53話 今後の予定
前回の話の続きです
熊野暦12月上旬
朱里さんと滋賀県で鳥人間コンテストを開催しようと言う話の後、今後の開発とこの国をどうして行こうかと言う話になった。一応現地人のくくりから口減らしなどで無駄な死者が出ないようにして欲しいと要望が有った事は伝えておいた。
すべては知らないが大まかな日本の歴史を知る俺達ならば、時代の時計の針を進める事も出来るんじゃないかな? 是非産業革命を日本で起して見たいものだが、東海・近畿地方で4人もマレビトが居るんだ恐らく世界中に居て皆同じ事を考えて居るに違いない。そして試行錯誤の末、古代文明のオーパーツなどと言われる物を作りあげるんだな。朱里さんの話だとお隣の中国はまだ統一されて居ないらしい、もし統一されていたら高確率で日本に攻め込んで来て支配下に置かれて居るだろうとの事だ。
確かに何処の観光地も中国人でいっぱいだもんな。俺の実家の桑名でもたまに見かけて、お前ら京都とか他に行くとこ有るだろと思った事がある。その位中国人の日本好きは異常だ、もし中国人のマレビトが居たらコッチに来るかもしれないな。平和主義者な奴だと嬉しいが、今の中国が戦国時代の最中でその覇者となると攻撃性の高い奴の可能性が高いよな。
秦の始皇帝が中国を統一したのが紀元前200年位だったっけ? まあマレビトがいるから何かしらのズレは有ると思うが、青銅器の加工技術があるので日本の何処かと交流しているのは確かだな。
「朱里さん日本の遺跡で製鉄などをしていた痕跡があるのは何処ですか?」
「青銅器と鉄器は同時に日本に輸入されて居たとされていたけど、本格的に製鉄をし始めたのは古墳時代(西暦500年)位やなぁ」
「物は有るのに700年も技術が進歩しなかったのですか?」
下手すると1000年以上の可能性が有る。
「黄金の国ジパングとか言うやろ、お隣から買えるのに作ろうと思わなかったんやない?」
「鉄とかの鉱石が絶望的に出ないので日本は戦争をしたと聞いた事が有るです」
今も昔も鉄鉱石は輸入に頼るしか無かったのか?
戦国時代の鉄砲の素材も輸入品なのかな?
日本刀は砂鉄を集めて玉鋼を作りそれを元に作ったと聞いた事が有るが……
「出雲に年代が特定できない、たたら場(製鉄所)の跡が有るなぁ」
「じゃあ、日本海側は中国と交易してたか技術者が移民してきた可能性が有るんですね」
「まあ、そうやけど本格的になるのは古墳時代からやなぁ」
昔の人はどうやって製鉄していたのだろうか?
まさか炭火じゃないだろうな?
やはり石炭は必要か、主要の炭鉱は九州に有るイメージだけど掘れば何処でも出るんじゃないかな。
「石炭とか掘ってみます? 砂鉄を集めれば製鉄出来るかもしれませんよ」
「この辺りでも石炭の類は出るんやけど、かなり深く掘らないと出ないなぁ、この世界は少しファンタジー入っとるやろ、九十九神の定義はわからんけど、鉱物が妖怪みたいになっとるかもしれへんで」
ゴーレム見たいのが出ると言う事か、土に埋まってるなら攻撃し放題じゃないか? レベル上げに最適なダンジョンだな。それと金属が塊で有れば精錬する必要が無いのも魅力的だ。
九十九神か……
タマ達を始めとする獣人も年齢が40歳を超えると人化を始めるらしいので、獣人は九十九神の一種なのかもしれない。河童とかも亀の亜人なんじゃないかな?
アメコミみたいな河童のトリオが居たら是非仲良くしたい。
海の魚の亜人も居て竜宮城や乙姫様も居るかもしれないのか、
なんだかロマンが有るな。
俺達の居た世界にもその伝承は有るので、あながち無いとは言えないが日本で地下迷宮の類の怪談は聞かないな、廃坑につるはしを置き忘れたりしないかぎり九十九神は発生しないんじゃないか?
