46話 新たなフレンズ
熊野暦11月上旬(奈良・橿原)
「ねえ、朱里さん、吉野山の方はどうなってるんですか?」
「吉野山周辺はに行くには山を迂回しないといけなくて、開拓に難儀しとるようやなぁ」
「でも、オークのデカブツが通って来た道はあるんでしょ?」
「それが有るのが救いやなぁ」
以前集団で攻めて来たオークは、南側から攻めて来たので獣道が出来ていた。そこを切り開き道を作っては居るが、荷車を通せる程の道を作るのに難儀しているようだ。四足歩行のオークでは通れる道も人間だと厳しい場所もあるらしい。細い道なら山を越えた平野部まで有ると聞き行って見る事にした。
生い茂る雑木林の中を進んで行くと川に出た、おそらくこれが吉野川だな。
しかし、この国本当に山ばかりで憂鬱になるな。
分け入っても、分け入っても、青い山とはよく言ったものだ。
広域攻撃魔法が使えれば一つや二つ吹き飛ばしたい位だな。
まあ恩恵も有るけどな、俺達は茸や野うさぎを狩りそれを食料に当てる事にした。
皆が山に入ってる間に釣りでもするかな、吉野川ではあまごが釣れたが鮎の時期は過ぎているようだな。暫くすると変な物が釣れた、丸い口の中に歯がびっちり着いた鰻の様な魚だ。
「なんだコレ、キモッ」
よく見ると目の下に七つの穴が開いていた。もしかしてコレ八つ目鰻か?旨いとの噂だけど……
取り合えず焼いてみるか、八目鰻を捌いて川の水で洗い焚き火で炙り醤油だれで味付けしてみた。皮が厚くゴムの様な食感だが味は悪くない、少し小さめに切って串焼きにした方が旨いだろうな。
魚を焼きながら皆を待っていると、森の茂みから男の人影が現われた。
「お前、その旨そうな匂いの物は何でやんすか?」
「八目鰻の串焼きだが、一つ食うか?」
そう言うとソイツは俺の手から串焼きを引ったくり、ガツガツと食い始めた。タマと一緒で獣人だな、耳の形が丸いから違う種族なんだろうけど……
余りに食いっぷりが良いので、焼いていたアマゴもやるとぺろりと食べて、
「食った食った」と言わんばかりに腹を叩いていた。
何かポンポンと言い音がするな…… と言うか、こいつタヌキか?
キツネとタヌキは人に化けると言うから、キツネ獣人が居ればタヌキも居るのかな。
「なあ、仲間は居るのか?」
「この先の山に、80人ほどの集落が有るでやんす」
「じゃあ明日、此処に連れて来れるだけ連れて来いよ、旨いもの食わしてやるぞ」
そう約束し、別れようとした時に奇兵隊の連中が帰って来た、タヌキ獣人は俺の背中の後ろに隠れてガタガタと震えていた。好奇心旺盛かと思ったら意外と臆病な奴なんだな。
「兄貴、何だソイツは?」
「さっき知り合った、恐らくタヌキの獣人だな」
「タヌキと言うと丸っこい犬みたいな奴か? 鍋の材料の……」
「お願いですから、食べないでくれでやんす」
俺の後ろでパニック状態になっていたソイツを宥めて敵じゃない事を説明した、涙目になっていたソイツは何処か愛嬌が有り、奇兵隊の連中も気に入ったようだ。名前を聞くと太郎と言っていたので、守鶴と名乗らないかと提案したら、
「なにそれカッコいい」と喜んでいた。
中二病は種族を超えるな。
昼食を取った後、一度橿原市に戻り酒宴の準備をする事にした。たしか信楽焼きのタヌキは伝票の様な物と酒の徳利みたいな物を持っていた気がする。
メインは何にしようかな? この前、鴨も有ったしそろそろ渡り鳥が飛来する季節かな。
雁とか居ないかな?何らかの理由で食べられなくなった時に、どうしても食べたくて「がんもどき」が出来たと言う話が有る。恐らく旨いんだろうな。
そろそろ寒くなって来たし鍋でも作るかな。おでんも作ろうと思えば作れるが、さつま揚げとかを作る油がもったいないな。この前取った山椒魚で竹輪は作って置こうか、すり身と卵白を混ぜて竹に巻きつけて焼くだけだし簡単に作れるだろう。
渡り鳥を探して、奈良湖周辺を散策しているとダチョウサイズの愛嬌のある鳥が居た。食いでが有りそうなので捕まえて見ようか、大きな石を二つ間隔を開けて縄で縛った物をジャイアントスイングの要領で足元に投げると縄が足元に絡まり、バランスを失って転倒したので、すぐさま駆け寄って腰の短刀を抜き、首を切りつけて〆た。さて持ち帰って味見をしてみようか。
「朱里さん、また変なの捕まえたんだけどコレ何かわかる?」
「そら、うずらやなぁ」
「マジで? うずらって普通赤ん坊の顔くらいの大きさだよ?」
「ウチもこっち来た時には驚いたんやけどな、卵はよくスーパーで見る色してんのや」
その卵もダチョウの卵サイズなんだろうな。
オムレツ何人前出来るんだろうか?家禽にできないかな?
