44話 奇兵隊増員
日本の場合米を秋に収穫するため、冬を越せないと言う事態は起きないと思う。口減らしが有るなら夏になるのかな?
熊野暦10月下旬
今年も熊野神社の境内には、うず高く米が積まれていた。蔵に仕舞い切れないので建設中の伊勢神宮の前に仮設の小屋を建てて一時的に置れている。正月に樽酒とか置いてある場所だ、大きな神社の入り口付近に無駄に大きな広場が有る謎が一つ解けたな。
何故か北畠の里にもお布施がきていた。曰く今年の豊作の礼だとか……
理論上は、まともに田植えをすると三倍の収穫量が見込めるらしいが、今年の収穫量は2.5倍強となっている。
食い切れないなら領主に渡して、地域の活性化に繋げた方が効率的との判断だろうか?
これだと、お布施をした場所とそうでない場所との発展具合に差が出てしまうな。税金の概念を取り入れるべきかは今度の領主会議の課題にしよう。
現代でも山間部は過疎化が深刻化してるな、三重県に住む俺は鈴鹿山脈を削って伊勢湾を埋め立てる事が出来ればどれだけ三重が栄えるか夢想したな。もしかしたら愛知県に勝てるかもしれない。
さっきのは冗談だが、今の所農業と林業はドル箱産業だ、需要に供給が追いついてない。ビールがまた売れるんだなこれ。山間部を開拓して麦を栽培したりすると、開拓村を作るため木材が必要になる。うっそうとした森が続く鈴鹿山脈は、ちょっとやそっとじゃ禿山にはならない。この辺りの木が杉なのも追い風だな建材としては優秀だ。
くくりと約束した誰も飢えない世の中を実現するため、米・麦・大豆の三本の矢を用意したぞ。収穫時期は米が9.10月 麦が6月 大豆が12月だ、春先にも何か欲しい所だが山菜とかでいいのかな?
アマノミクスと呼んでいいぞ。
米が不作だったら枝豆で飢えを凌ぐしかないな、豆腐にすれば腹持ちもいいしな。
お布施により先立つ物が出来たので、以前から計画されていた奇兵隊増員をすることにした。名護屋に有る熱田町に人が集められ試験がおこなわれた。試験といっても相撲で善戦できれば合格で、弾かれた者も見所があれば、岐阜や名護屋の自警団への推薦をする予定だな。
三重は熊野さんの教えで領地内の男性はほぼ戦える、どうやら帝国陸軍式の教育を施したらしい。やはり戦中派は考える事が違うな。徐々に岐阜と愛知にも取り入れていこうか。
奇兵隊と岐阜・愛知の自警団あわせて300名の募集に対し1000名の募集があった。特に岐阜から来た若者には奇兵隊は人気で、不作の時に食料を持ち込んだため救世主の様に扱われていたらしく憧れの的だとか。
人数が多いためトーナメント戦で試験を行なったが、一人気になった奴がいた。三河から来た漁師の次男坊らしい。三番隊隊長の兵藤を下して隊員入りしたソイツには武藤と名付けた、小柄ながらも最後まで諦めず粘り強い相撲を取った武藤を奇兵隊の皆は歓迎した。
隊の振り分けは1番隊2番隊が10名づつと、今回加入した武藤が3番隊隊長で4番隊隊長が兵藤だ、各30人づつ隊員を任せる事になる。残り20人は俺か犬飼隊の遊撃に組み込まれることになる。基本的には5人一組で小隊としてその隊の組み合わせで構成される。たまには隊員を入れ替えて適性を図っていきたい。
いきなり30人を任される武藤は苦労するだろうが、古参の隊員達がフォローしてくれるだろう。
俺達は行軍訓練も兼ねて徒歩で奈良に向かう、新人がへばっていたのと日が暮れてきたので、途中の名張の服部川周辺で野営する事になった。やはり農家や漁師の息子達には山道はきびしいらしい。
「どうだ武藤、山道を歩くのも中々堪えるだろう?」
