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極東西遊記~古代日本に転生したぽいので建国してみた  作者: 星 武臣
第4章 天下布武(岐阜・滋賀南部編)
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77話 仁の地元、桑名の現在

熊野歴四月中旬


 持って行く服を買い込み、岐阜へ向かう事にした。塩とかの必需品は奇兵隊が定期的に行商しているので、積み荷には積まない。意外と重いからな。


 鹿車に乗るメンバーはうずめとタマだ。くくりはトヨウケとの料理の研究が楽しいらしく、今回の岐阜行きはパスだそうだ。まあ、隣の県だし行こうと思えば何時でも行けるか。いつの世もお父さんは娘にぞんざいに扱われる宿命らしい。


 伊勢から鈴鹿へ向かいそこでうずめを下す事になっている。近衛さんの話では鈴鹿と言う地名は天武天皇が若かりし頃に、鹿とはぐれないよう鹿の首に鈴を付けて川を渡っのが由来らしい。昔の人は騎乗用か荷物の運搬用か知らないが、バリバリ鹿を使っとるやんけ、地元なのにそんな由来が有るとは知らんかった。それはさておき、うずめ達を待たせて居る事だしそろそろ出発しようか。


 のどかな田園風景を眺めながら、鹿車に乗ってゆっくりと北上し、鈴鹿でうずめと別れてから、俺の地元の桑名に向かう。桑名に着いた時には既に夕方だったのでココで一泊して、明日になったら岐阜へ向かおう。船で長良川を上流に行くと岐阜市に出るのでそのルートを取る事にした。


 以前は寂れた漁村だったが、大きな荷物の集積場が作られ賑わって居た。ここから七里の渡しと呼ばれる名護屋市に向かう船と、木曽三川を利用した岐阜の各集落を結ぶ船の発着点として、この町は発展して来たな。この町の少し高台になった所に、俺の経営する宿屋と飲食店を兼ねた狩猟組合が有り、そこを中心に骨を加工した装飾品を売る店や、魚の塩焼きなど簡単な料理を売る屋台が軒を連ねている。早速、宿に荷物を置き町をブラブラしてみよう。


「主様よ、ココの名物料理は何じゃ」


「ハマグリかな」


「なんじゃ、変わった肉はないのか?」


「何だよ変わった肉って、あのなタマ、基本的に日本に居る限り肉は鹿かオークだぞ。タヌキとかムササビとかを食べる地域は有るかもしれないが旨いい物じゃないな」


 後は松坂と伊賀で育てている牛肉が流通し始めて居るのと、オークの品種改良が成功すれば料理の幅は増えるかもしれないな、そういえばアイヌの生活を描写した漫画ではリスとかも食っていたな。アレなんだったけチプタプ?


 アレに味噌とショウガやミョウガなどの薬味を入れて、鯵のなめろう見たいにしたら旨いかもしれない。大葉を入れるのも良いな。少し作って見るか……


 市場に行って食材を物色して居ると松の実が有った。木曽三川の近くに有る町の周辺には盛り土をして、堤防の補強のため松の木を植えて有るが、これを食べる人間が居たとは驚きだな。松の実はジェノバ風ソースの材料の一つで炒って食べても美味しいけど、食べる所は少ないんだよね。


「主様よ鳩じゃ、鳩が有るぞ」


「ハトか、フランス料理とかでは定番の一つだよな」


 鳩と言っても現代の公園で良く見かける灰色の物では無く茶色をした山鳩だけどな、使う肉は鳩で良いか、狩猟協会の調理場を借りて少し作ってみよう。


「お~い、店主はいるか?」


「おお、これは若様じゃないですか」

 若様じゃなくて、ここの社長なんだけどな。


「少し調理場を貸してくれないか?」


「ここにも、伊勢や伊賀と同じく名物料理を作って下さるのですか?」


「まあ、そんなところだな」


 行商と情報取集をを行う奇兵隊の下部組織として狩猟協会を作ったが、今では各地の領主との共同経営で成り立っている。建物を作るのには金(米)と人が必要なので、少し利益が減るが領主の手を借りた方が手っ取り早いのと、地域密着型で経営しようとすると領主の協力は必要ではないかと言うのが主な理由だ。決して最初に話を持ち掛けた、熊野さんの「一枚かませろ」と言う提案を断れなかったからじゃないからな。


