51話(2/2) うずめの秘密2
全話を含めて会話などを追記するかもしれませんが、その時は前書きでお知らせします。
熊野暦12月上旬
――翌日
身体能力強化の方法に光明を見出した俺は、コツを掴むべく早朝から熊野神社の境内で練習をしていた。体に魔力を充満させると肉体強化されるのは確かなのだが、それを維持し続けるのが辛い。例えるなら便秘の時にふんばり続けるような物だ。
腹に意識を向けつつほか事をしなければならない、いざ戦闘となると小一時間それを維持し続ける事になるだろう。
腹筋崩壊するよ? 実も出るかもしれない。
まあ腹に力を込めるイメージは例えで有って実際にふんばってる訳じゃないけどな。今現在のところ瞬間的にしか使えないのが痛い所だ、昔みたバトル物の漫画の主人公のように常にその状態で生活出来る位になれば打倒熊野さんにも目処が付きそうなんだけど……
待てよ? うずめは意識してそれをやってると思うか?
恐らくだが、うずめの身体能力強化はパッシブスキルの域に達している。熊野さんは必要に応じてオンオフを切り替えてそうだ、だとするとうずめは魔力操作の達人と言う事になるな。今まで気付かなかったがもう一人化物が居たな。今まで理解出来無かった事が理解出来ただけでも成長したと思おう。
俺が常時身体能力強化出来たとしたら、お茶を飲もうとして湯飲みを握り潰したりしそうだ。
そういえば、天音さんの肉体強化の方法どうしようかな?
出来ない事はないだろうけど相当な魔力が必要だよな。コストパフォーマンスが悪そうだ。魔力をオーラの様に纏って攻撃出来ないかな?
試しにやって見た所、体外にでた魔力は大気中に霧散してしまった。これを維持し続けるのは至難の業だ、持ってる物に魔力を込めるのは苦労しないので何か補助的な物を作れないだろうか?
理論上は間接周りにサポーターの様な物をつければ行けると思うけど中身も強化しないと骨折するよな? やはり前身タイツ型になるのか? 黒い全身タイツを来た天音さんを想像して見たが……
怖えーよ、推理物のアニメの犯人かよ!!
暗闇で有ったら漏らす自信があるぞ。
せめて修道女の様な格好にとどめて置こう。
それを媒介に内側に魔力を作用させれば似た様な効果を得られるのじゃないかな?
身も蓋も無い話、あの人はお湯を沸かす時の魔力を放出しながら歩けばすれ違う人の体の血液は沸騰する。効果範囲がどの位有るかは分からないが、戦場のど真ん中にあの人が立っていれば死体の山が築かれるんだ、実際には弓矢とか有るからそうは上手くいかないだろうが近接戦では敵無しだろう。
いかんな、最近敵対勢力が大阪周辺に居ると聞いて発想が物騒になってるな、天音さんが望んで居るのは、皆と一緒に旅行したいとかだろう。少し困難な思いをして野宿とかして見たい位の感覚だ。うずめから話を聞いてるのだろうけど、野営の時のキャンプファイヤーに似た焚き火の前でする酒の席は楽しい。
そう言う苦楽を共にした旅を乗り越えたり、焚き火の前で取りとめの無い話をしたりとかそう言った青春じみた事をしたいのだろう。奇兵隊は男所帯のため誰が好きなのかとか彼女に振られたとか言う話で盛り上がるのだけど、天音さんに誰が好きか尋ねられたら答える自信がない。
前からあなたの事が好きでしたと言えればそのまま夜を共にするチャンスが来るとは思うが、振られたらこれからの生活どうするかとか考えると二の足を踏んでしまうな。
そんな不甲斐ない自分を拭い去るべく身体能力強化を使い体を動かした。
当然脚力も強化されてスピードに慣れるのが大変だな、急激に視界が引き伸ばされる感覚に慣れるのにはまだまだ時間か掛かりそうだ。
「仁、その動きはなんです?」
「ゆうなか、うずめの動きを参考に肉体強化の魔法を編み出したぞ、名前は金剛だ」
「ついに出来たですか、早速私に教えるです」
「いや、使えるには使えるがまだ実用段階じゃないぞ」
それでも構わないと言われ概要を説明すると、「はぁぁぁ~」と日曜朝八時頃にやってるアニメの様に魔力を溜め出した。そして体からは青白い物が吹き出し、それは大気中に霧散する事無く体の回りにとどまっていた。
「ゆうなそれどうやってるんだ?」
「どうと言われても、これはそう言う物なんじゃないですか?」
いやドラゴンボールではそうだろうけどさ、そう言う物でかたずけるなよ。
詳しくたずねると、粘度の高い粘液の中に居るような感じがすると言って居た。ローションプレイとは最近の中学生は進んでるな、じゃなくて風に飛ばされないように有る程度質量を持たせたのか? それはアリだな。試しにやって見たが俺には出来無かった。魔力の質とか有るのか? 属性的な……
でも俺が多用してるのは土魔法だぞ? 相性は良い筈なんだけどな。
まさか適性の薄い魔法を多用していたとか有るのか?