「はぁ はぁ この位でへばって居たら何しに村を出てきたのか、わかりゃしない。若様、俺はまだやれます」
「その心意気は買うが後ろの連中を見てみろ。皆と足並みをそろえるのも必要だぞ」
いい機会なので少し話したが、事故で怪我した父親が回復するまで何か実入りの良い仕事は無いかと、尾張地区まで出稼ぎにきたらしい。中々の孝行息子だな、俺なんか親より先に死ぬ親不孝者だ。コイツは気にかけておくか。
翌日の昼過ぎに奈良に到着し、朱里さんと11月の予定について話合い領主会議の日程を詰めて行った。麦の種蒔きが終わるまで移動出来ないとの事で、11月下旬に伊勢に来る事になった。犬飼隊の5人に熊野さんへ連絡を取ってもらい、残る隊員は一月こちらの警備隊である物部隊との合同演習を行なうことにした。
朱里さんの話ではここに住む住人は元々大阪の岸和田方面(貝塚市)に済んで居たが、九州の伊佐一族に連なる。高木・高田氏に追われこの地に来たらしい。その苦労を知って居るため、逃げて来た者や旅人を手厚く持て成す習慣が有り、助かったと朱里さんは言っていた。
大阪市の有る場所は今現在ほぼ河内湖と言う湖の底で、現代で言う所の大阪城の有る辺りから住吉神社のある辺りまで小高い山で半島ができていて、半島の先端は難波岬と呼ばれているらしい。
一応、東大阪市に当たる所に陸地は有るが湿地帯で奈良は天然の要塞となっているとの事だ、まあ対人戦闘に限る話だけどな、大阪南部や兵庫には戦闘民族が住んでいるのか? 九州に行くのに瀬戸内海を使うのは危険だな。戦国時代よろしく海賊でも居るのだろうか?
翌日、合同演習を見せて貰った所、物部隊は強かった。隊長の阿部さんの指揮する魔法部隊が印象的だ、水を蛇の様に動かして打撃(本来なら貫通)を与える水蛇は盾の防御をすり抜けて攻撃して来る。水のある場所でしか使えない拠点防御用と言っていたが十分に脅威だろう。
奇兵隊にも魔法部隊を配備すべく奈良の人から募集し20人の人員を得て1~4番隊に五人づつ割り振った。魔法をレジストする人間が居ないとその隊は全滅するからな。
俺も水魔法を習得すべく練習したが、これがまた難しい。川辺での合戦で使えると思ったが、流れの有る川の水を制御するのは無理だろうな。流れに逆らわず魔力を流したら水の流れを早く出来る見たいだ、川の底を深く掘るタイプの治水工事に使えそうだな。是非この水魔法は習得したいな、治水工事だけでは無く色々と応用がききそうだ。
この事は突き詰めて質問してみよう。阿部さんとブレインに朱里さんを呼んで相談してみた。
「阿部さんは魔法を使う時、何か工夫をしてますか?」
「私は、イメージを、し易いように、言葉を使いいます。ちなみに、水蛇の場合は、水よ憎き敵を穿て、ですね」
「要するに詠唱が必要てことやなぁ」
「言霊ってやつかな?」
どういった言葉が効果的なのかはまだ研究中らしい、あと陰陽五行についても研究されている。五行とは
火・水・木・金・土の五種で太陽と月が陰陽にあたるのかな?
まんま曜日やんけ大丈夫か? まず、金てなんだ?
金属って土の延長線上に有るんじゃないのか、自在に金属を操れたら鍛冶師は職を失うな……
「朱里さん、金属性ってなんだと思います?」
「う~ん、土に強くて、水で錆びるちゅう思想から、土と水の間に属しとるな」
陰陽道には三すくみと言うか、じゃんけんみたいな力関係があるみたいだ。
話を纏めると木>火>土>金>水>木の並びになった。
木は火に弱く水で成長する
火は木に強く土をかぶせれば消えるとか。
うしおととらだと金属性で雷使ってたよな、雷は水には流れるが土で遮断されるとか?
