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極東西遊記~古代日本に転生したぽいので建国してみた  作者: 星 武臣
第3章 そうだ 京都に行こう
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57話 賭け事とかどうするの?

熊野暦12月下旬


 今、俺の目の前には数々の野草や芋類が並んでいる。

 タマとサクラ達に取って来てもらったんだ、京野菜などと言う言葉なんか有るが新種の野菜は無いかなと思ったのが発端だな。


 「ん? これは水菜か?」


 食べて見ると酷く辛い、この味はからしの葉っぱじゃないか?

 水菜はからしの亜種なのか?


「おお、これは食いでの有る芋だな」

 里芋の類のような厚手の皮では無く、ジャガイモの様な薄手の皮に包まれた芋だな。


「そのお芋はサクラが取って来たの」


 とりあえず茹でて食べてみると、独特の香りが有るな。うんコンニャクだな。

 そして、舌と喉がちくちくする。

 パイナップルを食べ過ぎた時に起こる現象だな~


「朱里さん重曹無い?」


「炭酸水素ナトリュウムなんて有るわけないやろ」

 やはり無いか、有ると色々便利なんだけどな。


 恐らくであるが、コンニャクは酸性なんだろう。

 アルカリ性の物質で中和する必要が有るな。

 こんにゃく芋は皮を剥くときれいな乳白色をしている。


 コンニャクがねずみ色なのは昔は木灰を入れて作っていた時の名残だと言われている。今のコンニャクはひじきを入れてそれっぽい色にしているぞ。中に黒い粒が有るのはこんにゃく芋を皮ごとすり潰していた名残だな。


 とりあえず昔ながらの作り方をしていこうか。

 まず茹でたこんにゃく芋にぬるま湯を入れてすり鉢ですり潰して行くとだんだん固まって来た。これに水で溶いた木灰を入れて行こう、おなじみの色になるまで入れて冷やして固めれば完成だ。独特の香りが有るため、何回か煮てアクを取る必要が有るがコンニャクは完成した。


 こうなるとおでんが食べたくなるな。奈良で練り物の類は作れないとは言わないが、鯉や鮒ですり身を作ると泥臭いので判断に迷う所だ、ちなみに伊勢で鯛ちくわを作ろうとしたら勿体無いと言われ伊勢でも練り物の類は作っていない。売り物にならない雑魚で作れば良いのだろうけど、めんどくさいと言う理由で熊野さんも作っていないな。賞味期限も短いしな、練り物の類は人力で作るには労力に似合わない食べ物なんだろう。


 今後小麦粉需要も増えると思うから水車でも作ろうかな?


 今回のコンニャクは田楽と刺身で我慢してもらおう。


 以前タマの見つけて来たシソっぽい草は何だろうな、戦国時代の人なら知ってるかな?


「近衛さんこの草何か知っていますか?」

この草が何か解からないが、食べられるので取り合えず育ててはいる。


「こっ…… これはっ…… えごまですね」

へ~ 胡麻の仲間なんだ。


「じゃあ、油も取れますかね?」


「私達の時代は油と言えばコレで、明りを得るのにも使ってましたね」

 よし、増産しよう。


 俺は近衛さんにえごまの栽培を任せる事にした。近衛さんは山崎の合戦の疲れかこの世界に馴れないのかは解からないが精神的に疲れている様だったので、暫くは農業でもしてのんびり過ごして貰おうかな? アニマルセラピーも試してみるかな?


「タマ~ 田楽が焼けたぞ~」


「おおついに出来たか、早く食わせるのじゃ」


「たっ…… 珠?」


「近衛さんどうかしました?」


「いえ、娘の名前が珠と言いまして……」

 そう言った近衛さんは孫を見るお爺ちゃんの様な顔をしていた。

 俺は月末には伊勢に帰らないといけないのでタマ達の世話も頼んでおこう。 


「近衛さん、俺は伊勢に帰らないといけないのでその間タマを頼めませんか?」


「なんじゃ、ワシも伊勢にいくぞ?」


「サクラ達の面倒を見るんじゃなかったのか?」


「うぐ…… 痛い所を突くのお」


 サクラ達犬の獣人は稲荷山の近くに有る桃山に居るが、狐獣人から満月になると遠吠えがうるさいと苦情が出ていた。少し離れた所に移住して貰ったほうが、お互い喧嘩にならないだろう。


「さあタマ、近衛さんにしっかり挨拶して」


「ワシは宇迦之御魂様じゃ、よろしくたのむぞ近衛とやら」


「ウカノミタマ…… えっ? お稲荷様……」

 近衛さんは平伏してしまった。武士って信心深いんだったけ?

