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極東西遊記~古代日本に転生したぽいので建国してみた  作者: 星 武臣
第3章 そうだ 京都に行こう
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47話 温泉と新たな名物

 守鶴はぶんぶく茶釜に出てくるタヌキか和尚の名前ですね。

 熊野暦11月中旬(三重・伊賀)


 奇兵隊の本拠地である伊賀の町に来ている。

 この地もビールの製造を始めてからかなり栄えて来た。

 中心部は開けた伊賀上野と呼ばれる所に置き、稲を主な作物として居るな。

 周辺の集落では小麦と大豆を作っていて、伊賀上野郊外の東側に奇兵隊の本部が有り、西側には今開発中の温泉が有る。


 奇兵隊に魔法を使える人間が増えたので伊勢の熊谷組と共同で温泉開発をしてみようって訳だ、残りの熊谷組は猿田彦達と伊勢神宮を建てているな。


 ちなみに伊勢と志摩を結ぶ道は先月に終了している。

 それで熊野さんに頼んで人手を回して貰った。

 熊野さんも温泉には興味が有り、早く掘り当てろと催促されてしまった。


 今現在伊勢の住人は一部の人間を除き風呂ではなく水浴びで済ませて居る、風呂自体は土魔法で簡単に作れるのだけど、薪を買う余裕の有る人間だけが風呂に入れる様だ、熊野さんは伊勢市にも温泉を掘り共同浴場を作りたいと言っていた。


 今の時代、風邪をこじらせて死ぬ人は結構いる。是非温泉に浸かって寒い冬を乗り越えて欲しいとの事だ、その提案には俺も賛成なので、温泉開発を進めるとしますか。


 温泉は日本全国で出るので何か特色を出したい所だな。

 ウズラやオークの畜産を試して見たいと思う。あとこの前の酒宴で思ったが職業料理人を育成した方が良いかもしれない。


 俺を含む魔法適性者で節を抜いた竹を地面に埋め込み、残りの人間には周囲の土地を(なら)して貰うついでに、奈良方面の街道整備をしてもらおう。


 交代制の24時間突貫工事で3日間した(のち)、竹の筒から勢いよく温泉が噴出した。


「うわっ、熱っ」 火傷の危険性を考えてなかったな。


 何はともあれ温泉が湧いたので、木津川の水を引き込み大浴場を作り皆で入ることにした。


「これが噂の温泉ですか、中々良いものですな」


「唯のお湯ではなくて、病気も治るらしいぞ」

 温泉の効能には詳しくないが、神経痛とか肩こりが治るとかじゃないかな。


「冬場には温泉が最高の馳走だな、兄貴」


「この湯に浸かりながら、キンキンに冷えた酒を飲んだらどうなると思う?」


「……冷えた酒 ……だと」


 実際にやってる人間が居るかどうか分からないが、温泉と言えばお盆の上に徳利と猪口を浮かべて飲んでるシーンを想像したので一応酒を用意した。

 俺はすぐ酔いつぶれるので遠慮したが、皆は喜んで酒を煽っていた。次第に酔っ払いながら歌を歌いだす始末だ、工業高校に居た俺はこう言った男共の馬鹿騒ぎが大好きだ。


 ぜひ俺も全裸で一曲歌わせてもらおう。


 チョイスした曲はよさくだ。


 皆は、○ぃ○ぃ、○ーと小気味良いリズムに合わせて合いの手をいれたくれた。

 とある木こりとその女房の歌なんだけど、山を切り開く熊谷組の連中は大層気に入り伊勢で働く人間達にも教えたいと言っていたので、快く了承したぞ。


「何じゃ仁、こんな所におったのか」

 俺が調子に乗って2~3曲歌って居るとタマがやって来た。


 年は行ってる物の、見た目は幼女なので全裸でもときめか無いな、タマは駆けつけ3杯で酒を飲み干し酔っ払いの仲間に入ろうとしていた。


 男達のふれあいに女が混じるなと思ったが、皆気にして無いようだから言うだけ野暮か……

 タマは今まで風呂に入る習慣が無かったが、橿原に来てから大の風呂好きになった様だ、京都の伏見にも温泉を掘れとうるさい、伊勢が先だと言ったら自分で掘ると言い出した。


 どうやって1500m掘る気なんだろうか?


