71話 お稲荷様と調味料 起
少し修正するかもしれませんが大筋は変わりません。
美杉村では水晶以外にウランも取れるので体に良くない。
熊野暦三月中旬
ファンタジー小説では魔法の効率化の為に水晶や宝石が使われているが、実際に効果が有るかの検証をしたいと思う。岐阜県が水晶の産地で有るのでそちらを視察して見たい。一応俺の領地で有る北畠(現津市)の美杉村でも水晶は取れるらしいが、朱里さんが死にたくなかったら掘るなと言っていたのでこちらは断念しよう。
「主様よ伊勢に行くならワシも行くぞ、久しぶりに鯛を食うのじゃ」
「お師匠様、私もお供します。新しい料理を教えて下さい」
「久しぶりの海のおさかな……」ジュル
「うずめも帰る~」
「仁はんはモテモテやなぁ、ウチもその輪に入れて欲しいわぁ」
ちょっと待て、俺とは関係無い発言をして居るくくりはスルーか?
少し寂しそうな顔をする朱里さんに、すぐに戻って来ると言い残しその場を後にした。しかし俺はロリコンでは無いのにどうして少女ばかり俺の周りに集まってくるのか? 願うならもう少しバインバインのお姉さんに囲まれたい物だな。それはさて置き水車の図面を忘れずに猿田彦に渡しておこう。猿田彦ならば図面を解読して水車を作る事が可能だろう。
「旦那は、一度伊勢に帰るおつもりで?」
「ああ、伊勢と言うより岐阜に用が有るんだけどな」
「じゃあ、養老の酒のお土産を期待してますぜ」
養老の酒とは去年から作られている日本100銘泉で有る養老の滝の水を仕込み水に使用した酒で、今の所最高級品と言われる物だ。先ほどから少女にまとわりつかれる俺を見る猿田彦の視線が痛い、仕事の為とは言え独善的な理由でこの地に留まらせるのは忍びないな。酒で許してくれると言うのであれば喜んで差し入れしよう。
別に急ぐ旅ではないので、木津川周辺(現奈良市)に有る奇兵隊の詰め所を経由し、伊賀の里モクモク手作り農場を視察した後に北畠を経由し伊勢市に戻るルートを取った。2泊3日の予定であるが移動距離は110km程だ。東海・近畿地方の友好の証として来年の一月にはこの道で駅伝でもやろうかと朱里さんと相談しているぞ。
鹿車に揺られまずは奇兵隊の詰め所を目指した。この鹿車を引く鹿は角を入れると2mを超える。俺はトナカイを見た事はないがトナカイがいたらこの位の大きさなのかな?
その鹿を2頭立てで引く鹿車は空荷で時速30km程の速度だな。荷物を積むと時速10km程に落ち込むが、鹿の本領は山岳地帯を物ともしない登坂能力に有る。鹿一匹は一馬力に及ばないが十分有用な乗り物だな。飛び跳ねなければ……
そんな事を考えながら奇兵隊の詰め所に向かうと、斉藤さんの部下とウチの若い奴らが鹿に乗る練習をしていた。どうやら野生の鹿を捕まえて練習しているらしく、さながらロデオでも見ているようだ。そして当然の如く乗り物酔いでくたばって居る人間が多いな。
「斉藤さん、コレはどうしたんですか?」
「これはニニギ様、これはタケミカヅチ様にあやかって乗って見ようと言う話になりまして、結果は散々な物では有りますが、ご安心下さい我が軍に鹿に乗れぬ軟弱な物はおりませぬ、必ずや乗りこなして見せましょうぞ」
武さんはすっかり武士達の人気者だな、しかし野生の鹿を使うのは無理が有るんじゃないか? 長い時間をかけて人に慣らせば話は別だけどな。
「斉藤さん、鈴鹿で飼いならしてる信長の眷属が居るんだけど連れてこようか?」
「おっ…… 織田様が生きておられるのですか!!」
「ああ、すまない鹿に勝手につけた名前で、斉藤さん達の知る人物とは別人だ」
と言うかすでに人でも無いしな。
「さようでございましたか、肝を冷やしましたぞ」
殺した相手が生きてるとか悪夢だもんな。