ん?逆か、不純物の無い水には電流は流れないと聞いた事があるな。
取り合えず電気属性で進めていくか。電気属性を提案し試しに使ってみた所、二人の顔は引きつっていた。
「それ……どうやって、使えるようになったん?雷浴びたとか?」
どこぞの暗殺者一家じゃあるまいし、そんな事有る有る訳ないだろう。
俺は静電気の発生から発想して、その後永遠と塩化ナトリウム(塩)を塩素とナトリウムに電気分解させる拷問?を受けたと中二病ぽく説明した。今では携帯充電器の称号を得たぞ。
「ほんま無茶するなぁ、そや残ったナトリウムは分解し切れずに水酸化ナトリウムになっとるはずやから、それ水に溶かすと酸素系漂白剤が作れるなぁ、絹とか漂白するならそっち使った方がええで、それと塩素系漂白剤とは混ぜるな危険や」
「ああ、大丈夫だよ子供の時に混ぜて死に掛けた事有るから二度としない」
やるなと言われるとやりたくなるのは人のサガだろうか?
「アホやわぁ~、ここにアホがおるわぁ~」
まあ、俺がアホで有る事は否定できないが二度も言う事はないだろう。それはさて置き魔法の研究はこれから進めて貰える事になった。
「朱里さん、京都の方はどうなってるんですか?」
「京都はウチの地元やから、気になって街道整備して県境まではいったんやけど、巨椋池ちゅう湖が有るなぁ、その周りは湿地帯で山椒魚の化物と鬼がでるなぁ」
鬼か~確かに平安時代まで居たとか聞くけどな、聞く話によるとオーガタイプではなくゴブリンタイプだそうだ、所謂餓鬼だな。オーガタイプは桃太郎伝説で有名な岡山かな?
その後の話合いの結果、明日から合同演習で京都方面に行く事になった。
翌日、北に向かい出発する。北に30kmほど進んだ所で県境周辺に出たので野営する事にした。確かに入り口周辺は木津川・宇治川・桂川などの流れが途中で混ざり合い湖が出来ていた。暫くは湿地帯の埋め立てをしながら周辺の魔物の調査だな。
湖の近くを散策してると1m位の山椒魚がいた。アレ旨いらしいな、現在だと天然記念物で調理すると逮捕されるな。山椒魚は動きが遅いので尻尾の攻撃にさえ注意すれば簡単に狩れた。オークみたいに主みたいな奴が居ないといいが……
早速調理してみると、鶏肉みたいなあっさりした味でほのかに山椒の香りがするな。今回は塩焼きにしたがタレ焼きもいけるかな少し作っておくか、と言うか調子に乗って狩り過ぎた。
保存食も作って置こうか、干物にしておけば水で戻して鍋の材料とかになるだろう。
翌朝、周囲の喧騒で目覚めた。何が起こったのだろうか?
「兄貴、山椒魚の干物が盗まれてるな」
そう藤堂に言われてみると2~3匹位足りない気がする。まあ、食べ切れなかったから干物にしてたから別に良いんだけどさ、誰が盗んだのかが問題だな。居ると言う噂のゴブリンかな?
精鋭部隊で斥候でも出してみるかな、俺も興味が有るから行ってみようか。
漂白剤を混ぜると塩素が発生する。塩素と血中のヘモグロビンとの結合比率は酸素の400倍で吸い込むと息が出来なくなるな、良い子はマネするなよ。これは経験者からの警告だ。
仁の称号「エロの伝道士」「携帯充電器」もっとましな称号は無いのか?
次回は意外な犯人だ、みんな竹槍は持ったか?