「まあ、待ってろって年内には何とかするからさ」


「いやじゃ~、仲間にも風呂の素晴らしさを教えるのじゃ~」


 子供っぽいが仲間思いの良い奴だな、頭を撫でてやるとジト目で俺を睨み、

「そんなので騙されんぞ」といっていた。

 そう言われても三重県以外の温泉事情は詳しくないからな、この時代だと温泉の有る所が湖の底と言う場合も有る、現に俺の地元(桑名)の方で有名な長島温泉は恐らく海の底だ、無理矢理開発したければ埋め立てる必要が有るな。


「ええい、見ておれっ」そう言ったタマは少し離れた場所に行き、手を合わせて屈み込み、伸びをすると同時に手を高く突き上げた。


 どうでも良いが服を着てくれ、この世界の光や湯気は仕事しないぞ。


 それを5分位繰り返していると地面に亀裂が入り温泉が噴出した、「どうじゃ凄いだろう」とタマは言っているがどうやって掘った?


 あの動きから察すると、地下水脈で岩盤を削ったのか?

 竹の子が地面を割って出てくる様に……

 なんと常識外れな、理論上は可能かも知れないが普通の人間に出来るのだろうか?

 一人出来そうな人に心当たりが有るが、あの人もぶっつけ本番では出来ないだろうな。


「それじゃあ、行ってくるのじゃ」

 そういい残したタマは、大きな狐に変化して西の方角に駆けて行った。


 服忘れてるぞ!!


 残された皆はポカンと口を開けて居た。

 そりゃ3日掛けて苦労して掘った温泉を、たったの5分で掘られたら唖然とするわな。


「若様、是非彼女を熊谷組に下さい」


「それは俺が決める事じゃ無いな、本人に聞いて手伝ってくれるかどうか聞いて見たらどうだ、報酬次第で引き受けるかもしれないぞ」


 タマの異常さに皆の興がそがれたので、そのままお開きになってしまった。


――その翌日


 守鶴に頼んでいた物が届いた。

 桜の枝を集めて貰っていたんだ、地面に落ちた薪になりそうな乾いた枝を中心に集めて貰った。その枝を細かく砕き桜のチップを作り燻製を作ろうって寸法だ。

 

 これでベーコンやソーセージが作れるな。


 じゃあ、仕込んでいこう、ベーコンは塩や蜂蜜などを水で溶かした物の漬け醗酵させる。

 からしやハーブなどを入れると風味が増すな、今回は山椒の葉っぱを使用して作ろう、これは4~7日熟成させないといけないので後回しだ。


 ソーセージは肉をミンチ状にして腸に詰めるのだが、オークの独特の匂いは脂身に含まれる為、出来るだけ赤身を使い少しだけ風味を残し、牛脂を混ぜて作って行こう。これもパセリやブラックペッパーを混ぜるのが主流だが、無いので山椒と大葉で代用した。


 腸に一定量ひき肉を詰めたら、捻って小分けしまたひき肉を詰める。オークの腸は太いのでフランクフルトサイズになったがしょうがないな、羊の腸が手に入ればウインナーサイズも出来るのだけども……


 腸にひき肉をつめ終わったら燻製してみようか、少し熟成させた方が良いのだけどココまで作ったら、俺は待ちきれなくなった。


 土魔法で人が入れる位の煙突の様な物を作り、中にソーセージを吊るして燻製にする。

 下で焼けた炭に桜のチップを投入する方法で熱薫と呼ばれる方法を取る、上部は少しだけ空気の通り道を残して置き、中に煙が充満している状態を作った。


 待つ事2時間、ソーセージは出来たかな?


 見た目は綺麗な琥珀色をしているが問題は味だな、早速茹でて食べてみますか。

 一人で試食するのも寂しいので、奇兵隊の連中も集めて試食会を開いた。


 味は程よい大葉と山椒の香りがオークの獣臭さを消すだけではなく、味を引き立てていた。味付けに使用した塩の功績も大きいな、100%天然塩なので塩分だけでは無く、含まれるミネラル分が旨みとなって顕著に現れている。その旨みを腸詰めにした事により、逃がす事無く閉じ込められているな。


「若、何ですかこれ、歯ごたえも良いし凄く旨い」


「兄貴、これビールに凄く合うな」


 皆の評判も上々なので量産体制に入ろうか、奇兵隊の本部が有る柘植川周辺の北側の丘が開いているので、そこに試験農場と共に食肉加工工場を作り、伊賀の里もくもく手作り農場と名付けた。


 数日後に出来上がったベーコンも好評だったので、こちらも生産ラインに乗せようか、もうビール園でも作るか?


 伊賀にはもくもく手作りファームが有りサービスエリアなどでそこのソーセージが食べられます。

 今回出てきた温泉は島ヶ原温泉で、炭酸水素塩泉になります。効能は神経痛のほか胃腸不良にも良く飲んでも効果がある見たいですね。

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