閑話 月読ゆうなとトヨウケ姫
熊野暦3月中旬
なにやら仁が慌てて帰ってきたです。慌ててはいましたが暗い顔はしていなかったので心配はなさそうですね。それではどこをほっつき歩いてたのか日記のチェックをするです。アイツは目を離すとすぐ大怪我して帰って来るから動向を探るです。
「慌てて居るのは納豆が原因なのですね…… 自分たちだけで何か美味しそうな物を食べてますね許せないです…… あの一緒に居る銀髪の女はなんなんですか」ペラッ
「トヨウケ姫は薬師なのですね。仁と仲がよさそうで何かイラつくです」
仁の日記を見ていくと、気になる事が書いてありました。
ココにはどうやら期間限定で賢者になれると書いて有るです。
これは後で詳しく聞き取るしかないですね。
「仁、女に囲まれての旅は楽しかったですか?」
「お前は一体俺を何だと思ってるんだ? 女ならなんでも良いなんて、そんな猪突猛進な下半身は持ち合わせてないぞ。今は忙しいから後にしてくれ」
「分かったです。約束ですよ」
仁との約束を取り付けたので、自室に帰る途中なにやらいい匂いがして来たので調理場をのぞくとトヨウケが料理をしていました。
「ゆうなさんッスか? 夕飯にはまだ時間が掛かるッス。おなかが空いてるなら何か軽い物を出すッスよ」
仁は自分が居る時は誰にも料理をさせないのですがトヨウケだけは特別扱いです。何がそれをさせるのかチェックするです。居間で待っているとお茶とお茶菓子を持ってきました。
「へぇ、緑茶なんて有るんですね」
「おかわりするッスか?」
「お願いするです」
そう言ったトヨウケは、私の湯飲み持つと口を付けて私に返しました。
その湯飲みにはお茶が並々と注がれていたです。
「おかわりはいくらでも出せるッスから、さあぐぐっと行くッス」
「いけるか!! 口から出した物を人に出すなんて何を考えてるですか!!」
「痛いッス、何をするッスか?」
思わずトヨウケを殴ってしっまったです、トヨウケは目に涙を貯めて外に出ていってしまいました。ちょっとやり過ぎたかもでと思い、後を追って行くとトヨウケは仁に泣きついて居たです。
「師匠、ゆうなさんがいじめるッス」
「ゆうな…… 俺にするのと同じノリで攻撃すると普通の人間には厳しいぞ」
「仁はコイツが何をしたのか聞くです」
私は仁に事情を説明しましたが、仁は緑茶が飲めるのかと感心するくらいで真面目に取り扱ってくれないです。
「一度煮沸すれば良いんじゃね?」
「そう言う問題じゃないです。これはモラルの問題です」
「しょうがないな、トヨウケよ自分で飲む分にはいいが、人によっては不快な気分になるから、口から出した物を人に飲ますのはよした方が良いな」
「以後気を付けるッス、それで師匠はお茶を飲んでくれるッスか?」
「緑茶は魅力的だが最近人の口内の菌でえらい目に有ったからやめておくよ、トヨウケもこう言ってる事だし、ゆうな許してやれよ」
「本当に反省してるんですか? 次やったら異界(地獄)に送ってやるです」
「元居た場所に戻れるッスか?」
「トヨウケよアレはゆうなの冗談だ」
ちょっとした冗談のつもりでしたが、異界送りとはとあるゲームで私と同じ名前のキャラが使っていましたが、魔法の有る世界だと出来るかもししれないです。少し練習しておくです。
しかし二度とやらないと言っていましたが、トヨウケはまたやるかも知れないです。私達はこの時代に無い食材に詳しくないので黙って出されたら判らないです。これからも注意は必要ですね。そう言えば仁に聞きたい事が有るんでした。
「仁、もう用事は終わったですか?」
「まあ、あらかた終わったな」
「それじゃ、私に賢者のなり方を教えるです」
「いっ…… いきなり何を言い出すんだゆうな、出来る訳ないだろう」
仁の反応がおかしいです。そして、なれないではなく出来ないと答えたです。これは自分だけ情報を独り占めするつもりですね。しっかりと問い詰める必要が有るです。
おまけ 「八咫烏のその後 ヤタロウ視点」
※実際の八咫烏の会話は聞き取れない位に訛っています。
「なあ烏丸よ、人間にお前の尾羽をやるのは勿体ないと思うのだが」
「なに? ヤタロウもしかして妬いてるのかな~ 何ならヤタロウのでも良いよ」
「ええい、俺の尾羽に触るんじゃない」
「いいじゃなか、昔はお互いに触り有った仲だろ」
八咫烏の尾羽は魔力を貯めて置く器官の一つだ、やすやすと他人に触らせて良い場所ではない。その行為は俺たちの一族では求愛行動としてとられる事がある。烏丸は子供の時のノリが抜けないようだ。次期里長としてもう少し、しっかりして貰わないと困るな。
暑苦しい烏丸の絡みから逃れるために少し質問をしてみる。
「烏丸、人間に尾羽なんかやってどうするつもりだ?」
「ほら、ボク達の尾羽には風の精が宿るじゃない? この羽で扇げば蒸し暑い京都でも快適に過ごせるんじゃないかと思ってさ」
ふむ、尾羽のその活用方法は考えて居なかったな。尾羽を束ねて扇を作れば風を操るのもたやすくなる。俺の専用武器として作っておくか。
いつもの東屋で物々交換を済ませ里に帰ると、目の前には里長の水鏡の魔法が展開されていた。水鏡は遠くの映像を映す魔法だ、水を媒介として光の屈折を使うらしい。
その水鏡には大きなキツネの姿が有った。確かウカノミタマだったか? そのキツネの体毛が金色に光り出し轟音と共に青白い炎を吐き出した。その吐き出された炎により瞬く間に山は焼かれて行く。
「あのキツネが我ら八咫烏に仇なすなら、相手に取って不足無し必ずや打ち取ってくれようぞ」
「ヤタロウ辞めておけ、我らの使う風と奴の炎は相性が悪い」
「そんな事やって見ないと分からないだろ?」
「ヤタロウ既に先代の里長が、あやつの同胞にやられておる」
里長の話では先代は希代の風使いで有ったが、風魔法と炎の打ち合いにより大爆発を起こし多くの仲間と共に死んでしまったとの事だ。何か弱体化させる方法はないだろうか?
「烏丸、お前ならどうする」
「技の発動に時間が掛かる見たいだから竜巻で足止めして遠くから射殺すとか?」
「竜巻を起こすには、我らも時間が掛かるぞ」
「そこは努力と根性で何とかするしかないね」
ふむ、俺の考えている羽扇子の大きさ次第では、あのキツネを足止めさせる位の魔力は溜めれそうだ。里の力を結集して対策を練らねばなるまい。
ゆうなの質問の回答は主人公視点の方が面白そうなので次回に持ち越しです。
タマの吐く炎はマップ兵器ですね。気力130以上とか制限を付けたいですがそんな設定はありません。威力が有り過ぎてベンチ入りしないように注意したいとおもいます。




