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極東西遊記~古代日本に転生したぽいので建国してみた  作者: 星 武臣
第4章 天下布武(岐阜・滋賀南部編)
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プロローグ 春先までの予定と八咫鴉

熊野暦1月中旬


 うずめちゃんに「これおねえちゃん」と

 土偶を見せられてへこんだウチは体重を落とすべく、

 物部連(もののべれん)の鍛錬に付き合っていた。

 仁はんの話では、ブートキャンプと言う軍隊式訓練がダイエットにええらしい。


 起伏が有る地形のランニングに始まり、

 列を乱さない様に気を付けながら行軍する訓練をし、

 竹刀を使った打ち込み稽古に移る。


「斉藤はん、ウチの相手をして貰ってもええ?」


「はっ、喜んで!!」


 仁はんは斉藤はんの事を十兵衛(近衛)はんの上司やと思ってる見たいやけど、

 実際は逆や、戦国武将が逃げる時、

 鎧を交換する場合が有るのを知らなかったんやな。

 大将が討ち取られればそれで終わりで無職になるんやけど、

 生き延びればまだ再起のチャンスは有る。

 自分が死んでも大将が生きていれば、

 残された家族に褒美が出て暫くは衣食住に困る事は無いからなぁ。


 あと、仁はんは近衛はんの娘の名前をしらんらしい。

 結構有名なのになぁ、あの子の知識はほんまに偏っとるなぁ。


「じゃあいくでぇ」


 ウチの打ち込みは斉藤はんに弾きかえされ、攻めとるこっちが疲れてくるわ。

 ウチは子供の頃に剣道をやっとって、剣術小町とよばれとったんやで、

 それなのに何故、有効打を打ち込めんのや。


「ニギハヤヒ様宜しいでしょうか?」


「ええで、ウチも自分の剣術のどこが悪いか知りたい所やわ」


 話を纏めると、剣道独特の当たっ瞬間に竹刀を引く動作がダメみたいや、

 曰く人を切りたければ全身全霊で打ち込まないとと言うとったなぁ。

 あと、女性と男性では腕力の差が多いのでと薙刀を薦められた。

 

 仁はんの指導の下、身体強化はマレビト組は全員使えるから、

 そうすると自力の差が大きく出てしまうのかもしれんなぁ。

 薙刀も習っとくべきやったかいなぁ。

 

 ウチはええとして、物部連が皆ウチの教えた剣道がベースの剣術なので、

 斉藤はんは修正するのに手間取ってるようやな。



 練習で良い汗をかいたウチは、

 蒸し風呂で更に汗を流して居ると仁はんが帰って来たみたいや。


「朱里さん、入ってますか?」


「おるで、仁はんも一緒にどうや?」


「なっ…… 何言ってるんですか、入れる訳が無いでしょ」


「うずめちゃんみたいに全裸やないで、ちゃんと服着とるし」


「でも透けてたりするんでしょ?」

 あっほんまや、その可能性を忘れ取ったわぁ。


 恥ずかしさの余りに声が出なくなりそうやったけど、

 ここは年上の威厳と言うか余裕を見せ付けなあかん。


「あんさんもほんに損な性格やなぁ、黙っていれば気付かなかった物なのに」


「それは後からお互い気まずくなるだけだって、後で応接間に来てよ」

 それはそうやなぁ。


 それじゃあ一緒に入りますと言われたらどうしようか内心ビクビクしとったわ。

 あの年頃の男の子はお猿さんや聞いとったけど、意外と紳士なんやな……

 これじゃあどっちが年上か分からんなぁ、姉としてしっかりせんとなぁ。


 蒸し風呂から上がったウチは、恥ずかしさか風呂のせいか分からん熱くなった体を冷やすために冷水を浴び応接間に向かう。


「はい朱里さん水をキンキンに冷やしといたよ、

 体の事を考えると白湯の方が良いかもしれないけど……」


「ウチは1gでも減らさんとあかんのや、気持ちだけで十分やわ」


「力石かよ!!」

 何でこの子は昭和のアニメを知ってるん?


