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極東西遊記~古代日本に転生したぽいので建国してみた  作者: 星 武臣
第4章 天下布武(岐阜・滋賀南部編)
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76話 伊勢の新商品

 前回の話の訂正をしました。トパーズの産地として有名な滋賀県の田上山と言う地名は滋賀県内に二つ有り、大津南の信楽しがらきに向かう途中に有る所がトパーズの産地です。


 武さん=タケミカズチ



熊野暦4月上旬


 熊野神社の引越しが終わり一段落着いた。引越しと言えば蕎麦なので手伝ってくれた人に蕎麦でも振る舞いたかったが、武さんの取って来た蕎麦は栽培中で秋口にしか採取できない。しょうがないからうどんで我慢してもらった。


 そのうどんも小麦粉が薄力粉しか無いのでコシの無い柔らかい物だが住民にはウケていた。俺の住んで居た桑名は名古屋の方が近いので硬い麺の方が好きだったりするが、何故県の南北でこうも差がでてしまうのだろうか?


 それはさておき、手が空いたので岐阜に水晶を取りに行こう。朱里さんの話では岐阜県の中津川市辺りで取れるらしいので領主の耕一さんか狩猟組合に聞いてみようか。


 旅支度を終え外に出るとタマとうずめが待ち構えていた。


「主様よ、一人で旨い物を食いに行くとはつれないの。ワシも連れて行くのじゃ」


「おにいちゃん、一人で美味しい物食べに行くの~ うずめも行く~」

 どちらかと言えば作っているんだけどな……


 どうやら二人の中の俺のイメージは食い物に関する事が大部分を占めてるようだ。うずめとタマは、いわゆる無職なので俺と旅に出ても問題はないのだが、うずめには少し位は親孝行しろよと言いたい。


「うずめ、たまにはお父さんと一緒に居たら?」


「や~ お父さんクサイ」


 あ~ お父さんが聞いたら傷つくナンバーワンワードが出たよ、熊野さん酒好きだから朝方とか酒が残っていて酒臭いんだよね。娘のために禁酒でもしてくれば良いが、娯楽の少ないこの時代に酒を飲むなとは俺の口からは言えないな。


 最近俺がうずめを独占しているのが原因なのか、熊野さんの稽古が激しくなってきてるんだよね。ここはうずめにお留守番をさせてご機嫌を取って置きたい所なんだけどな。そして何より、わがままが何でも通ってしまうとうずめの教育上良くない気がする。ここは適当な理由を付けて、はぐらかす方法を考えよう。

 

「うずめには、鈴鹿に行って奈良で使う鹿を連れて来て欲しいんだ。この仕事が出来るのは動物と意思疎通の取れるうずめだけだろ?」


「え~ どうしようかな~」


「今度、美味しいもの作るからさ、なっ頼むよ」


「ホントに美味しいもの作ってくれるの~ 分かった~ やる~」

 そろそろ桜の葉っぱが取れる時期だな、桜餅でも作ってやろう。


 鈴鹿市に行くのには途中まで同じ道なので一緒に行く事にしよう。それと鹿車を空荷で走らせても勿体ないのでこれから需要の有りそうな夏物の服でも持って行こうか。最近の流行りは何なんだ? さっぱり分からん。ゆうなにでも聞いて見るか。


「おい、ゆうな、春夏物の服を見に行くのを手伝ってくれないか」


「いつも同じ服の仁がめずらしいですね。明日は雪が降るです」

 お前も何時も巫女服じゃないか。


「いや、俺のじゃなくて岐阜に持って行くヤツだ」


「なんだ、そう言う事ですか。しょうがないから選んでやるです」


「そう言えば、くくりは何してる? 岐阜に行くからついでに里帰りでもさせようかと思うんだけど」


「くくりちゃんは、トヨウケと料理の研究をしているです。何か仁を驚かせる料理を作ると言っていましたね」


「それは楽しみだ。じゃあ邪魔しちゃ悪いかな?」


「後で聞いておくです」


 ゆうなが料理の研究に参加していない事に少し疑問が有ったが、人には得手不得手が有るだろうから突っ込まないで置いてやろう。引っ越しをして少し遠くなってしまった町へ行き、伊勢婦人会の取り扱う服を見に行くと様々な色をした服が売られていた。