 比叡山とか焼いてるイメージしかないがどうなんだろう。


「主様よこれが普通の反応じゃ、もっとワシを敬うのじゃ」


 え~ 幼女の姿じゃ威厳が全然ないんだけど……

 せめて妙齢の女性に変化してくれないとな、欲を言えばたわわに実った胸部装甲を持って居ると少しは敬おうと言う気になるかもしれない。


「タマがもう少し大きくなったら考えるよ」

 どこがとはあえて言わないぞ。


 なにはともあれ近衛さんにタマの世話を頼む事が出来た。あまり甘やかさないようにとは言い含めていたが、お稲荷様と敬う相手におねだりされて、近衛さんは断る事が出来るだろうか?


 伊勢から戻ってきたらタマの顔がパンパンになってたりしてな。


 近衛さんは意外な事に料理の類が出来るらしい、何か接待料理の指揮も取った事も有るとか言っていたので、朱里さんの方も任せても良いのかな?


 コンニャクは木灰が入って居るので少しジャリジャリするが味は普通のコンニャクだな。近衛さんが刺身コンニャクに付いている酢味噌が気に入ったらしいので作り方を教えておいた。



 しばらくして俺は、タマ達と別れて朱里さんの元を尋ねた。

 少し相談ごとが有るんだよね~


「朱里さんコンニャクが出来ましたよ。あと食べながらで良いから聞いて欲しい事が有るんですが……」


「なんや改まって、困り事かいな?」


 困り事と言うほどではないが、これはやって良いのかと判断に困っている物が有る。熊野さんと鮪を捕まえて鉄火巻きを作ろうと言う話が出ているのだけども、鉄火巻きの語源は鉄を鍛える時の赤くなった鉄を鮪で表現した物と、鉄火場(丁半博打)の席で片手で食べられると言う理由から良く食べられたからと言うのの二つ有る。当時は日持ちも考えて醤油に漬けた物を使用していたのかな?


 俺の悩みとはギャンブルを開放するかどうか? と言う問題だ。

 鉄火って何? の質問にどう答えるかが変ってくるな。


 日本は主要駅前に賭博場が必ず有る、世界から見たら異常な国だろう。


 国民性としてギャンブル好きなのかは解からないが、仕事の息抜き程度なら良いがそれにどっぷり浸かるのはどうかと思う。その気になれば右手と左手どちらに石を持って居るかでも賭けが成立するので、俺がやらずとも誰かがやるのは時間の問題と言えるな。


「それで仁はんは賭け事の胴元をウチらでやるかを悩んどるわけや」 


「まあ、胴元が一番儲かるからね。神事として行いお布施(場所代)を貰うのもアリかな?」


 時代劇に出てくる丁半博打の胴元がこのスタイルだな、入場料を払って後は勝手に賭けて下さいと言う方法だ、アレはサイコロの目が奇数か偶数かが完全に運任せなので成立する方式だな。賭ける人数が釣合う様に調節して、勝ては掛け金が倍になる方式だ。


 懸念材料としては、賭博場が成功した場合2匹目のドジョウを狙い誰かが真似する可能性が有る。それが進めば非合法組織の様な輩が出て来るかもしれない。だったら俺達で思いつく限りの賭け事を牛耳るべきなんじゃないだろうか?


