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極東西遊記~古代日本に転生したぽいので建国してみた  作者: 星 武臣
第4章 天下布武(岐阜・滋賀南部編)
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74話 お稲荷様と調味料 結

熊野暦3月中旬


 日本酒を作る杜氏とかは納豆を一切食べてはいけないと言う決まりが有る位、納豆を作る時に使う納豆菌は他の菌を駆逐する習性が有る。俺は眉唾話だろうとその可能性を無視していた。


 恐らく従業員が納豆を食べていて納豆菌が醤油や酒に混入したのだろう。

 終わってしまった事はどうしようもない、転んでもただで起きない事が大切だ、さあ挽回だ!!


 まずは比較的簡単な醤油から行こう、醤油と味噌の発酵は塩分濃度を上げる事で止まる。発酵の弱いこの醤油は少ない塩で済むが、このままでは味気無い物になってしまうな。少し天然塩を多めに入れてミネラル分で味を補正しよう。これで何とか料理に使えるレベルの物が出来上がった。


「師匠、何を作ったんすか?」


「薄口醤油だ、刺身には向かないが煮物とかするなら食材の味が生かせるから、こっちの方が俺は好きだな」


「へぇ~ そうなんッスね。ちょっと煮物を作ってみてもいいッスか?」


「ああ、この醤油の使い方を町に人伝授しといてくれ」


 煮魚とかは甘辛くドロッとした煮物が主流だが、関西風の薄口醤油を使った物も好かれるといいな。多く知られていないが三重県は関西圏だ。幕末に伊勢に天からお札が降って来た事を発祥に起こった暴動をええじゃないかと言う。なっ関西弁だろ? ちなみに某ハンバーガチェーンもマクドと略すぞ。


 薄口醤油はこの辺りでも売れる可能性は高い、売れなかったら奈良で販売しよう。後は味噌をどうするか?


「味噌も発酵が弱いな、味も薄いし……」


 もうこれは味噌を作りなおしてブレンドして使うしかないな。風味が足りないのは尾張地区でしかウケない赤みそを混ぜる事で調整しよう。配合具合によっては人気が出るかもしれない。奈良で売れなかった赤味噌が余っているのが幸いしたな。


「若、仕込み途中の味噌はどうしますか?」


「そうだな、大徳寺納豆を作ろう。大豆を一回洗った後に塩を振って天日干ししておいてくれ」


 大徳寺納豆とは納豆菌では無く麹菌で作られた物で糸を引いたりしない。中国の豆鼓や浜松の浜納豆などの類似商品が有る。豆大福にして食べても旨いから、井村屋の春の商品として売り出そうか。


 関西人の朱里さんは普通の納豆を食べないから、お土産に持っていくかな、もしかしたら奈良で売れるかもしれない。もう少ししたら胡麻油も取れるから中華料理もつくれるな浅利の豆鼓炒めとかかな?


 マーボー豆腐は……

 テンメンジャンは赤みそで代用できるが唐辛子が無い。

 マーボーのマーは山椒の痺れるような辛みの意味だから昔は唐辛子を入れて居なかったのかもしれない、確か本来のレシピにはケシの実を入れて中毒性を出していたよな……


 あんぱんの上に載っているケシの実は乾燥させて中毒成分を抜いているが独特の苦みが有るな。唐辛子に含まれるピーマン系の苦みはケシの実で代用できるかもしれない。ここまで来たらオイスターソースも作ってみようか、カキの佃煮をペースト状にしたら似たような物が出来るだろう。


 牡蠣は伊勢の特産物の一つだし需要が高まるなら養殖してもいい。

 今回の騒動は一時はどうするかと頭を抱えたが新たな特産品が出来そうだ、後は日本酒だよな明らかにアルコール度数が少なそうだ。


「酒は一度濾して清酒にしてくれ」


酒精アルコールが少ないですがいいのですか?」


「このまま放置する訳にもいかないだろう」


 この時代に蒸留して焼酎を作るのは無理が有るよな、出来ない事はないが密閉した容器がないとアルコールが逃げるし銅を鍛造して蒸留器を作るのも時間がかかる。


 確か日本酒を作る際に仕込み水の変わりに酒を使うとアルコール度数が高くなるんだったよな。たしかスサノオはヤマタノオロチ討伐の際に、この工程を八回繰り返した八塩折之酒と言う特濃の日本酒をオロチに飲ませたと言う伝承が有る。蒸留するよりは現実的だろう。


「濾した日本酒で酒を仕込むぞ、度数が濃くなるから水で割って飲む特殊な酒になる予定だ。仕込みに入る前に一度酒蔵の殺菌をしよう。誰かタマを呼んで来てくれ」


 タマはうずめと一緒に近所の子供と遊んでいるはずだ、殺菌するには加熱処理するのが一番だから遊びの邪魔をするのは忍びないが少し手伝ってもらおう。


「なんじゃ主様よ、ワシの楽しみを邪魔しおって」


「ごめん、その埋め合わせはするから、この建物の内部を燃やさない程度で焼く事は出来るか?」


「フン、そんな事は朝飯前じゃ」


 タマは少し機嫌が悪そうだったが協力してくれるようだ。後で何をせがまれるか考えると頭が痛いがタマに頼むのが手っ取り早いからな。


 タマは建物に入りしばらくすると、ボワッと言う爆発音とともに窓から火があふれだした。


「タマ大丈夫か!?」


「なんじゃ主様よ、ワシが自分の技で死ぬマヌケに見えるのか?」


「良かった、本当に無事で良かった」


 俺はタマを抱きしめ、火傷などをしていないか確認しているとタマは少し照れくささうだった。辺りを見渡すと建物の内側は黒くなっていたが燃える事は無く少し焦げた程度で収まっていた。


「フンッ、今日のワシは少し機嫌が良い少し施しをしてやろう」


 そういったタマは建物の中から桶を持って来て、口から大豆をジャラジャラと吐き出した。何がどうなっているんだ?


「奈良ではワシは朱里と魔法で食べ物を生み出す研究をしておるのじゃ、トヨウケもワシ程ではないがこの魔法は仕えるのじゃ、なぁははは」


 一瞬何が起こったのか判らないかったが木属性魔法の一種らしい。無から炎を生み出せれば、無から植物の種も生み出せるのだろうか? 

しかし何故口から出すんだ? 別に手の平からでも良いだろう。


「今回は口から出しだが、尻からも出せるのじゃ」スパン


「普通に手から出せよ!!」


「主様はツッコミに容赦がないの、しかし一時はしょぼくれた顔をしておったが、その調子じゃと大丈夫そうじゃな」なんだ俺を励ますための冗談だったのか?


 口から出せるなら尻からも出せそうだけど冗談だよな? 一部のマニアには需要が有りそうだが俺は自称ノーマルだ、タマの出す手料理には注意して置くとしよう。


 今回の騒動には肝を冷やしたが、新な特産物が出来たから長期的に見たら儲けになるかもな。この方法を伊勢や尾張地区に教えて損失を最小限におさえよう。


 さあ、すっかり日も暮れてしまったが伊勢に帰るとしよう。

 日本神話には、豊受姫とタマと同一視されている神が口や尻から食べ物出して、スサノオやツクヨミをもてなし、その現場を見られて切り殺される事件が有ったとされています。


 しかしながら、ウカノミタマは家系図的にはスサノオの娘である。

 同じ能力を持つならスサノオの浮気相手との子がウカノミタマとなり、痴情のもつれで殺害された事になるな。

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