「うわっ、知らない内に服がカラフルになってる」


「ふっふっふ、何を隠そう服の染色の開発には私も携わっているです。特にこの水色を出すのに苦労したです」


「何で染めてるんだ」


「クサギと言う樹木の果実で色を付けたです、その名の通り臭いので採取するのが大変でした。あと変わった所ではイカスミとかで色付けした物ですかね」


「おしゃれをするのも大変なんだな」


 イカスミなんて一匹からそんなに取れないぞ、女子のファッションに対する情熱には狂気を感じるな。しかしながら、ゆうなもこの町の発展に協力していたんだな。ここはご褒美でもあげてねぎらってやろう。


「ゆうな、ついでだから好きな服を買ってやるぞ」


「ホントですか、これだけ色が有ると迷うです」


「まあ、それを楽しむのが買い物の醍醐味じゃないか」


 ゆうなは暫く悩んだ後に二着の服を持って来て俺にどちらが良いか聞いてきたが、俺が答えても「やはりこちらも捨てがたいです」とか言って俺の意見は却下された。いつの間にか俺が選ばなかった方が選択の軸になってるし何故俺に聞いたのだろうか?


 その後もゆうなの服選びは続き、小一時間経った所で最初に俺が選ばなかった水色の生地に岩絵の具で花の絵が描かれた物を購入した。俺も水色は新作だと聞いたので多めに買い付け岐阜に売り込んで行く事にした。


「店主、会計を頼む、支払いは証書(お米券)でいいかな」


「誰かと思えば、若様じゃないですか。行商の買い付けですか」


「まあそんな所だ、今回は岐阜だが、売れるようなら奈良方面にも売り出したいな」


 それでは少し勉強しましょうか、と言いつつ店主は地面に数字を書いて計算していた。


「なあゆうな、黒板やそろばん作ったら儲かるかな」


「使い方が理解されれば売れるんじゃないですか? 現代でも現役で使って居る位ですから」


「んで、ゆうなは珠算は何級を持ってる?」


「ふっ、級? 仁は私をなめ過ぎです。2段ですよ」


「じゃあ、ある程度は教えられるな。黒板の作り方は研究しておくとして、関ケ原鍾乳洞辺りで石灰石を採取してチョークを作るから、6月から始まる学校教育に取り入れよう。伊勢神宮を作った端材が猿田彦の家に転がってるはずだ、木工集団に頼んでそろばんを作っておいてくれないか?」


「まあ、いいですけど黒板とチョークなんて作れるんですかね?」


「最悪、黒板は墨を塗った板で代用するとして、チョークは石灰石を原料に運動場に線を引く白い粉を作って糊か何かで固めれば作れそうな気がする」


「かなり適当ですね。本当に大丈夫ですか?」


「まあ、朱里さんなら何か知ってるだろ。今度会ったら聞いておくよ」


「ぐぬぬぬ、またオッパイお化けですか?」


 しょうがないじゃないかマレビト組で学歴が高そうなのが朱里さんしかいないんだから。しかしコイツは何故朱里さんに対抗意識を持っているのだろうか? 恐らくどう頑張ってもゆうなの胸部装甲が朱里さんを超える事は無のにな。可哀そうだから木を削り出してパットでも…… 


 いや待てよ、万が一伊勢でパットを入れるのが流行ったら、世の男達から詐欺師として俺は訴えられるかもしれない。恐らく初犯なのに執行猶予無しの実刑判決が下されるだろうな。この案件は俺の発案から進めると痛い目をみそうだ。寝ているゆうなの耳元でパットを入れろと囁いて見るか? いや、これも見つかったらただじゃ済まないだろうし、ゆうなと天音さんの寝所は同じだからそこに行くまでには怖いお父さんを倒す必要が有る。どっちに転んでも俺は次の日の朝日を拝む事は出来無いだろう。