化石燃料を使うか魔法で対応するかは後ほど考えるとして、愛知県の瀬戸市で耐火性に富んだ粘土が出るらしいので来年はそこを開発して高炉を作り製鉄を試して見ようと言う話になった。砂鉄は電気系魔法が使えれば、銅線をコイル状に巻けば電磁石が出来るのでそれで集めてみよう。
「朱里さんはバブル世代ですよね、俺達はバブル崩壊後の失われた20年なんて言われてる何かパッとしない時代の生まれなんですけど、昔の日本はどうだったんですか?」
「嘘や、パソコンがあそこまで小型化されてるのに何が失われとるってんや」
スマホは正確にはパソコンでは無いが、朱里さんの使っていたであろうPC98よりはスペックが高そうだ、ゆうなのスマホに入ってるSDカードはフロッピーディスク何枚分の容量になるんだろうな。
「朱里さんこの林檎のマーク見た事ありませんか? アメリカ製ですよ、技術開発関係は日本はからっきしですね、製鉄や造船は人件費の安い中国や韓国に持っていかれ、自動車企業も現地に工場を作ったりしてるから日本にお金が落ちないんですよ」
「昔ブイブイ言わしとった製造業が落ち目なんやな、問題が人件費なら日本企業も国外に工場を作るしか無いかぁ」
「税金の問題も有るのかな、プロ野球選手とか有る程度稼げる人はメジャーリーグに行ってますね。子供の時の記憶なんで定かじゃ有りませんが、最初に騒がれたのは野茂秀雄投手ですね」
「ああ名前だけは知っとるわぁ、近鉄の選手やろ?」
ごめん朱里さんその近鉄の球団もう無いんだ……
「自分も実際に稼いだ訳じゃないので解かりませんが、1億稼ぐと半分位持って行かれると噂で聞きましたね」
「半分に減っても5000万ですか、羨ましいです」
まあ、一般人からしたらそうなんだろうな。
「話は変わりますが、アメリカは強いですね。今も昔もトップを走ってますよ。あれは何が原因なんですかね」
「比較的に外国から攻められない立地条件と、宗主国だったイギリスが強かったからかなぁ。力の有る親戚は必要やで、あと一番は喧嘩が一番上手い国ちゅうことやな。やばそうな大戦では金を貸す位にとどめて置いて旨い所はちゃっかり押さえるしたたかさが有るなぁ」
「だったら他国に侵略された事のない日本は世界のトップを走ってないとおかしいんじゃない? たしか戦国時代の鉄砲の所有量は世界一と聞いたけど」
「それで秀吉はんは朝鮮に攻め込んでどうなったんや? 喧嘩は決して強いと言えへんなぁ。それに鎖国しとったやろ? 対外政策が引き篭もる事やからあまり褒められたもんじゃあらへんなぁ。あと地理的な問題もあるかもなぁ」
なるほど、前者は中国の数の暴力に負け、後者は情報不足により産業革命に乗り遅れた訳か、産業革命がほぼ地球の反対側のイギリスで起きたのも痛い所だな。日本人は蒸気機関の黒船を見て始めてこの国は何とかしないとまずいと思った訳だ。そこからの伸びは悪く無かったような気がするので国としてのポテンシャルは高かったのだろうが、出だしが遅すぎたと言うのがデカそうだ。
それに戦闘の経験値は他国と取ったり取られたりしていた外国と日本では段違いなんだろう。と言うか日本に攻め込んで来たのモンゴル人(元寇)だけなのか? 何故だ? もっと頑張ろうぜ中国人とロシア人、ロシア人がシベリアを抜けて日本海側に抜けれたのは近代からなのか?