斉藤さんには鈴鹿市で鹿車に使用している鹿を飼って居る事を伝え、信長と言う体長が4mを超えるカモシカが鈴鹿山脈の鹿を眷属としている事を伝えた。信長の眷属は何故か獣害とかを起こさず、エサを貰うと頭を下げる位礼儀正しいので調教がしやすいと説明した。
信長の眷属達は野生の鹿と区別するため首に鈴を付けている。これは地名の鈴鹿から発想を得たちょっとした悪ノリだが、三重県に住む猟師達には首に鈴を付けて居る鹿の狩猟を禁じている。特に罰則等は決めていないが、たまに信長に食い殺される奴がいるので近隣の村では法は順守されているな。禁を破る奴がいたらソイツは地方から来た田舎者だろう。
一旗上げようと地方から出てきても、首に鈴を付けた鹿を物々交換に持ち込んだ時点で村八分となる。何故かと言うと信長は鹿の死体を持っている奴が犯人と断定するため、そんな物を持っていたら村ごと滅ぼされる可能性が有るんだ。
一応狩猟協会でもこの禁止事項は張り紙などで知らせて居るが、文字が読めないのかたまに禁を破るアホが居るな。ただでさえ少ない人口が減るような行為は控えて欲しいので絵とかで警告するとかの工夫が必要かもしれない。
斉藤さんには試しにココに何匹か連れて来るが、殺したりしたら信長が報復に来るから気をつけろと言ったら、鹿は神の使いなのでそんな事はしないと約束してくれた。奈良でもオーク討伐の立役者である信長の眷属を害する奴はいないだろうが、ココでも警告だけはしておこう。
「お~ ここには鹿がいっぱいッスね、師匠角を取ってもいいッスか?」
「まあ、いいけど何に使うんだ?」
あんな物包丁立て位にしかならないだろ?
「これが薬になるんッスよ」
へ~ 眉唾話だと思ってたよ。
トヨウケ姫の話では、骨・腱・筋肉の再生を助ける成分が有り、特に足腰の悪い老人達に需要が有ると言っていた。本当に効果が有るなら、やずや辺りが商品化してるはずなので話半分にとどめて置き取りあえず奇兵隊の連中に頼んで採取して貰う事にした。
「トヨウケ様の話がまことなれば、我々には嬉しい話ですな」
プラシーボ効果とか有るから全く効果が無いとは言えないかもな。
「トヨウケ姫の薬は漢方系だから、当たるも八卦当たらぬも八卦だよ」
「中々上手い事を言いますね」
鹿の角の採取をしていると日も暮れて来たのでそろそろ夕食としよう。
「仁とトヨウケの~ 30分クッキング~」
「くくりも混ぜて下さい」
さて、何を作ろうか? 海無し県の奈良でも楽しめる魚料理が良いよな。
「うずめ、大根を取ってきてくれ」
「仁様、今回は何を作るのですか?」
「O・D・Nだ」
「おーでぃーえぬッスか?」
まあ、おでんの事だな。
京都に有る巨椋池には山椒魚の化け物が居る。魚と書くが両生類なんだけど乱獲により絶滅の危機に陥る位には旨い。今回はこれをすり身にして竹輪やはんぺんなどを作り、去年作ったコンニャクや大根などなどを混ぜておでんを作ろうと言う寸法だ。油の生産が追い付けば厚揚げも入れたいな。
まあ、この時代食材に限りが有るのは慣れたので、変わりに鶏肉でも入れておこう。鶏ガラスープを取るので肉が余るからな。
「おに~ちゃん、取ってきたよ~」
「くくりは大根を剥いて米のとぎ汁で煮てくれ」
「何で米のとぎ汁を使うんッスか?」
「とぎ汁を使って煮ると、苦味とかの雑味が消えるんだ」
現代の大根ではあまり違いは判らないが、この時代の大根はほぼ野生種なのでこの作業をやるかやらないで味が大きく変わる。
「トヨウケは俺と一緒にすり身を作ろう」
「了解ッス」
練り物は基本的に魚の肉をすりつぶして卵白を入れ、加熱により卵白が固まるのを利用して纏めているな、食塩を入れると粘りが出て歯ごたえが増すし、油や生クリームを入れると柔らかい触感になる。
今回は脂分に使える物がないので、柔らかいはんぺんは大和芋(山芋)を入れる事で柔らかさを演出しようか。色を気にするため卵白を使用する事が多いが、味を重視するなら全卵を使用してもいいぞ。