「ほんで鞍馬山には何かあったんかいな」


 仁はんは鞍馬山にはカラス天狗に似た、

 八咫鴉と言う種族が居て攻撃されたとらしいなぁ。

 八咫鴉と言えば和歌山の熊野本宮大社のシンボルやなかったやろか、

 何故京都におるんや?


 仁はんの持って居た鏡を奪おうとしてたらしいと聞いたので、

 仁はんにはカラスは光物を集める習性が有ると教え、

 交流したければお供え者の様に徘徊する地域に物を置いたらええと、

 原始的な交易の仕方を教えておいた。


「性善説にたよる事になるけどそれは良いな、何かお返しでもくれる様になったら話合いにも応じるかもしれないし…… この前作った生○ッ橋でも置いて置こうかな?」


「なんで食べ物やの? ほかの野生動物に食べられたらどうするんや」


「京都といったら生八ッ○でしょ、それにあの辺りは聖域と言っていたから他の動物はいないんじゃないかな、さっそく作ってお供えしてくるよ」


 そう言い残して仁はんは調理場に向かって行った。

 行動力が有るのはええけど少し落ち着きがないんちゃうか?

 今後の事で少し話しをしとこう思っとったのに……


 しょうがないからこっちで話進めとくかなぁ。

 ウチは側使えに頼み近衛はんを呼び寄せた。


「ニギハヤヒ様、只今参りました」


「近衛はん忙しいとこすまへんなぁ」


「大変有りがたい事なんですが、私が近衛を名乗っても宜しいのでしょうか?」


 十兵衛はんは摂家では無いのに近衛の名前を使うのを気にしろるようやな。

 摂家ちゅうんは、天皇はんと血の繋がりが有る、

 一条・二条・九条・鷹司・近衛の五つの家が主やな、

 その中でも戦国時代には近衛はんは関白を務めとったさかい気後れしとるようやな。現代人の感覚やと農民出身の秀吉はんでもなれるイメージが強いから、

 そこまで重要な役割やないと思うてしまうなぁ。


「ウチらの時代には(えん)(ゆかり)もない織田さんや徳川さんもおるさかい気にせんでええて、なんなら藤原でも名乗る?」


「本当に私の居た時代と日本は大きく変わってしまったようですな」

 一応、近衛はんには戦国~近代の歴史をおしえて有るで。


「それで今年の計画の話やけど、物部連は使い物になりそうかいな」


「ええ十分かと、ただ…… 消耗する事を考えると人数が少ないと思われます」


「せやなぁ、そうや、物部は斉藤はんに任せて、裏で忌部(いんべ)をあんさんが管理したらええ、人選は任せるで、知っているとは思うけど、表向きは祭事を執り行ううずめちゃんの身の回りの世話や警護や」


「それで裏では汚れ仕事をですね」


「そうなるなぁ、伊賀の服部家のように武士として働いてもええで」


「それではそのようにいたします。斉藤も言っておりましたが、武士(もののふ)の祖と言われる物部連と共に戦場に出られるのは恐悦至極に存知ます。それで本拠地なのですが、奈良湖の対岸の斑鳩とかはどうでしょうか? 隠れて何かするにはちょうど言いかと……」


「それはあかん、仁はんが好きそうな名前や、絶対後でばれるで滋賀県のドコかにしとき、せやなぁ取り合えずは春先までには坂本(大津)をおさえよか」


「必ずや期待に答えて見せます」


「ウチの為に頑張るんやないで坂本はあんさんの領地になるんや、

 自分の為に頑張るべきや、利益が無いと働く気ものうなるしなぁ」


「いえ、滅相もございません。こうして日本の成り立ちに関わる仕事に付けるのは、この近衛、正に天にも昇るような心地に存じます」


 そのまま天に昇られてもウチが困るんやけどなぁ、

 近衛はんは、織田家と朝廷の交渉の仕事をしっとったさかい、

 この国の成り立ちに関わるのには興味が有るようやな。


 ウチは古事記・日本書紀には詳しくないけど、

 神話の世界に当事者として関われるのが面白い言うとったなぁ。

 この世界が古代の日本とは限らんけど、

 今の所日本建国のロールプレイを皆でしとるようなもんやし、

 近衛はんの言うのも、あながち間違い無いのかもしれへんな。  

 まあ、やる気が有るのはええけど、歳やからあまり無理せんといてほしいわ。


 ニギハヤヒはウチの役職名やけど、本名の雨野朱里を聞いた近衛はんは、

 鳩が豆鉄砲食ろうた顔になっとったなぁ、

 似たような名前の人でもおったんやろか?

