51話(1/2) うずめの秘密
熊野暦12月上旬
今後の予定として犬の獣人達は伊勢の観光と交易品探しを終えた朱里さんと共に奈良まで行き、タマと俺で伏見の稲荷山まで送る事になった。
リーダーの獣人はサクラと名付けられ熊野神社で可愛がられている。
個人的にはポチにしたかったが、周囲の猛反対により現在に至る。
いいじゃないか、タマとポチで覚え易いし……
「ご主人様、サクラと遊んでほしいなの」
そう言うサクラに手を引かれ表に出ると、他の獣人達はゆうな達と遊んでいた。
サクラ以外は人型に変化できず茶色い毛皮と白い眉毛の着ぐるみの様な格好で、サクラはボーイッシュな茶色の髪型に白い眉毛の人型に変化して居た。
鬼畜野朗と呼ばれる俺だがちゃんと服は着せているぞ。
プードルの獣人が居たら天然パーマになるのか激しく気になる所だが、ここに居るのは全て柴犬だ。探せば黒い毛並みの奴は居るかもしれない。
犬の獣人達の身体能力も見たいので、木を削り出して作ったフリスビーで遊ぶ事にした。ルールは簡単で一番早く取って来た者には干し肉をプレゼントだな。
「わ~ 何それ~ うずめもやる~」
うずめが参加すると一人勝ちしそうなな気がするが……
まあ、丁度いい比較対象だな。面白そうだからやらせてみよう。
「よーし、みんな位置についたか? 投げるぞ~」
俺がフリスビーを投げると、皆一斉に飛び出していった。サクラ達は瞬発力は無いけど最高速度だけならうずめと変わらない様な気がするが、ちょっと相手が悪いな。当然の如くうずめがフリスビーをゲットした。
これでは余りにサクラ達が可愛そうなので、俺が参加してうずめが投げる事にした。主人の面子も有るので負けられないな、ここは全力で行かせて貰おう。大人気無いと言われるかもしれないが、クラウチングスタートの構えでうずめの投げるのを待ってから駆け出した。
スタートでは優位に立てたが後ろからサクラ達が迫って来る。
くそっ、負けてたまるかっ!!
俺の指先がフリスビーに触れた瞬間に横から攫われてしまった。
ああっ、惜しい…… もう一回だ!!
年甲斐も無く熱中してしまったが5回目のチャレンジでようやく勝利を物にした。実力の拮抗する相手との勝負がこれほど楽しいとは思わなかったな。
さきほどからゆうなはジト目で俺を見て居るが……
「なんだゆうな、自分も混ざりたいなら言えば仲間に入れたぞ?」
「誰がするですか、自分が勝つまでやるとか、大人気ないです」
「自分の身体能力がどの位のレベルか知るのは大切な事だぞ?」
今回勝てたのはサクラ達がバテて来たのも要因が有ると思うが、そこを含めて自身の身体能力を知りたかった。ここ一番の勝負では誰かに助けられ続けて居る俺だが、何時までもそれを良しとする程年を取ったつもりは無い。
何時かはチート一家に勝ちたいと思うが、皆何かの特化型なので総合力で勝負したい所だな。
熊野一家の中で特にうずめが異常だ、まだ10歳位なのに既にオリンピックで金メダルを取れそうな位の身体能力をしている。筋肉の量とかから考えても明らかに不自然だ、天音さんはうずめが自分自身に回復魔法を掛け続けているんじゃないかと指摘していたが、アレ超回復の賜物なのか?
限界まで筋肉を酷使すると回復した時には強靭な体になると言う奴だな、普通なら1~2日筋肉痛で動けなくなるが、うずめの場合寝て起きたら完全回復と言うRPGの主人公顔負けの体をしてるから、物心が着いた時からそれをしていたとすると驚異的な身体能力になると……
でも、うずめはゴリラマッチョじゃないよな?
謎は深まるばかりだ。
不自然と言えば一度はトラックに跳ねられミンチ状態になった俺だが、同じ位の重量が有るオークに跳ねられても歩ける位の怪我で済んでるな。俺も無意識で肉体強化の魔法を使って居るのかもしれない。
もしこれを効率的に作用させる事が出来れば、飛躍的な進歩を目指せるのではないだろうか?