「仁、いきなり考え込んでどうしたんですか?」


「いや、ちょっと胸部装甲について考えていてな」


「うずめ様の付けている様な胴丸ですか? 木を削り出して型を取れば私達のも作れるかもしれません」おしい、もう一声


「あれって、衝撃を逃がす様に中に何か詰めないと痛いと思うんだよね」


「言われて見ればそうですね。何か衝撃を吸収する物でも入れないとですね」


 これで何とか誘導出来たかな? ゆうなの胸当ては胸の辺りが少し盛られた仕上がりになるだろう。それを見た伊勢の住人がそれをヒントにヒット商品を生み出すのならば、俺に被害が及ぶことは無いだろう。無いと良いな。



 おまけ「熊野天音の憂鬱その2」


 ゆうなさんと仁さんが買い物から帰ってきたみたいですね。私も伊勢神宮の巫女としての仕事がなければ一緒に行きたかった所ですが、中々仁さんと休みの都合が合わなくて遊びに行く事ができませんね。これも領主の娘の定めとは言え心中穏やかではいられません。あれ? 何故穏やかでは居られないのでしょうか? 今までの様に皆と楽しく過ごせたら幸せだと思っていましたが何かが違うのでしょうか?


 丁度私の目の前には奈良から経理の手伝いとして出向している中臣(なかとみ)さんとトヨウケ姫がが居るので疑問をぶつける事にしました。


「最近、仁さんと他の女性が仲良くしていると胸が苦しくなるのですが何かの病気でしょうか」


「それはまた厄介な病気にかかりましたな」

 やはり何かの病気なのでしょうか?


「そうっス、お医者様でも草津の湯でも直せない奇病っス」


「そっ、そんなに大変な病気なのですか? トヨウケさん何か効く薬は無いですか?」


「麻の葉っぱを乾燥させた物を燃やして煙を吸うとスカッとする見たいっス」


「トヨウケさんそれ(大麻)は熊野領では禁止されていますよ」


「じゃあ、付ける薬も飲む薬もないっス」


「まあ、一種のはしかの様な物ですから放っておいても治りますよ」


 薬がない病気と聞き少しビックリしましたが自然治癒で治るようですね。何か気を付ける事とかは無いかと聞いてみましたが二人ともニヤニヤしながら無いと答えました。あの顔は何か知って居る顔です。どうして二人は私にイジワルな事をするのでしょうか?


 対処法がないならしょうがないと気を取り直し自室に帰ると、ゆうなさんが服を広げながら記憶を反芻するかの様にニヤニヤしていました。少し気味が悪かったのですが、何をしているのか気になったので聞いていました。


「こほん、ゆうなさんお楽しみの所悪いのですが、その服はどうされたのですか?」


「おっ…… お姉さま、コレは違うのです。たしかに仁に買って貰った物ですが、喜んで居るのは私が仁に懸想しているとか、そう言った物では無いのです」


 なにやらゆうなさんは聞きもしないことまで早口でまくし立てました。全ては聞き取れませんでしたがどうやらアノ服は仁さんに買って貰ったようですね。よく見ると伊勢婦人会の新作の染め物の様で決して安い物ではありません。それをポンと買い与えるとは仁さんはゆうなさんの事が好きなのでしょうか? ああ、また胸の辺りが苦しくなって来ました。この奇病の事は判りませんが、この胸の痛みは仁さんに関わる事に誘発される事だけは判りました。私は仁さんと距離を置いた方がよいのでしょうか?


 


補足説明


 引っ越しの際に蕎麦を贈るのは細く長くお付き合いをと言う願掛けと単価が安いのが理由だそうです。


 名物の伊勢うどんの麺が柔らかいだけで三重県の県民性として柔らかい麺が好きな訳ではありません。普通に讃岐うどんのチェーン店が繁盛してますよ。


 仁は同じ服を何着か持っているタイプ


 明治時代の黒板は墨を塗った板に柿渋などでコーティングを施した物で、次世代型は貝を砕いた物をニカワで張り付け表面をザラザラさせる事により書きやすくしているようですが、流石に主人公がこれを知っているのはおかしい。戦中派の熊野さんなら前者の黒板の作り方なら知っているかもしれない。


 実際の伊勢神宮の近くにも神主を育てる学校が有り一般教養も教えている。


 以前から名前だけ出ていた中臣さんですが、神話ではニニギ尊と共に天下りしてきた一人で子孫に大化の改新で有名な中臣鎌足が居て、名を藤原氏と改めて栄華を極めると共に古事記・日本書紀の編纂にも携わる。

 

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