久しぶりよのお!」
田舎の道で、そんな男たちの声が聞こえる。
一人の男は、安田茶太郎という。
そしてもう一人は、黒田道雄という。
二人はここで、感動の再会を果たしたのだろう。
ここは山奥のとある小さな盆地の村。
トンビが遠くで鳴いていたり、
地平線の真ん中に木がポツンとあったりする、[超]「ど」田舎なとこだ。
別に江戸時代でも何でもない。
ヨーロッパのハイジんとことかでもない。
現代の、デジタル化している日本の中の村だ。
テレビだって一応あるし、スマホ・・・は時々圏外になるくらいで、ちゃんと使えるし、一時間くらい軽く歩けばバス停だってあるし。
この前テレビで新元号「令和」が発表されるのも、村のみんなでたーんと見た。
そんくらい、普通のところだ。
え?あたい?
あたいは安田美津子だ。
さっき言ってた、安田茶太郎の娘だ。
こんど高一になるってん、ごく普通の女子だ。
父が酔っ払った勢いで、親友の「みちお」からなまって「みつお」、「みつこ」となったらしい。
私の妹は、私が三つだからって四つで代津子だ。
もうちょい名前はかんげえてほしいっての。
父と道雄さんの二人は、長いこと会っていなかったらしい。
それこそ、私が生まれたくらいから。
でも、二人を再開させたのは、一匹の猫だった―