うずめに身体能力強化の魔法を使っているのか、天音さんの言う様に回復魔法を常時発動させているのか聞いて見たが要領を得なかった。ダメだ姉の魔法の説明もヤバかったが、妹の方は輪をかけて酷い。
俺があれこれ聞いていると、うずめはうんうんと唸って考え込んでしまった。 独自で解読するしかないのだろうか? そういえば、うずめの魔力の流れが常人と違うと聞いたな。
うずめに魔力を流して試してみるか? うずめの手を取り魔力を流すと……
「あはははは、お兄ちゃんやめて、くすぐったい」
どうやらくすぐったいらしく、うずめは笑い転げた。
魔力が流れるのに抵抗が有るな、うずめには悪いがもう少し試させてもらおう。例えるなら木に釘を押し付けて入れて行く感じだな、入るは入るのだが抵抗が凄い。うずめの体内の魔力濃度が高いのだろうか?
うずめの声がしなくなったので思考をやめ、様子を見てみるとうずめはアヘ顔でピクピクしていた。
「うわっ、うずめごめん」
「う~ お兄ちゃん、ひどいよ~」
頭を撫でようとしたら、まだくすぐったいらしく触ったらダメと言われた。
悪い事をしたと思うが興味深いデータが取れたな、もう一人の体内魔力が濃そうな人はどうなんだろうか? 疑問を解決すべく俺は天音さんの元へ向かった。
「天音さん、魔力の循環に関して調べたいので手を出してくれませんか」
「えっ? はい、どうぞ」
天音さんの手を取り魔力を流したが、天音さんはきょとんとしている。流したイメージは海にバケツで水を入れて海水の塩分濃度を下げようとする行為に似ている。
女性に何かを入れて今何かしたんですか? と言うリアクションを取られるのは激しくプライドが傷つく、男の沽券に関わると言う奴だ。
昔読んだ漫画を参考にして、体の細胞一つ一つから魔力を絞り出すイメージで魔力を練り、一度へその下辺りに溜める。今だかつて無い位の魔力が俺のの体で渦巻いているが限界まで溜めてみよう。
よし溜まった。これでも食らえとばかりに魔力を天音さんに放出した所、天音さんの体はビクンと揺れ「うっ」とやたら艶やかな声をもらした。
「もしかして、くすぐったいですか?」
「いえ、何かゾワゾワします。気持ち悪いと言う分けじゃなく、むしろ…… あっ」
特に悪い事をしている訳では無いが背徳感がハンパ無いな、と言うか俺の股間をダイレクトに刺激する反応だ。何か気まずくなりそうだったので途中で止めて、どうしてこのような現象が起こるのか聞いてみた所、こんな事は初めてだとお褒めの言葉を頂いた。男冥利に尽きるな……
じゃなくて、俺が魔力を流すと反応はそれぞれだが何か感じるらしい。そして、天音さんの魔力容量的な物は多くうずめは少ない。
先ほど試して見たが瞬間的に体内魔力を上げる事は可能で、試してみないと分からないが体の中に魔力が充満している状態だと何かの強化がされるのではないのだろうか?
この仮定が正しいとすれば、うずめの体には小さな器に見合わない量の魔力が有り、常に魔力が充満している状態で肉体が強化されていて、驚異的な身体能力になっている説明が付く。
だとすれば容量の多い天音さんは同じ事をするには、かなり苦労する事になるだろうな。
「天音さん、有り難うございました。何か掴めそうです」
「何か分かったら、私にも教えて下さいね」
もしかしたら、うずめの真似をするのは無理かもと言うのは言い辛いな。
考えを纏めてみよう。
体内に魔力が循環すれば肉体強化が出来る可能性が有る。
ゆうなを11月末の夜中に放置しても風邪を引かない所を見ると、魔法適性者の肉体強化は当たらずしも遠からずだろう。
それは体内の魔力濃度が高ければ高いほど顕著に現われる。
体中から搾り出す事で体内の魔力濃度は上げれる。
魔法を使うほど威力が上がるので、多用する事で魔力量は増えるが上限が有るかは不明。魔力容量の大きさは生まれつきか?
回復魔法の使い方は今だ不明。
こんなとこかな?
限界まで体内の魔力を上げて、そこらへんの岩に向かい竹槍で突きを放つと岩を粉砕した。マジかっ、と言うか竹槍の強度おかしくね?
もしかしたら持っている物の耐久力も上げられるのかもしれない。
これは嬉しい誤算だな。俺の場合ある程度魔法の威力が上がるが、それ以降は肉体強度が上がるのかな?
なんと言う器用貧乏、いやオールラウンダーと呼んでくれ。
正直何かに特化していて、無双して見たいと言う気持ちは捨てきれないから、諦めずに夢は持ち続けよう。




