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極東西遊記~古代日本に転生したぽいので建国してみた  作者: 星 武臣
第4章 天下布武(岐阜・滋賀南部編)
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外伝 熊野天音の憂鬱

皆さん忘れていると思いますが、ゆうなの苗字は月読です。

熊野暦2月下旬


 仁さんが奈良に行ってから一月が立ちました。

 忙しいのは判りますが、たまには伊勢にも帰って来てくれないと困ります。

 巷ではひょんな事から私が太陽の化身と呼ばれていますが、仁さんの方が多くの物を生み出し領民に多くの光と希望を与えている居ると思いますね。


 みんな仁さんの帰りを待って居るのですよ。

 早く帰って来て、私達のごはんを作って下さい。


 こう言ってしまうと仁さんの料理だけが魅力的に聞こえますね、それ以外にも絹製の服や猿田彦さんと作った螺鈿細工や狩猟に使う弓など多くの物を作っていますよ。奈良から持ち込んだ将棋はお父様が執着していて暇さえ有れば漁師仲間と勝負に興じています。


 お父様の仕事が無いのは平和の証とは言えもう少し働いて貰わないと困ります。

 計算などの細かい仕事は私と奈良から来た中臣さんの二人でこなしているのですよ。最近取り扱う品目が増えたので、計算がややこしく猫の手も借りたい位です。ゆうなさんには巫女の仕事を分担してやって貰ってますし、もう少しこちらにも人手を割いてもらいたいですね。


 仁さんは伊勢神宮の近くに学校を作って、読み書きと計算の出来る人材を育てると言っていたのでそちらに期待しましょう。伊勢や奈良の民だけではなく、私も早く楽にして欲しいと願うのは贅沢でしょうか?


 これも領主の娘の務めとして割り切るしかないですね。

 うずめはまったく仕事をしませんが……

 あのまま大きくなったらどうしましょう。


 一通りの仕事を終えるとすっかりと夜が更けていました。


「おお天音、帰ったか今メシを作るから待ってろ」


 お父様の作る料理は、海の幸をふんだんに使った漁師料理です。

 今回は木桶に貝と魚を入れた味噌仕立ての汁に焼けた石を入れて煮る物ですね。


 以前はこれが当たり前で疑問にも思いませんでしたが、仁さんが来てからは味噌にも色々な種類が有り醤油などの変わった味の選択肢も出てきました。特に私が好きなのは鶏の骨で取った出汁と塩で味付けされた鍋ですね。鶏と海草と魚の味が混ざり合った深い味わいは正に絶品です。


 最近は我が家でも鍋にお魚だけでは無くお肉も入れる様になりましたが、お父様の入れる猪のお肉はあまり美味しくありません。仁さんは猪でも調理法で美味しく食べれると言っていましたけど本当でしょうか?


「どうだ? 俺の料理も中々の物だろう?」


「不味くはないのですが……」


「猪のクセが味の調和を邪魔してますね」


「なんでぇ、このクセが旨いんだろ、酒が進むってもんだ」

 私達はお酒をたしなみませんが……


「そういえば月読は15才になっただろ? 飲んで見るか?」


「ここではお酒は15からなんですか?」


「基本的には年齢制限はないが伊勢では15才からを推奨しているな」

 お祭りの時とかはその辺りがうやむやになりますね。


 基本的に熊野領では15才からお酒を飲めますが私は飲んだ事が有りません。お父様がお酒を飲むと、うずめに抱き着いた後に「お髭が痛い」と突き放され泣き出すからです。娘に邪険に扱われて悲しいのは判りますが、大の大人が変わってしまうお酒は怖いなと思います。ゆうなさんはお父様に勧められ、それでは一杯だけと飲んでしまいましたが大丈夫でしょうか?


