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極東西遊記~古代日本に転生したぽいので建国してみた  作者: 星 武臣
第3章 そうだ 京都に行こう
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外伝 橿原裏議事録

熊野暦12月下旬


 ウチは少しお願い事が有って近衛はんの元を尋ねた。


「近衛はんちょとええ?」


「はい、何でしょう」


「ウチの弟(仁)の事で頼みたい事があってん」


 仁はんは甘いと言うか人が良すぎる、担ぐ神輿としてはええけど領主としてはイマイチや、若いからしゃあないとは思うけど、その分ウチらがしっかりせなアカン


「人貸すから坂本(滋賀県の大津周辺)を攻めへん? 今なら切り取り放題やで」


「それはニニギ様の指示ですか?」


「いや、ウチの独断や、仁はんは交易を通じて交流を深めたいようやけど、現実はそんな甘い物やあらへん、ちょっと台風が来たくらいで攻めて来おるで。泉(岸和田市周辺)の勢力がそうやな、塩とかの売買はしとるけど小競り合いもしとるな。正直な話、仁義なき戦いは仁はんにはやらせたく無いなぁ」映画は好きやけどな。


「つまり、汚れ仕事は我々の手でと言う訳で?」


「せや、賭け事の胴元もあんさんらで取り仕切ってもええで、制御の利かん非合法組織なんて厄介なだけやで、あんさんらもぼんさん(坊主)に煮え湯を飲まされとったやろ」


「ええ、それはとても」


 たしか、南無阿弥陀仏と唱えると来世では幸せになれるとか言った詐欺集団が、一揆と称して略奪を繰り返しとったはずや、戒律を重んじて慎ましやかに生活しとったら根切りにされないわな、ウチが許せんのはお布施で生活しとる癖にいざと言う時に矢面に立たん事や、ノブール・オブリケーション(高貴なる物の義務)と言う言葉を知らんのかいな。


「仁はんから、油の生産も任されたんやろ? 資金が有るなら裏社会を取り仕切るのも出来るはずや」


「つまり、生臭坊主の真似をしろと?」


「良心の呵責が有るならタマちゃんのおる稲荷山に立派な神社でも建てたらええ」


「伏見稲荷大社をですか? それはいいですね」


「話は変わるけど、あんさんらの時代鉛玉いっぱい作っとったやろ。周辺の村で米を食ったら体の節々が痛くなる奇病が流行らなかった?」


「よくご存知で、我々の時は山の神の祟りとか言われてましたけど」


 それは日本で鉛を精製すると出るカドミニュウムによる水質・土壌汚染、

通称イタイイタイ病や。日本の鉛鉱石には高確率でカドミニュウムが含まれる、カドミニュウムは約300℃で気化する為、知らずの内に水や土に溶け込み汚染されると言う訳やな。


 有名なんは、スーパーカミオカンデで名が知られる岐阜県神岡町で鉛を精製したら、川を伝い隣の富山県で重大な被害が出た奴やな。


「金属を精製すると有毒な物質が出ると思うたらええ、ウチも公害が出んよう極力気を付けるけど、その手の話は仁はんの耳には入れとうないんやわぁ」


「少し過保護すぎやしませんか?」


(もろこし)(中国)の孟子が論じた、人が持っとる四つの徳ちゅうのんはしっとるけ?」


「仁・義・礼・智の四つですね」


「せや、仁はんの親御さんは特に仁(博愛)を重んじて欲しくてその名を付けたんや、姉であるウチも仁はんには、仁政を行い恩恵をもたらす事を期待しとるんや」


「孔子の哲学書にもそのような事が書いてありました」


「せや、力を追い求める覇道ではなく仁愛を重んじた王道で人心を掌握して天下を統一すべしやったけ?」


「逆に民衆の支持を失った天子は武力によって滅ぼされても仕方ないとなりませんかね?」 中国の歴史は大体そんな風やな。


「その場合滅ぼされるのは、内政を代行しとるウチらやな」


 いつの時代からかは解からへんけど、天皇はんと政治を切り離した人はそうとうな切れ者や、一つの王朝が千年以上持っとる国は稀やで。その土台だけでもウチらで作らんとな。


「ウチらのやり方が気に入らんかったら、謀反でもおこしたらええ」


「そ…… そんな滅相もない」


「そうけ? おたがい喉元に刃物突きつけとった方が無茶は出来へんと思うけどなぁ、()は一つの所に溜まると腐る物や、絶えず流れとるのが理想やけどそうやない場合浄化装置が必要や、その役割を担うのもアリやと思うで」


 近衛はんがやんちゃしたらウチが潰すけどなぁ、まあ、ウチがやらんでもうずめちゃんがやりそうな気もするけど…… 


 あの子この前ウチの部屋の天井に張り付いとったからなぁ、暗殺者(くのいち)にでもなるつもりかいな?


――こうして半年後に滋賀県一帯は平定されるが、仁はその裏事情は知らない。



おまけ 「雨野朱里の回想録」


 あれは、仁はんにおせちを作れと無茶振りした後やったか……


 鍵を開けて自分の部屋に入ると天井にうずめちゃんが張り付いていた。ちょっとしたホラーやなアイム・チャッキーとか言わへんやろな。


 ここ表から見たら二階建てやけど中身は三階建てやで、高さは7m位は有る、それをよじ登って来たんかいな。それと人間は天井に張り付ける物なんやなぁ。


「うずめちゃん、こんな所で何やっとるんや」


「今日は、おね~ちゃんにお話があるの~」


「何んやの?」


「最近、おに~ちゃんの元気がないんだけど、おね~ちゃんおに~ちゃんの事いじめた?」 元気が無いって、そんなにおせち作りたく無いんかいな。


「虐めたとしたら……」ゾクッ


「う…… うせ()や、何もしてへんで、ウチも仁はんの事は好きやしそんな事する訳ないやろ」 今なんか悪寒がしたわ、あれが俗に言う殺気かいな。


「そ~なんだ~ じゃあうずめといっしょだね~」


 そう言ったうずめちゃんは窓から飛び出して行った。何やのあの子、まるで漫画の忍者やないの、ここから飛び降りても怪我もしない所か走る速度も変わっとらへんし、普通足がしびれて暫くは動きが鈍るもやのになぁ。


 あの子も人の道を踏み外さん様なシステムがが必要そうやなぁ、何か良い手立ては無いもんかいな。






 滋賀県に存在する縄文時代の遺跡は何故か琵琶湖の下5m程に沈んでいます。地殻変動を伴う地震か、琵琶湖から一本だけ延びる瀬田川(淀川)が目詰まりしたかが原因と思われます。恐らく後者かな?

 2回連続災害救助で絆を深めるのもどうかと思い少し攻めます。その様子は外伝で書きたいと思います。


 この作品の世界では、伊賀忍者は諜報活動を重視し滋賀県の甲賀忍者は暗殺を生業とする様に発展していきます。


 あと、仁の名前の由来は同名の医療漫画からです。そんな物を連載直前に読んだので、少し現実寄りになってますね。


 日本の歴史は皇紀2600年となってますが、そんな眉唾話は採用しません。

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