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極東西遊記~古代日本に転生したぽいので建国してみた  作者: 星 武臣
第4章 天下布武(岐阜・滋賀南部編)
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64話 今の大阪市周辺はどうなってる?

参考資料 大阪市水道局「治水のあゆみ」

正直な話地図を貼り付けたい所ですが、引用するのがお堅い所なのでやったら怒られそうだ。

熊野暦2月上旬


 誰が言ったか知らないが「敵を知り己を知らば百戦危うからず」と言う言葉が有る。そこで俺は疑問に思った。大阪って今どうなって居るんだろうかと……


 早速朱里さんに相談してみると、実際に行って見たら良いんじゃないかと言われた。奈良湖から大阪方面に流れる大和川を下ると大阪に出られるらしい、近衛さんも興味が有るようで一緒に付いて来ることになった。


「あ~ お兄ちゃん、またどっか行こうとしてる~」


 後ろから声がしたと思ったらうずめとくくりが旅支度をして俺の後を追いかけて来た。

 あまり危険な所には行かせたくは無いが、ダメだと言っても付いてくるよな。

 こっそり後を付けられるより、目の届く所に置いて置いた方がいいか……


「ニニギ様よろしいので?」


「まあ、二人ともそこらの男たちより戦えるから大丈夫だよ」

 もしかしたら俺より強いかも知れない。


 初対面の時にうずめの戦闘力を見ている近衛さんはそんな物かと納得した。

 単純な戦闘力を数値で表す事が出来たなら、うずめと俺の戦闘力は同じ位だろう、しかしながら俺の身体強化は時間制限が有るのに対し、うずめはその制限が無いのが痛い所だな。3~4歳の子供と遊んだ事の有る人なら分かるかもしれないが、小さな体のドコにそんな体力が有るのかと思う位はしゃぎまくり、突然電池が切れたように寝る事が有る。


 うずめは幼い頃から山野を駆ける事をやっているので体力が有る方だが、突然電池が切れた様にダウンするのは近所の子供と同じだ。多分制御するリミッターが外れて居るのだろう。あと性格的に攻撃が直線的になるので攻撃が読みやすいと言う弱点が有るな。


 来ると分かってから避けると間に合わないので、うずめは初見殺しだが何度も手合わせしている俺には組しやすい相手だ、最近突撃のスピードが上がって来ていて、たまに避けきれずかする事が有りヒヤヒヤするな。俺も何か手を講じないとそのうちやられるかもしれない。


 くくりもうずめを習ってスピード重視の戦い方になっているが、魔法を使えるのと武器の二本のククリナイフが厄介だ、最近刃先を魔力でコーティングしてそれが高速で振動する技を覚えようとしている。以前手合わせした時に竹槍で受けたら、火花が出た時には少し焦った。


 おそらくゆうなの入れ知恵なんだろうが、何と言う物を開発してくれたんだ、

 あの二人は俺が殺しても死なないとでも思って居るのだろうか?

 いや普通に死ぬからね、いつだって崖っぷちだよ?

 

 もしも手足が切断されたら回復魔法で繋がるのだろうか?

 知的好奇心は有るが自分の体で試したくないよな。


 そうすると非人道的な人体実験が必要となるがそれをやる度胸は俺にはない。

 ん? 待てよ、鯛とかの魚を活け作りにしてそれが元に戻るのかで試せば良いのか? それなら何とか試せそうだな。


 伊勢海老とかは頭だけでも勝手に動き出し、さっきまで皿の上に居たのにどっかに居なくなると言う事がたまに有る。

 京都で愛されるハモも頭だけで2~3時間生き続ける位の生命力が有るな。

 大阪で〆ても京都まで生きた状態で運べるので、新鮮な魚が盆地で有る京都で食べられるのが魅力だったらしい。現代でも祇園祭の有る7月にはハモを食べる習慣が残っていて、その期間だけハモの値段が高騰する怪奇現象が起こる。


 ハモか久しぶりに食べたいな夏になったら釣ってみるか。

 でも夏場に産卵の為に湾内に入って来るので、夏が有名だけど美味しいのは秋から冬なんだよね、冬場になると沖に出てしまうので中々釣れない、秋口に松茸の土瓶蒸しに鱧を入れるのが安定して食べられる時期の最後だと言われているな。


 いかんいかん、また一人でどうでも良い事を考え込んでしまった。

 魚を使った実験は帰って来てから考えよう。


 俺と近衛さん・うずめ・くくりの四人に護衛の物部連が二人の計6名で行動する。

 護衛は必要ないと思っていたが、近衛さんに要人警護の訓練をさせたいと言われ納得した。

 

 橿原町周辺に張り巡らされた水掘は奈良湖まで繋がっており運河としても利用されれいる。早速舟で出発し奈良湖の対岸に向かおう。


「近衛さん、今は何も無いけど対岸には何が有ったんですか?」


「対岸には法隆寺が有りその後ろは斑鳩(いかるが)の町ですね」


 斑鳩…… なんと中二病がくすぐられる響きなのだろうか?

 誰だこんな素敵な名前を付けた奴は?


厩戸(うまやど)皇子(聖徳太子)が法隆寺建立の際に斑鳩宮を立てたのが始まりですね」

 あれ? 俺の考えダダ漏れだったかな?