「仁はんはどうしたいんや?」


「賭博場は各県に一つか二つで良いかな、あまり賭け事にのめり込んで欲しくないし…… ただ規制しても裏でやる奴は居るだろうね。それを自警団(軍隊)で押さえ込むと不満が出るんじゃないかな?」


「まあ、ウチらの居た日本も雀荘とかあからさまに賭博やってるのを見逃しとるしなぁ」


 外国とかどうしてるんだろうな、西部劇だと酒場で賭けポーカーとかしてるシーンは有るけど、アメリカの場合何やっても自己責任の一言で済みそうなおおらかさが有るよな~  


 非合法組織を見逃す代わりに上納金を払えと言う方針か? パチンコ屋とかこの方式だよな? 競馬・競艇・宝くじなんかはしっかり国が抑えていたりするしな。後者は有る程度の資金が必要なのでどうしても領主じゃないと出来無いか。


 こう考えると今の所物々交換が主流なのは良いな、「そんな量の米持って帰れねえよ」となるだろう。ただ狩猟組合で米と交換出来る証書(おこめ券)を既に発行してるんだよね。つけで酒飲んでる人も居るので銀行業もやってると言っても過言ではないな。


 海が荒れて居る時の漁師に「明日土木工事に参加するから今日は飲ませてくれ」と言われたのが発端だが、体力的にキツイ土木工事はやりたがる人が少ないので助かっては居る。借金で人を縛っていると言われたらそうなるだろう。ギャンブルが蔓延するとその状況が加速しそうだ。


「非合法組織と国がズブズブなのはどうかな?」


「せやけど人類が生まれてから今までに出した答えがそれやないの?」


「それって昭和までの話じゃない?」


「仁はん、こっちはどう見ても昭和より前やで」


 地方都市の風俗店とか明らかに一般人じゃない人が前に立ってるので、平成でも見逃されてるのが現状だよな、ちくしょうめもっとチャラそうなヤツ立たせとけよ怖くて入れないじゃないか。


「じゃあ朱里さんは必要悪は存在すると言いたいんですね」


「任侠とか言うやろ、人の道から外れん限りは見逃してもええんちゃう」


「江戸時代の岡っ引き見たいに警察業務を委託するとか?」

清水の次郎長とか何故か人気あるよな。何をした人かはさっぱりだが……


「その岡っ引きは司法取引でやってる場合が多いんや、副業が博打打ちとかありえへん職業の人がおるから二足のわらじの語源になっとるんやで」


 そうなんだ、まあ自警団と言う名の軍隊を持ってる領主の意向から外れなければいいか。そう考えると装備の差別化は計るべきだな、竹槍は便利だが誰でも作れるしな。領主が賭け事の胴元と言うのも聞こえが悪いので外部委託も有りか、俺達が賭けに負けたとか下らないヘイトを集める必要は無い訳だし。


 熊野さんとも相談しないといけない案件だけど、無から有を生み出す神の如き閃きを授けられた人はさぞ有りがたがるだろう。子々孫々まで語り継ぐようにと言い含めておけば暫くは大丈夫かな?


 とりあえず賭け事に関しては外部委託で、領主の許可を得て運営しお布施(上納金)を払わせる事で仮決定された。



「じゃあ、熊野さんに相談して来るよ」


「伊勢に帰るのはええけど、おせちをこっちに送るのを忘れんとってなぁ」

 ちっ、忘れてなかったか……


「了解、ついでに適当な物を大和煮(味の濃い煮付け)にして送るよ」


「楽しみに待っとるわぁ」


 楽しみにされちゃあしょうがないな。正直見るのも食べるのも嫌だが作るとするか。


 

からしの日本伝来弥生時代

コンニャク芋の伝来は縄文時代ですが、食べ方が伝わったのは平安時代の仏教の伝来と共にだそうです。また弘法大師か?


ギャンブルの発祥は石器時代から存在し、サイコロやカードやコイントスの賭けは古代中国が発祥。少なくとも紀元前からギリシャやローマに伝えられていた、磔にされたキリストの服を誰が貰うかをサイコロの目かクジで決めたと聖書に書いて有るらしい。


仁はお年玉を握り締めて風俗店の前まで行った経験が有る。ませた高校生なら行こうとはするだろう結果は上記の通りです。


コンニャクの匂いの成分は中和剤の水酸化ナトリュウムが主な原因です。

重曹は伊賀に湧いてる温泉が炭酸水素塩泉なので今後、前触れも無く出てくる可能性有り。風呂にへばり付いた温泉成分を食用に使うのは如何かとは思いますが、それしか方法がなさそうなのが痛い所です。

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