52話 空も飛べるはず
熊野暦12月上旬
身体能力強化について疑問に思った事を天音さんに相談してみた所、魔法適性者には様々な種類が有って基本的には体の何処からか魔力が漏れるそうだ。例えるなら桶に水を入れてザルに水を通す様な感じの人は適性無しで、少しずつでも溜まれば適性が有るがそれも程度がピンからキリまで有るらしい。しかも桶に穴が開いてるとしてそれが下の方に開いてるのか上のほうに開いてるのかで話が変わって来る。
ゆうなとくくりは一定の魔力が体に満ちると体から漏れて来て、それが体を包み込むように作用しているのでは無いかとの事だ、ちなみに俺と熊野一家はほぼ穴が開いてない状態なので魔力をオーラの様に纏う事は出来無いのではないかと言われた。
残念ながら天音さんは魔力容量が多すぎて体内に魔力を充満させる事が出来なかった。
「やはり体の中に魔力を満たすのには時間が掛かりますね」
「まあ、天音さんの魔力容量ならそうなるでしょうね」
俺の溜めておける魔力量が風呂桶位なら天音さんは学校のプール位だ、そこに常時6割程の魔力が溜まっている。俺の場合は体から魔力を絞りだせばすぐ満たされるが、プールに風呂桶一杯位の水を足しても焼け石に水だろう。理論上は一切魔法を使わずに溜め続ければそのうち満たされるが、天音さんは仕事で魔力を使うのでそれは不可能だ。
少し寂しそうにしている天音さんに、必ず身体強化を出来るような装置を作ると約束し部屋を後にした。
しかし、どうしようかな魔法を補助する装置か……
よく魔法使いとか水晶玉とか持ってるよな?
純粋な魔力単体は電気が通る物なら相性がいいらしいが、水晶との相性はどうなんだろうな? 腕時計とかは水晶に電気を流してその振動を使って一秒を測ってるんだったけ?
だとすると魔力も通るはずだが魔法が蓄積されるイメージが湧かないな、いっそ乾電池のような物を作った方がいいかもしれない。一度、朱里さんに相談してみよう。
尾張地区の視察を終え伊勢に戻って来ていた朱里さんを尋ねに、宿泊している宿に向かうと何故かゆうなが付いて来た。朝の一件で俺がおっぱい星人だと言うのがバレたか?
おっぱい星人は言い過ぎか? 自分の体に付いて無い物が目の前に有ると探究心としてどの位の弾力が有るか調べて見たくなるのが人情と言う物ではなかろうか? いや、そうに違いない。
「何でゆうなは付いて来るんだ?」
「仁が間違いを犯さない様に見張る為に決まってるです」
やはり、朝執拗に胸をつつこうとしたので警戒しているのか?
「そうは言っても、奈良で暫く暮らしていたがそんな事は無かったぞ」
「嘘です、朝の仁は野獣の様な目をしていたです」
「ゆうなは野獣を見た事が有るのか?」
「見た事は無いですが、ネットではアッ~とか言ってるらしいです」
「な……何故それを知って居るんだ? 中学生だろ」
「仁、何か知ってるですか? いくら調べてもそれ以上は解からないので教えるです」 ゆうなの家のPCにはチャイルドロック的な物が掛かって居たんだな。核心にはせまれなかったようだ。
「ゆうな、それ以上その先輩については検索するなよ」
「電波が無いのに検索できる訳無いです、馬鹿ですか?」
「そういえばそうだな、俺が馬鹿だったよ」
軽い言葉のキャッチボールのつもりがゆうなの大暴投のせいで取り乱してしまったじゃないか、まあ誤った道に進む事は阻止できそうだ。現代にいたら腐った道に進んでいたかもしれない。しかし、ゆうなは何処でその情報を掴んで来たのだろうか? 激しく気になるがこれ以上詮索するのは止めておこう。
ゆうなが野獣(先輩)についてしつこく聞いて来たが、知らぬ存ぜぬで押し通して問答していると朱里さんが泊まっている宿に着いた。
「こんにちは朱里さん、どうしたんですか? 浮かない顔してますけど」
「それがな、うちの安部ちゃんが伊勢のお姫さんの所に行ったら自信喪失してしまったんよ、ウチも見とったけどアレはちょっと引くなぁ」
聞く話によると天音さんに水魔法の水蛇を教えに行ったら、無詠唱で8匹の水の大蛇を作ったので絶句したらしい、安部さんは俺が水魔法の習得に時間が掛かっていたので、伊勢の魔法のレベルは低いと高を括って天音さんと接して鼻っ柱を折られたと言う訳だ。