「産業革命で思い付いたんですけど。石炭を掘るとして蒸気機関も作りますか? 一応工業高校の出身なんで車のエンジンをばらして組み立て直す授業は受けてますし、有る程度の原動機の仕組みは解かりますよ」
「大量の石炭と金属が要るなぁ、鉄鋼業をやるとしたら炭鉱の多い北九州でやるのが適切なんやない?」
「じゃあ仕組みだけ考えておいて俺達は特許で儲ける方針ですかね」
「仁はん、おぬしも悪よのぉ」
「いえいえ、お代官様ほどでも」
期間限定的では有るが奈良の領主は俺で代官が朱里さんだ。
「二人ともとても悪い顔をしているです」
「ゆうなよ、お金は無いより有った方が良いだろ? 国を動かそうとすれば金の成る木の一つや二つ持ってないと税金で平民の生活が苦しくなるぞ、これはWinWinの関係と言う奴だ」
何故日本は電話や塩などの必需品と酒やタバコなどの嗜好品の利権を手放したんだろうな、国鉄も新幹線だけは手元に置いておけばさぞ儲かっただろうに……
まあ何が売れるか知って居るのはマレビトの特権だろうから、そこは確実に抑えておこう。
「仁は、民主主義の政治はしないんですか?」
「ゆうなよ、俺達の居た世界の中国は今景気が良いだろ? 国がある程度発展するまでは君主制が良いんじゃないかな。君主を世襲制にするとトンデモない奴が出てくるから舵取りする大臣は選挙で決めても良いかもね。しかし国会中継を見てる限りではアイツ等真面目に仕事してるような気がしないな。どうでも良い学校がどうたらよりも、どうやったら日本が儲かるかの論議をした方が有意義だろう?」
あれで給料がもらえるなら俺も政治家になりたい。俺の親の世代だと殴りあいの喧嘩をし出す気骨の有る政治家が居たようだが……
「仁はんは、最終的には君臨すれども統治せずの方針で行きたいんやな」
「面倒事は大臣に任せるに限るんじゃない?」
「安部ちゃんの胃に穴が開かないか心配やわ」
あんたも逃げる気まんまんだな。
「天皇陛下はちゃんとご祈祷とか外交なんかの仕事をしてるですよ?」
「何を言ってるんだ? ご祈祷はゆうな達の仕事だろ?」
「何かヒモ見たいな生活をしたい様に聞こえるのは気のせいやろか?」
専業主夫か悪くないな。口にだすと怒られそうだから話題をかえよう。
「蒸気機関を作ろうと言う話をしてなんだけど、何時までもマレビトが君主なのはまずい気がするから適当な所で現地人に任せて、余生は南の島で暮らしたいな」
「じゃあ適当な時期に有望そうな人材に天皇陛下をやらせようと言う訳やな、それウチも乗ったわぁ沖縄辺りでええで」
「俺達、現人神とか呼ばれてるでしょ? 神から王権を授けられたら正当性も立つんじゃない?」
「仁、天皇陛下はアマテラス大神の直系の子孫です、そんなことしたらバチが当たるです」
こいつ無神論者の癖に妙な所に拘るな。神は居ないと言いたい所だが、俺それっぽい奴に合ってたわ。だとするとアイツの息の掛かった奴が何処かに居るかもしれない。
「天孫降臨の伝説がある宮崎の高千穂には居るかもしれないな。よし有望ならソイツにやらせよう。最悪歴史書を改ざんして直系の子孫が居ると言うことにすれば辻褄は合うだろう」
「この世界が歴史どおりに進むなら、何もせんでも天皇はんは奈良に攻めてくるで」
ほお九州を統一して大軍で奈良まで攻め込める指揮能力が有るのか、もし居るとすれば中々有望そうな人物だな。勝敗は水戸黄門よろしく適当な物を見せれば平服する感じで良いかな? 俺が包丁として使っている短刀が原材料が分からないオーパーツだよな。もうこれでいいか。
まあ世界情勢を見て外国のマレビトがどれだけやんちゃしているかで、
暫くの間は補佐が必要かもしれないが、
俺個人としては小料理屋でも開業してのんびり暮らしたいと言うのが本音だ、
周りの生活が安定するまでは頑張るけどさ。
「じゃあ、法律とかもガチガチにしない方が引き継ぎがし易いのかな?」
あとはよろしくと言って六法全書の様な物を渡されても困るだろうし……
「それより先に現地人がそれについてこれへん、識字率はそれほど高くないで」
それもそうか。何事も段階を踏むのが大切か、生活に直結する食料自給率の問題は解決して置こうか。このまま開拓が進めば米に関しては問題がなさそうだが、不作に対応して別の作物を育てないといけないな。蕎麦の実は京都か長野に有るのかな? 今度武御雷鎚さんに合ったら聞いてみようか。
「あと個人的な好奇心なんだけど、九州がどうなってるか見に行って良い?」
「まあ実際この世界に天皇はんがおるか解からんし、中国の情勢を詳しく知りたいなら九州で情報収集するのが一番やな、でも奈良の状況を考えると来年はかんべんして欲しいのが本音やな。ウチも行って見たいし」
「私も行くです」
「じゃあ誰が奈良の面倒を見るんだよ!!」
「安部ちゃん?」
「さっきその人の健康について心配してなかったか? さすがに一人じゃ無理だろう」
「ウチが苧麻を育ててる麻生と言う場所に太郎はんがおるからその人でええ? 帳簿とかもつけとるから計算には強いで」麻生の太郎さんか何か色々と被るな、実物は九州のセメント会社の御曹司じゃなかったか?