――30分後


「それでな、俺が仁の奴に言ってやったんだ……」


「あひゃひゃひゃひゃ、バカです、本当に仁はバカです」


「お前もそう思うだろ?」


 何やら楽しそうですね、私もお酒に興味が出て来ました。

 お父様が気になるならお前も飲んだらどうだと進めるので、勧められるままに飲んで見ました。仁さんの作ったお酒はスッキリして飲みやすいですね。


――更に30分後


「お父様!! 何時も将棋ばかりしていないで私達を手伝ってください!!」


「いや、ちゃんと漁師の仕事はしているぞ」


「領主の仕事はしていないではないですか!! お母さまが居た時はしていましたよね、最近お仕事が多くなってるんです。お父様が働かなくて誰が働くと言うのですか!!」


「す…… すまん」


「うわ~ お姉様は怒り上戸ですか」


「ゆうなさんも、近隣の人から相談の対応がいい加減だと苦情がきていますよ」


「アレはアレで需要が有るです」


「どこに悩みの解決に死んだ方がいいですと答える人が居るのですか!!」


「すべての人に言っている訳じゃないですよ、下らない相談をしてくる男にそう言ってるだけです」


「真に受けて死ぬ人が出てきたらどうするのですか!!」


 中には叱られたくてゆうなさんに相談をしにくる人が居るのは知っていますが、噂に聞く対応は雑としか言いようがありません。


 日頃ため込んだ物を吐き出しただらなんだかスッキリしました。

 お酒も中々悪く無いかもしれません。


 食事を終え床につくと奇妙な夢を見ました。

 以前も有りましたが、何もない白い部屋で目を凝らすと遠くに有るはずの物が近くに見えるのです。私は仁さんが何をしているか気になっていると、仁さんの部屋を上から覗いているような視点に切り替わりました。そこには仁さんと川の字になって寝ている二人の女性がいました。あれはうずめとタマさんでしょうか? タマさんにしては少し大きい様な気がします。何やら寝言でしゃべっているようですが音までは拾えずもどかしい気持ちになりました。


「やあ、生きてる人間でココに来るのは珍しいね」


 後ろから声を掛けられ振り向くと、白い髪と赤い目が特徴的な男の人が立っていました。

 いつから居たのでしょうか? 

 もしかして私のことをずっと見ていたのでしょうか?


「ここに来たのは、今さっきなんだけどね」


「そうなんですか、私は熊野天音と申します。貴方は何とお呼びすればいいのでしょう」


「そうだね、イザナギとでも名乗って置こうか。所でキミはここまで来て男の部屋を覗くのが趣味なのかい?」 


 私の事を見て居なかったと言うのは嘘ですね。

 こういう人は何だか苦手かもしれません。


「ああ、そう警戒しなくても良いよ。実はボクも妻の部屋を覗いてこっぴどく叱られた事が有るんだ。ある意味ボク達は似たもの同士と言う訳さ」

 それを教えられて私はどんな反応をすればよいのでしょうか?


「夫婦なのにつれないお嫁さんなのですね」


「なっ、キミもそう思うだろ、それよりキミは悩みを抱えていないかい?」


「さあ、特に有りませんよ?」


「あれあれ? じゃあ何でさっき男の部屋を覗いて居たんだい? ボクの経験上だと気になってしょうがないから覗いたんじゃないのかい?」


 そういわれて見るとそうですね。どうしてこんなに気になるのでしょう。

 仁さんとは兄妹の様な物なのにどうして……


「あっ、天野だったかな? の部屋に胸の大きな女性が……」


「なんですって!!」


 仁さんの部屋が映し出された空間には、さっき見た時とおなじ光景がひろがっていて、何処にも奈良の朱里さんの姿は有りませんでした。そんな私の反応にイザナギと名乗った男はクスクスと笑って、やっぱり気になっているんじゃないかと言いました。そういえば仁さんと他の女性が遊んでいると胸が苦しくなる事が有りました。この感情はなんなのでしょうか?


「教えてあげてもいいけど、それはキミ自身が答えを出した方が良いと思うな」


「ううっ、意地悪な人ですね」


「ボクとキミは別人だ、為になるかどうかは判らないよね」


「それはそうですけど……」


「どうやらキミは自分の感情を表現するのが苦手なようだ。そんなキミにはこれの仮面をあげよう。それを付けると自分の気持ちに正直になれるんだ」


 そういったイザナミさんは2枚の仮面を差し出しました。

 一つは上の方を睨み付けながら笑みを浮かべる角の付いたお面と、もう一つは普通に笑うふくよかな女性のお面です。そう言えば仁さんが以前下着の展示会をした時に、仮面をつけた町の人達は解放的だった様な気がします。これを身に着けると何かが変わるのでしょうか?


「いらなければ、知り合いにでもあげるといいさ」


 そう言い残したイザナミさんはどこかに消えてしまいました。

 これは夢なのでしょうか?

 

 しばらくすると意識が遠くなり、再び目覚めると私の部屋の中にいました。やはり夢だったと思ったのですが、私の枕元には二枚の面が置いて有りました。


「やっぱり、夢じゃないですね」


「お姉様おはようございます。どうしてここに般若とおかめの面が有るのですか?」


「ゆうなさんは、これが何か知って居るのですか?」


「能と言う猿田彦さん達がやっている様な舞に使用するお面です。どうしてココに有るんですかね?」


「昨日私が貰った物をしまい忘れていただけですよ」


 これは演劇の役作りに使用する物なのですね。

 ふくよかな女性のお面はうずめにでもあげましょうか、実を言うと怒った方の仮面はどこか愛嬌が有って私の好みなんですよね。


 

能面の種類


般若   =嫉妬や恨みの有る女性の顔 般若坊と言われる僧が作ったとも言われています。

おかめ  =アメノウズメがモデルと言われています。末娘の意味も有るとか。

天狗   =猿田彦がモデル

ひょっとこ=火男と書き一目連の祖がモデル


装備した時の効果はどうなのでしょうね、般若の面を装備した天音さんは自分に素直になれそうですが副作用が怖そうですね。

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