山椒魚の身を包丁で叩いてからすり鉢ですりつぶしていく、そこに卵白を入れてさらにすり潰す。すりこぎに使う棒は山椒の木を使うと山椒の香りがして良いとされているのでそれを使っている。
「この位でいいだろう。トヨウケ、笹にすり身を巻いて焼いてくれ」
「了解ッス」
これで竹輪の方は出来たな。今回竹輪に使用する竹は真竹じゃなく笹を使っている。竹輪は後で切ればいいので太くても良いのだけど、久しぶりに見る竹輪は見慣れた形が良いなと思ったんだ、多分流通させるとしたら真竹を使った化け物竹輪になるだろうな。
それはさて置きはんぺんを作って行こう、先ほどのすり身に大和芋を入れてさらに細かくすりつぶす、この時気を付けるのは空気を含ませるように混ぜる事だな。面倒だったらメレンゲでも入れてくれ。出来上がったすり身を茹でて出来上がりだ。今回は食べやすいように匙で一口大にして茹でて行くが、アイスクリームを丸く掬うディッシャーを使うか、形を気にするならクッキングシートで四角に形成してから鍋で茹でてくれ。
これで食材の下準備は出来たな。これを鶏ガラと鰹節を主体とした出汁で煮て行く海草は無理だけど何か植物系の味が欲しい所だけど、山菜は基本的に苦いからな……
「主様よコレを使うがよい」
「おお、笹のタケノコじゃないか、でかしたぞタマ」
「なぁははは、苦しゅうないぞ主様よ、もっと褒めるがよい」
正式名称も笹たけのこと言い笹なのか竹なのか判らない食材だが、岐阜県の飛騨地方ではおでんに入る食材だな。これで味に深みが増す、昔の日本の山間部では何で出汁を取っていたのだろうか? シイタケかな?
しばらく食材を煮た後出汁を味見してみると、鶏と鰹の出汁に具材の味が溶け込んで複雑な味わいが出ているな。もう少しにてこの出汁の旨味を食材に含ましていこう。沸騰させると香りが飛ぶので70℃~80℃でじっくりと味を含ませていく。
「トヨウケよこうやって弱火で煮る事を含め煮と言う、覚えて置くように」
「はいっ、肝に命じるッス」
さて、固苦しい話はこの位にして食べてみようか。
「ほお、鶏の骨からこんな芳醇な出汁が出るとは知りませんでした」
「同じすり身でも、食感が違うのが面白いッス」
「うずめは大根がすき~」
中々渋いチョイスだな。
「ワシはやはり肉じゃな」
「タマ、コンニャクは整腸作用が有るから食っておけ」
「師匠は薬学にも詳しいんッスか?」
「食い物に関してはな」
「トヨウケは師匠に一生付いて行くッス」
いや、適当な人間と結婚して幸せになってくれ。
「斉藤さん、5月位に京都の河川敷でからしの種が取れるんだ」
「からしは知っていますが、何にお使いで?」
「これに付けて食べると旨い」
「ほお、それは採取せねばなりませんね」
「からしはワシが見つけたんじゃ、感謝するがよい」
そういえばタマが見つけてきたんだったな、水菜と見間違えてたべてえらい目に有ったけど、からし菜の突然変異種に水菜と壬生菜が有るな。京都の壬生寺の有る辺りには壬生菜は有るだろうか? 京都は京野菜に代表される野菜の変異種が多いよな、土壌の関係かはたまた帝の御威光かは判らないが、強制的に品種改良が出来るなら試して見たい物だな。
しばらくこの地を開ける事になるが、斉藤さんと奇兵隊の連中に任せておけば防衛は大丈夫だろう。明日は伊賀の農場の視察にいこう。
全3話の予定ですが4話に増えるかもしれません。
この危険なタイトルが許される位にはなろうの懐は広いよね?
一応、鹿の角と言うか袋角と言う根本の部分に効果が有りニュージーランドの主力商品で、腱が硬くなりすぎて断裂する事件が起こったので、アメリカでは禁止薬物に指定されているが使用する人が絶たない。もちろん日本の薬事法でも禁止されていますが、効果は有るので期待はされている素材です。




