43話(2/2) くくりの涙
先回の話の続きです。
熊野暦10月中旬
熊野神社でプリンの試食を済ませた俺は、くくりに袖を引かれ境内の奥に連れていかれた。何か相談が有るようだ。
「仁様、今年は豊作でしたが、来年もそうとは限りません、どうしたらよいのでしょうか?」
「不安なのか?」
「はい」
くくりの住んで居た岐阜地区は、去年は凶作で口減らしが有ったそうだ、俺達が支援してその数は少なかったが、ゼロではなかった。伊勢も稲を実らせる事は天音さんの奉納舞で何とかなるが、台風とかで倒れた稲を修復する事は出来ない。人の生活は自然災害との戦いだ。
それは、どれだけ科学技術が発達しても変わらない事を、子供の時に見た東北の津波の映像で知った。
どうしても勝てない相手が居る。だから備えるのだ、その時その時の人間の英知を結集させて・・・
形有る物はいつか壊れるとか、色褪せない色は無いとか、物分りの良い事を言うつもりは無い。俺は馬鹿だから壊れれば直すし、色褪せたら塗り直すだけだ。
取り合えず、米の備蓄はして置こう。伊賀か奈良に俺が出した儲け(米)を分散して置いとくとかかな。災害は地域差が有るから、リスクの分散はして置いた方がいいだろう。奈良がいま正にその状態だが、モデルケースを見せれば安心するかな。
やはり現代と同じく摂取する穀物の多様性が必要になるのかな? 米がダメでも麦を食べれば良いじゃない。そうめんやうどんの乾麺も作って置くのも効果的か? 岐阜の揖保の糸と奈良の三輪そうめんは有名だ。
実はアレ、うどんを細く伸ばして乾燥させただけだから、作り方は省くぞ。
華々しい日本の食文化に貢献しようじゃないか。俺はくくりを安心させるべく、以前作った石かまどでパンを焼き、それにこの前入手した橘のマーマレードとバターをたっぷりと塗って差し出した。
「まあ、食べてみてよ。米以外でも美味しい物は有るからさ、麦なら米がダメになっても春には取れるだろ?」
くくりはパンを一口大にちぎり、口の中に運ぶと固まって居た。俺が旨いかと問うと、激しく首を動かして答えた。そして頬には一筋の涙が・・・
「仁様は、どうしてもう少し早く私の前に、現れてくれなかったのですか?」
「ど、どうしたんだ? くくり」俺は何かを間違えたのだろうか?
「仁様が居れば、私の友達の花ちゃんや菊ちゃんが、死ななくて済んだかもしれないのに・・・」
「ごめんな、俺は物語の英雄見たいに、困ってる人全てを救えないんだ。でも、もう少し待ってて欲しい、必ずみんなが飢える事の無い世の中を作って見せる。俺一人じゃ出来る事は限られるだろうから、くくりも助けて欲しいな」
「私がですか?」
「くくりだけじゃない、みんなで力を合わせて頑張るんだ。そうすれば明るい未来はきっと来る」はず
「はい、誠心誠意お供します。」そう言って見せた顔は、ここに来てから初めての笑顔だった。
はあ、大口を叩いた以上はやるしか無いか、少々面倒だがくくりの笑顔のため頑張るとしますかね。西奔東走なんて柄じゃないが、期待された以上はやるしかないでしょ。
只今、京都に貝塚が無い事の事実確認中しばしおまちを、人っ子一人住んでない筈は無いと思うのですが・・・
言い切らない所が、仁のヘタレな所なので男前ポイントは上がりません。