事前情報で伊勢には魔法のスペシャリストが居ると教えて居たんだけどな、まあ何事にも上には上が居ると言うのを知るのは良い事だろう。俺も熊野さんがいなければ調子に乗って勝てない相手に無策で挑み、そこらへんで野垂れ死んで居たかもしれない。
「あの一家は規格外の塊ですからね、安部さんが負けずに奮起してくれるといいですね」
「まあウチからも発破掛けとくわぁ」
阿部さんの起爆剤に成るかわからないが、水晶などを使い魔力の増幅や蓄積して一時的に魔力を高めれないか相談してみた。
「面白い発想だとは思うけど簡単な命令しか受付ないやない? 金属と同じで何か一つしか特殊効果を付けられないとか有りそうやなぁ」 ちなみに夢の超合金は銅に耐火性を付けようとしたら溶けなくなって迷宮入りしている。
魔力を溜めるだけと、放出するだけなら作れるが一つでその両方を作るとなると困難かもしれないとの事だ。
Aに魔力を溜めておいて、BにAと触れたら魔力を放出と言った命令を書き込めば行ける気がする。魔法の補助をするには事象の具現化について命令を書き込まないといけないので複雑な機構が必要になると思うが、当初の目的である肉体強化に使うのは純粋な魔力のみなので何とかなりそうだ。
「パソコンとかもスイッチのオンオフを0と1で表して色んな事が出来るじゃない? たとえば米粒位の大きさの水晶に命令を書き込めるなら、寿司の大きさで400粒位の米を使うから2の400乗の情報を組み合わせれるんじゃないかな?」
「安部ちゃんに言って試して見るか、いきなり難しい事はできへんからそろばんサイズの珠の組み合わせからやなぁ」
「まあ、四則演算をする計算機も最初は箪笥サイズだったらしいし、最終的には手の平サイズになるんじゃないかな?」
「仁はん、さすがに手の平サイズのコンピュタは無理やで人知を超えとるわぁ」
あれ? 朱里さんはスマホを知らないのか?
平成3年にこちらに飛ばされたらしいけど携帯電話はどうなんだろ?
何とかノラと言う女芸人が通信兵のような携帯電話でバブルネタをやって居た気がするが……
「ゆうな、スマホを朱里さんに見せてやれ多分驚くぞ」
「見せるのは動画で良いですか?」
ゆうなのスマホで動画を見た朱里さんはVHSはここまで小さくなったのかと訳の分からない事をいっていたが、それが電話で電波があればテレビを見たり、インターネットで調べ物を出来ると言ったら絶句していた。
「ウチらの世代は電話機に専用の機械つけて、そのネットとやらをしてたけど、こんな小さな端末でそれが出来るとは驚きやなぁ、仁はんとウチの飛ばされた時間に25年位の差が有るんやったっけ? 車は空飛んだりしとるん?」
「アメリカの物好きが実用できる物を作ってた気がするけど、街中に着陸出来無いので普及はしてないんじゃないかな? 北海道の何処かでナウシカに出てくる乗り物を再現したとか動画で見ましたね」
「白い羽のついたヤツやろ? 子供の時に憧れたわぁ」
えっ? ナウシカは昭和何年の作品なんだ?
「私も巨神兵のビームに憧れたです」
ゆうなよ女の子の感想としてそれはどうなんだ?
「ゆうなは頑張れば空飛べるんじゃないか?」
「出来るかもです、仁早くあの白い乗り物を作るです」
ゆうなは鼻息を荒くして俺に命令して来たが別にあの形じゃなくても良いだろう、浮かせて動かす分には魔法の絨毯や畳でも良い訳だし。
「せや、琵琶湖で鳥人間コンテストやらへん? 広く募集して人力部門と魔法部門で競うんや、何事も競争しないと技術の革新は出来へんで」
試しにゆうなに畳を浮かさせて見たが重くて3分ほどが限界だった。竹と帆布でグライダの様な物を作れば飛べるかもしれない。何か面白そうだな、ゆうなにはそれまでにデモンストレーションが出来る位に調整してもらおう。
滋賀県に至る道は岐阜から関が原を抜けるか、京都から川沿いに北を目指すかだな。滋賀県には人は住んでいるのだろうか?
ナウシカは34年前の作品朱里さんは当時15歳
下の方に赤い文字で書いて有ると思いますが、作中の会話に出てくる物は似て非なる何かですのであしからず。実際に現代人が何人か居たならこの手の下らない会話はするんじゃないかな。
古代でもライト兄弟レベルの物は作れると思われる。ライト兄弟は家業が自転車屋なので、まずは自転車から作るべきだったか?