「あと以前私たちが訪れた、木津川付近には平城京が有りましたね」

 奇兵隊の奈良支部と狩猟協会の有る所だな。


 へぇ、建物を建てるには丁度良い場所だとは思ってはいたが奈良時代の都が有ったのか、近衛さんの話では戦国時代には奈良湖は存在せず、何らかの事情で大阪方面へ湖の水を抜いたんじゃないかと言っていたが、活断層による地殻変動の可能性も有りそうだよな。


 こうして湖が有ると奈良県の中央ではなく端の方に神社仏閣が有る事に納得するそうだ。

 俺は小学校の修学旅行で行ったきりで記憶は薄いが、実際に神社仏閣を見て回ろうとしたら何で奈良県の端から端へと移動させられるのかとイライラするだろうな。


 奈良県の西の県境で有る葛城山と生駒山の間から流れる大和川を下ると大阪に出るらしい。


「今回はこの辺りの山から全景を眺めて見ましょう。私の予想が正しければ驚きますよ」何か近衛さんは楽しそうだな。歴史好きとかかな?


 山を登ると言っても、鬱蒼とした雑木林と言うか森が広がっているけどどうした物か? 


「仁様、私にお任せ下さい」


 くくりにそう言われて少し様子を見て見る事にした。

 行きますと気合を入れた、くくりがククリナイフに魔力を流すとキィィンと嫌な音がする。久しく行ってないが、歯医者のドリルが回る音だな。


 くくりはそのナイフでまるで常温に戻したバターのように、木々を払っていく。

 太い幹もチェーンソーを当てたように、甲高い音を発しながら切断していった。

 園芸をするには便利そうだが、アレを俺に向けて使うのは止めてほしい。


「何それ~ おもしろそ~ うずめもやる~」

 うずめも以前俺が渡した、青銅製のハンドアックスを振り回し始めた。


 うずめの方は武器を魔力強化出来無いんだな。これ以上強くなったら俺の立つ瀬が無いので少しほっとした。


「なんと言うか、末恐ろしい子供達ですね」

 いや既に十分怖いんだが……


「近衛さん今度伊勢に遊びにおいでよ、アマテラス大神と同一視されてる人が居るよ」


「なっ…… なんですとっ、それは是非に行かせて貰います」


 近衛さんの食い付きからして、歴史と共に日本神話にも詳しそうだ。

 俺の知って居る日本神話は地元三重県に纏わる事だけだから、

 それ以外の地域の事は頼りにさせてもらおう。


 道中の木々はうずめとくくりによって払われ、山の稜線にまで辿り着いた。

 

 山の稜線から大阪方面を眺めると、大阪市に当たる所は無く湖と湿地帯が広がって居た。南北に広がった半島の様に突き出た台地により、川の流れが堰き止められ湖の様になっている。なお静岡県に有る浜名湖の様に完全には湖となっておらず、海と繋がっているな。この湖の名前を河内湖と言うらしい。


「あそこの台地の先端を難波(なにわ)岬と呼びますね」


「近衛さんの時代だと、先端の平地には何が有ったんですか?」


「石山本願寺ですね」


 現代で言う所の大阪城か、半島の様に突き出た台地は南方向(和歌山・住吉大社方面)に向かいなだらかな斜面になっていて、そこから大阪の地名が付いたらしい。この辺りの治水と埋め立てを開始したのは第16代天皇の仁徳天皇で西暦320年位から始まったと言われて居るそうだ。


 大阪に仁徳天皇陵が有るのはそう言う理由なんだな、かなり立派な墓なので人々の暮らしに貢献したんだろうな。


 なお戦国時代になっても大阪市全体の埋め立ては完了しておらず、石山本願寺は島の様な天然の要塞として機能して織田軍を苦しめたと近衛さんが言って居た。石山本願寺が降伏後に埋め立て事業が再開されたらしい。


 大阪市は丸ごと海の底か、かろうじて東大阪市に当たる所は湿地帯として残っている。摂津とか言う地名は東海道新幹線の新大阪駅(正確には千里ニュータウン周辺)まで海が有った事の名残りか、人の力でこれを埋め立ててたと考えると感慨深い物が有る。


「見る限りこの辺りに人は居ませんね」


「堺(貝塚市)や播磨(神戸)周辺には居るとニギハヤヒ様が言っておりました」


 見る限り葦の生い茂った湿地帯で建物とか建て難そうだな、

 上流から山の土砂を流して埋め立てたらどうだろうか? 

 奈良湖の水位が下がり生態系が狂うかな?


 あえてダムの様に堰き止めて置いて有事の際には堤を切って敵を押し流すのも有りだよな、この辺りは瀬戸内海側への拠点として確保して置きたい。開拓したもの勝ちなら今のうちに唾をつけて置こう。


「近衛さん誰も住んで無いならこの辺りを押さえて置こうよ」


「私も難波岬だけは押さえて置いた方が良いと思います」

 過去に煮え湯を飲まされたと有って切実だな。


 そして同じ字でも、難波(なんば)では無くなにわと読むんだな。

 浪速この字でなにわと読むと思っていたよ。

 近衛さんはこれで、なみはやと呼んでいた。

 幾つもの川が流れるので、この辺りの潮の流れが速いのが理由だそうだ。


 でも基本的に難波と浪速は一緒の意味に聞こえる。

 昔の人もどっちか分からなくなったのかも知れないな。


 とりあえず一度橿原に戻って朱里さんに相談してみるか。






 


大阪市の埋め立てには人力だけではなく、洪水による土砂の流入の影響が大きいです。

ただ、現段階では流れ込む川が多いので埋め立てても住み辛いと思われます。

この辺りの治水を完了させたのは豊臣秀吉

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