ゆうなの周囲に展開している魔力に触感が有るのか気になったので、指でつつこうとしたら逃げられた。
「ゆうな何で避けるんだ?」
「当たり前です何処触ろうとしてるですか!!」
えっ? 胸だけど何か? まあ正確には乳首だな。
「ちょっと、その魔力に触感が有るか確かめるだけだって」
「嘘です、目が何かやらしいです」
おっと顔に出てたか、心を無にして攻撃のタイミングを読まれないようにしないとな。
「オラオラオラオラオラオラ」
「無駄無駄無駄無駄」
魔力は任意で動かせるんだな、前面を厚くして俺の指を阻んで来る。触った感じはコンニャクゼリー位の弾力かな、魔力を解析すべく俺も指先から魔力を放出したが効果はイマイチだ。
「ゆうな何ともないのか?」
「何か温かい液体の中に浸かってる感じがするですが、何か癒しの効果でも有るのですか?」
何故か相手によって効果が違うな、どうやら相手の魔力の質によって効果が違って来る様だな。以前から気にはなっていたが、コイツどう言った原理で物を空中に浮かせて居るのだろうか? 風や重力操作では無いのは確かだ、念動力は有名な超能力だけど陰陽五行に当てはめると何属性なのかな?
「なあ、ゆうなの使う鏃はどう言った原理で動かしてるんだ?」
「何言ってるですか、ファンネルはそう言う物です」
いやそれは解かるが俺が間違っているのか?
魔法はイメージが大切だからな出来ると思い込む事が第一条件だったりする。
俺もアニメとかは良く見るからその辺の想像力は有ると思うが……
足らないのは中二成分か? 俺は常識に囚われて居るのか?
俺もまだ若い筈だ、ゆうなに負けるな頑張れ俺、多分頑張らないといけない時点でダメなんだろうな、出来て当たり前位の所まで意識を持っていかないと話にならない。
試しにゆうなにその状態でどの位強化されるのか聞いた所、身体能力は7割増し位らしい。纏っている魔力で攻撃を緩和出来るなら防御力重視の性能なんだろう。ちなみに俺の体感での肉体強化は3倍弱だ、強化は魔力の密度に比例するので体外に放出してると効率が悪そうだ。
しばらくゆうなで遊んで居るとくくりも起きて来た、くくりは寒さに弱いらしくのそのそと神社の御手洗に向かっていたので、ゆうなに暖めてやれと言われたが俺が魔力を流した結果は人によって違うからどうなっても知らないぞ。
「くくりちゃん、仁が魔法で体を温めてくれるです」
「そんな事が出来るのですか? 是非お願いします」
試しに魔力を流した所、焚き火にあたって居る様な感覚の暖かさらしい。
ゆうなとは若干違うな、これは言葉の綾なのかそれとも実際に何か違うのかは俺には解からないが、不快ではないようだ。俺と魔力の相性が悪いのはうずめだけか? くすぐったいのが不快か快感のどちらに分類されるかわからないが、体の内側からくすぐられるのはどんな感じなんだろうか激しく気になる所だな。
試しにくくりにも身体能力術を教えたところ、赤い陽炎の様な魔力が立ち込めていた。まだ断定出来ないが、ゆうなは水属性でくくりは火属性なんじゃないかな?
身体能力の比率はゆうなよりくくりの方が高いが(約2倍強)、防御力ではゆうなに負ける感じかな。
うずめの強化率は10歳児がオリンピックのメダリストと同じ身体能力と仮定すると6倍位有るかもしれない。これから素の身体能力が伸びるとすればかなり脅威的だな。そのうち素手で熊野さんを倒せるかもしれない気がするな、うずめに先を越されない様に修行に励むとしよう。
ゆうなとくくりの属性はあくまで断定です。
恐らく問題はないと思いますが、今後の展開を大きく左右するので少し時間を下さい。
次回は、平成のマレビトのジェネレーションギャップ(平成初期には携帯電話が存在しない)などの閑話を挟みます。