 町の人も俺の事を若様と呼んで居るが、俺と天音さんが結婚すれば伊勢の次の代の領主は俺になる。ここで先行投資として名物料理を作るのも悪くはない。とは言っても共同経営と言う形を取っているので、現段階でも俺に利益は入って来るんだけどな。


 それでは料理を始めよう。鳩の首を落とし切れ目を入れてから皮を剥ぐ、本来なら羽をむしったりするのだが、今回は鳥皮は使用しないので丸ごと捨ててしまおう。これはウサギとかの調理にも応用出来るな。後は尻からみぞおちの辺りまで包丁を入れ内臓を取り出してしまおう。内臓も食えなくないが野生動物は寄生虫の危険が有るのでコイツも捨てて置こう。


 肉の表面を少し炭火で炙って香ばしさを出す。所謂タタキだな。

 骨から身を外して、味噌・生姜・ミョウガなどと一緒に包丁で叩いて行く。

 仕上げに上からアサツキ(万能ねぎ)と炒った松の実を掛けて出来上がりだ。

 今回は塩で下味を付けて、ポン酢で食べるタイプの物も作って見た。

 早速食べてみよう。


「鳩のタタキなめろう仕立ての出来上がりだ。皆試食してみてくれ」


「待ちくたびれたぞ、主様よ」


 そう言ったタマはガツガツと料理を食べ始めた。もっと味わって食べろよ手間掛かってるんだからさ。


「これは食感と複雑な風味が良いですね」


「複数の鳥肉を使った方が食感の妙が楽しめるかもな。鶏の軟骨とか入れると良いと思う」


「それは良いですね。後で試してみます」


「主様よおかわりは無いのか?」

 ねぇよ!!


「それでは、この辺りで取れるツグミの丸焼きでも出しますよ」


 ツグミか食べた事がないな。乱獲により絶滅が危惧されていて、現代では捕獲すると捕まるんだよな。食べて見ると小さな身に似合わず濃厚な味がして旨いな。


「店主よ、ツグミを生きたまま酒に溺れさせると体中に酒が回って香が良くなるらしいぞ。日本酒よりはハチミツ酒の方が合うと思う」


「それは美味しそうですね。早速試してみます」


 これはフランス料理の技法で、生きたままコニャックにつけて溺死さる。溺れる恐怖により心拍数が上がり体の隅々まで酒が浸透するらしい。少し残酷な方法だけど合理的だとは思う。日本と海外では食卓外交をしているかどうかの違いが有り食文化の発展具合が違うんだよね。


 俺はこんなにも珍しい物を集められる財力を持っているんだぞ、そんな俺とお前は戦争をしたいかね? と言うのが食卓外交らしい。最初に始めたのはナポレオンの右腕のタレイランだったかな。それ以上前に中国人がやっていそうだけどな。


 戦わずに勝つだったけ? 孫子の兵法は詳しくないので、物知りそうな近衛さんに聞いてみよう。血を流さない戦いなら、文化の発展にもなるので推奨したい所だな。代理戦争としてスポーツや格闘技の祭典を開くのもいいな。奈良に戻ったらフツヌシさんと武さんに相談してみようか。


「若様、出来ましたよ」


「ほお、これは旨いのじゃ、ワシはこれが一番好きじゃ」


「それでは、この料理も名物料理に加えましょう」


 多分ツグミを日本酒に漬けても美味しくないと思う。ワインなどの果実酒なども作って見たいところだな。ワインは足で踏んで自然放置で出来るんだっけ。日本にブドウが有ると思えないので他の果実で試してみようかな。






 

補足説明


縄文時代の日本にはフルーツワインの類は存在する見たいですね。起源は保存していたら発酵してしまったと言う物なので、果汁を絞って効率的に作って居た訳では無いと思われます。


日本での食卓外交で有名なのは、織田信長が安土城で徳川家康を持て成したのが有りますね。一説によりますと責任者の光秀に毒殺を指示して、変わった物で有れば味が少しおかしくても食べるだろうとの意図が有ったのでしょうが、光秀が古典的な日本料理を出した為、暗殺が未遂に終わり信長にボコボコにされたらしい。(森蘭丸に殴らせた説有り)これが謀反の引き金だと光秀の子孫の方が本を出していた。

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