 ほんまは卑弥呼を名乗ろう思っとったんやけど、

 卑弥呼様は鬼道の達人で呪術の類はまだ開発途中や、

 神通力の無い卑弥呼様なんて笑えもせんなぁ、

 キャストとしては伊勢のお姫さんの役所やし、止めといてよかったわ。


 近衛はんとの話合いを終え自室に戻ると幻覚を目にした。

 ここん所、録に食事をせえへんかって、つい食べ物の事を考えてしまう。

 仁はんが京都銘菓の名前を出したから食べたくてしょうがないわ。


 そんなことを考えとると、ウチの手の平には何故か生○ッ橋が有った。

 これは夢やと思い食べてみると、懐かしいニッキの味が口の中に広がり、

 これは夢や無いと思うたんや。


 試しに色々やってみたら、桜餅と温泉饅頭が出てきたけど、

 バナナやメロンのようなフルーツは出て来なかったなぁ。

 何か制限でも有るんかいな?


 そして空腹のあまりなんて能力に目覚めてしまったんや、

 ウチの減量計画が頓挫してしまうやないか。



おまけ「某京都銘菓をお供えしてみた」


 朱里さんに言われた俺は早速、八○橋を作りタマと一緒に鞍馬山に向かった。

 八咫鴉とは是非仲良くなってアノ妖術を教えてもらいたい。

 アレは何属性の魔法なのだろうか?風っぽいけど、

 五行系に当てはめると何になるんだろうか?

 緑繋がりで木属性かな、それとも火と水の合成魔法で、

 低気圧と高気圧を生み出して風を起しているのだろうか?


 隙間風と言う位だから風は冷たい所から暖かい所に流れるんだよな?

 頑張れば俺も使えそうだな、そのためにも俺は八咫鴉と対話してみたい。


 この前来た不自然に竹が生えてる場所に○っ橋を置いて立ち去ると、

 遠くに八咫鴉の姿が見えた。食べてくれるいいな。


―― ヤタロウ視点

(実際はカタコトで喋ってますが、読み辛いので普通に喋ってるように書きます)


「ヤタロウこの前の人間が何か置いて言ったよ」


「なんだこの三角形の物体は?」


「何かおいしそうな匂いがする、食べ物だよこれ」


 俺が食べるのは毒見をしてからと言う前に烏丸は怪しい三角形の物体を口に運んだ。


「おいしいよコレ、ヤタロウも食べてみてよ」


「俺は人間なんかの施しは受けない」


「頭が固いねぇ、じゃあボクが全部もらうよ」


 そう言った烏丸は大きく口を開け、人間の持って来た三角形の物体を一気に丸呑みした。何か烏丸の様子がおかしいやはり毒が入っていたのか?


「烏丸どうしたんだ、何か有ったのか?」

 烏丸の動きが鈍い神経毒の類か? おのれ人間め。


「ヤタロウ、み…… みず」


「みみずが欲しいんだな、直ぐに取ってやる」


 そういって土を掘り出した俺の尻を烏丸の蹴りが襲う、

 一体どうしたんだ? 幻覚作用の有る物でも入っていたのか?

 俺を置いて烏丸は水場の有る場所に飛んで行ってしまった。


 おそらく食べた物を吐き出しに行ったのだろう、

 烏丸もあまり見られたくない光景だろうからそっとしておいてやろう。

 

 しかし正々堂々と戦わず、毒を盛るとはなんと卑劣な事か、

 あの人間今度有ったらタダでは置かぬぞ。

 


 

 





明智珠=細川ガラシャだと言う事を仁は知りません。

なお後者の方はゲームで知っている模様。

 

烏丸は単に喉に餅を詰まらせただけです。カラスには歯が無いため丸呑みするのがいけないと思います。今後も仁のお供えは続き、烏丸一族に喉に餅を詰まらせる物が続出します。


この八咫鴉のコンビが気に入って来たけど、出番は増えるのだろうか?


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