「何をするにしても文官は10人位は必要じゃない? あとマレビトは誰か残らないといけないと思うぞ」
「ぶ~ ちゃっかり自分だけは行く気まんまんです」
「ある程度戦闘力は必要だし、俺はこの時のために奇兵隊と演習をしてサバイバル環境での調理の仕方を学んできたんだぞ、俺抜きで行くと野たれ死ぬぞ?」
「仁が居ない間、私達のご飯は誰が作るですか?」
「お前が作れよ、女の子だろ」
「仁はんと同じ物を作るのは無理が有るんやない、せめて猶予期間が必要や」
つまり調理学校も作れと言う訳だ。それは名草さんと耕一さんからも頼まれてたな。
「ゆうな新鮮な物は塩をかけて焼くのが一番旨いぞ」
「その塩加減と焼き加減を教えるです」
「まさか貴様、メシ不味属性か?」
メシマズ属性とは何を料理しても黒いドロドロした何かになる奇跡の属性の事だな。
「プリンはちゃんと作れたです」
じゃあ味の感覚に問題は無しか、じゃあ塩焼きも作れるだろ。砂糖の無いこの世界で塩と砂糖を間違える事は無いんだし、醤油系の料理をいくつか教えれば良いのかな? 花嫁修業として煮魚位は作れないと嫁の貰い手がないだろうしな。
企画段階ではさっさと九州に行ける予定だったが、色んなしがらみのせいで中々先へ進めないな。一応行く事に関しては否定されなかっただけでもましと考えておくか。
補足説明
主人公の息子に当たる人間が浦島太郎の元ネタの人で、鮫の亜人の豊玉姫と結婚していますね
天孫降臨を主人公に当てると主人公の子孫が天皇陛下となるのでかなり不敬だと思い、アマテラスと同一視されているオオヒルメノムチノカミの子孫が居る事にしようか悩む所です。
神武天皇の装備品は布津御霊と言う剣と天の羽々矢です。
悪ノリ神器の天野シリーズの可能性が有ります。
なお刀の方は何故か同じ名前の物が2本有ります。奈良時代に作られたレプリカが鹿島神社の宝物殿に有り一般公開される事が有るそうですね。見に行ける神器良いですね。
なお神話上の神武天皇VSニギハヤヒの戦いは神器を掲げると相手が平伏すると言うご都合主義と古事記に記載されてますが、面白おかしくしたいですね。
絶対に水戸黄門スタイルにはしません、ラスボスらしく死闘を演じてもらいましょう。
その初代天皇は主人公の曾孫に当たる人物ですが作品の都合上同世代です。
一説によると広島を7年、岡山で8年かけて制圧したか懐柔したか解かりませんが、挙兵できる位の武運は有ったと思います。作中時間では岡山で鬼と戦ってると思われる。
ロシアがシベリアの開発に乗り出したのは17世紀、大航海時代に乗り遅れこれは不味いと未開の地開発に乗り出します。一番槍はビーフストロガノフで有名なストロガノフ伯爵




