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7話 猿田彦

猿田彦さんの子孫の方が居たらごめんなさい。


 熊野暦6月某日


 俺は度重なる長雨に辟易していた。

「ひま~」と告げるうずめもおかんむりだ。

 うずめの「何かやってと」言う無茶振りに、

 動物の物マネでウケを狙うがうずめの知って居る動物が少なく、

 おもちゃでも作ろうかと思案した。


「なあ熊野さん、この辺りに手先が器用と言うか絵の上手い人は居ないか?」


 熊野さんは、そうたずねた俺に、

 五十鈴川上流(現伊勢神宮も有る辺り)に住む猿田彦と言う男を紹介してくれた。


 猿田彦はこの辺りの建物や船を作る大工の息子で、

 天才的な腕前で将来を期待されている人物らしい。


 俺は雨のあがった時を見計らって、

 うずめを伴い猿田彦に会いに行って見る事にした。


 熊野さんの屋敷から徒歩で一時間程、

 約四キロメートルほど離れた所に猿田彦の家は有った。

 この辺りは現代では伊勢神宮の門前町でおかげ横丁が有る場所だが、

 こっちの世界では杉を主体とした森が広がっていた。

 猿田彦の仕事は大工だと聞いていたので、

 木材はここから切りだしているのだろう。


「ごめんくださ~い」と声をかけると一人の男が出て来た、

 それは赤ら顔の猿に似た男だった。


 その男は本当にこいつ有能なのかと首をかしげる俺を無視して、

 何故かうずめに声をかけた。


「お譲ちゃんお名前は?」


「うずめはね~ 熊野うずめって言うの~」


「おお 熊野様のあの小さい子が立派に育って」


「おじちゃんはなんてゆうの~」


「おじちゃんは猿田彦って言うんだよ」


 俺は、話のやりとりは他愛の無い物なのだが、何か言いがたい不安を覚えた。

 普通二人が並んでたずねてきて、

 子供(8才)の方に声をか掛けるかね、いや掛けないだろう?

 そう言う、うがった目線で見ると、

 若干鼻の下が伸びている気がするのは気のせいだろうか?

 俺は脳内で猿田彦にロリコンのレッテルを貼り付けた。


 ごほんと咳払いをし本題に入ることにした。


 俺は貝塚で拾ってきたいくつかのハマグリの貝がらを取り出し、

 これに二枚一組で絵を描いてくれと依頼した、

 そうすると猿田彦は快く引き受けてくれた。


 予想に反してと言っては失礼だが、猿田彦の書く絵は素晴らしかった。


 絵付けの終わった貝がらを絵を下にしてならべ、

 3人で試しに遊んで見ることにした。

 ルールは神経衰弱とまったく同じだな、

 本来の貝合せは和歌が書いて有る様だが子供の遊びならこんなものだろう、

 今後文字を書いて知育玩具として売り出すのも有りかもしれないな。


「これとこれだったかな…… くそ、ハズレだ……」


「おに~ちゃん、その絵はココだよ~」

 ちっ、隣だったか。


 結果はうずめが一番だった、子供の興味の有る物に対しての集中力は凄いな。


 中々良い、遊びでやすねと猿田彦がに言われたので、

 原価はほぼタダだし量産できれば子供は喜ぶと答え、

 日用品などの道具や動物の絵と名前を書いて売ったらどうかと提案してみた。


「旦那、そりゃ売れそうですね。早速やってみやす」

 俺はまだ未婚だそ? それともうずめが許婚に見えるのか?


「知って居ると思うがハマグリは一づつ形が微妙に違って、その貝しかピッタリと合わさらない事から女児の貞淑を祈願するのに使える。そう言った付加価値をつければ贈答用にと価値が上がるかもしれないな」


「へぇ~ そうなんでやすか、旦那は何でも知ってやすね」


「も~ 二人とも、難しい話ばっかりじゃなくて、うずめと遊ぶの~」


「ごめんごめん、もう一回最初からだな。次は負けないぞ」


「うずめも負けないもん」



 うずめにもう一回もう一回とせがまれ、

 付き合っている内に結構な時間になっていた。

 俺達は名残惜しそうな猿田彦に別れを告げ帰る事にした。


「お猿のおじちゃ~ん、また遊びに来るからね~」


「うずめ様、何時でも遊びに来てくだせぇ、また何か作りやすから」


 猿田彦のロリコン疑惑は拭えないが、熊野さんの娘には手を出さないだろう。

 後が怖いからな……


 それは天音さんに恋慕の情を抱く俺には巨大なブーメランだった……

 やっぱりアレか?


「お義父さん、娘さんを僕にくださぁぁい」


「俺はお前に、お父さんと言われる筋合いはない」


 なんてお決まりの掛け合いの末、

 娘が欲しくは俺を倒して見ろなんて言い出したりしてな。

 

 熊野さんは身長185cm、体重100kg超のムキムキの大男だ、

 正直勝てる気がしない、信頼を得て交際を認めてもらうしかないな。

 俺の前途は多難そうだ。




 おまけ 「古代のお酒事情」


「なあ 熊野さん酒ってどうやって作ってるの?」


「うずめつくれるよ~」


 そう言うと、うずめは米を口に入れて咀嚼し桶にぺっと吐き出した。


「これをしばらく置いておくとお酒になるの~」


 マジで?


「この辺りでは天音とうずめの二人の作った酒が主流だ、名付けて熊野美人だ」

 がっはっはーと、熊野さんは豪快に笑いながら俺にそう告げた。


 うずめはどうでもいいが、天音さんのなら飲んでみたいかも……


 なお、猿田彦の顔が赤いのは酒の飲みすぎではないだろうか?

 うずめと顔を合わせた猿田彦の、今後の飲酒量が増えるのかは謎である。



猿田彦(25歳)は今後出雲まで連れていかないといけないので大工の息子としました


一説によると神話ではアメノウズメは猿田彦と結婚することになるのですが、主人公の名前が天野なので今のところどうするのかは不明


あと書いて見て解ったのですが、頭の悪そうな子の方が書きやすい


今後天音が刑事コロンボの言う所「家のかみさん」扱いにならないように気をつけたい

貴重なツッコミ要因のはずがどうしてこうなった?

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― 新着の感想 ―
[良い点] 美女と美少女の口噛み酒! プレミアもんですね!
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