朱里さんに聞いてみた所、面白そうだとの回答を得た。
成鳥を逃げないようにするのは難しいが、卵から孵化させて俺たちを親と認識させれば逃げないかもしれないな、明日用の食料調達と一緒に卵を採取するとしよう。
取り合えず捕まえたウズラを調理しよう、可食部分は鶏と一緒だな。
この大きさならケイチャン焼を模してウズチャン焼きができそうだ、内蔵部分をよく洗い甘辛い味噌ダレで味付けして鉄板で焼く、この際お好み焼きのコテの様な物を使って焼くとチャンチャンと音がする事が名前の由来だな。
まあ早い話、北海道の郷土料理の鮭のチャンチャン焼きのパクリだ。
胸肉はタタキにしてポン酢で食べ、モモ肉は照り焼きも良いが鍋用かな、背中の肉を山椒を利かして照り焼きにしようか、恐らく筋肉が発達して硬いので、包丁で刺すようにして、よく筋を切って調理しよう。
首周りと残った肉は包丁で良くたたきミンチ状にして鍋の具材かな? つくね焼きも良いな両方作るかな、そうすると味の変化が欲しいから牛蒡と大葉で風味を付けたい所だな。
「タマ~」
「なんじゃ仁、ワシに用か?」
実はタマは子供の様に見えるが結構な年だ、なんでも100年以上生きて居るらしく言葉も琵琶湖周辺の集落で教えて貰ったとか言っていたな。京都の地理に詳しいタマに大葉を見たこと無いかと聞いたら、見たことが有ると言っていたので取って来て貰うことにした。
「仁には特別に変化の術を見せてやろう」
そう言ったタマは3mほどの大きな狐に変化した。
そっちが本体なんじゃないのか?
そうすると普段は残った体を何処に収納して居るのだろうか?
暫くすると大量の葉っぱを咥えたタマが帰ってきた。取って来た葉っぱを見ると大葉も有ったが、見慣れない葉っぱも有った。しそ科の植物ぽいけど何だろう。 種が有ったので食べてみると胡麻ぽい味がした。これが何か解からないが、取り合えず育ててみようか。
葉っぱの方も焼肉とか巻いたら旨そうだなコレもメニューに入れるかな。
酒宴に出すメニューは決まった。
前菜 山椒魚の竹輪
副菜 川魚の刺身
焼き物 鶉の照り焼き2種(背肉とつくね)
強肴 鶉とせりの鍋と内蔵のちゃんちゃん焼き
食事 味噌焼きおにぎり又は雑炊
甘味 橘の蜂蜜漬け
やっぱり揚げ物は欲しい所だな。食用油が生産できれば料理の幅が広がるが、無い袖は触れないな、やはりオークを品種改良してラードでも取ろうかな?
フライ物ならラードとの相性も良いし……
伊賀の里に試験農場を作ろう、一つ試したい事もあるしな。
――翌日の昼間酒宴は開かれた。
昼間から開いた理由としては、日が暮れると帰れなくなるからだ。別にココに泊まっても良いが、朱里さんとタマが居るから気を使った。
メニューは会席料理ぽいが笹の葉の上に豪快に盛って有り、前菜以外は無くなり次第追加で作って行くスタイルだな。タヌキ獣人とタマの食いっぷりは見事な物で追加するのも一苦労だ、朱里さんも手伝ってくれているが、焼け石に水だな。橿原に住む女性たちにも協力を仰ぐべきだったな。
料理はおおむね成功と言えよう、日本酒も口に合うようだな。守鶴に村長を紹介してもらい、酒や料理と交換で吉野山での葛と桜の栽培と採取をお願いした所、快く引き受けてくれた。
後は交通の便を良くするだけだが、獣人は悪路を物ともしないのでボチボチやっていこう。
神武東征の話に出てくる、吉野山周辺に住む土蜘蛛はタヌキの獣人なんじゃないかな。
ウズラは一応、渡り鳥の一種ですが北海道~九州の間の何処かを行き来しています。
近畿地方だと、標高の高い所で飼育するなど工夫すれば、通年で飼育出来るんじゃないかな。




