43話(1/2) 伊勢地鶏のプリン
この時代にブロイラー種がいる筈もなく、全て地鶏です。どちらかと言うと軍鶏に近いのかな?
熊野暦10月中旬
少しずつ寒くなり、もう一枚何か羽織る物を用意しないとなと感じ始めた頃、ゆうなが俺の住む離れにやって来た。
「仁、プリンを作ったから試食するです」
そう言えば作り方を教えて居たな、プリンは卵を牛乳で割り、糖分は蜂蜜を使用した物になっている。少しパンチが足りないが、バニラビーンズが無いからしょうがない。十分に旨いと感じるな。
俺は頼まれれば料理をするが、基本的には料理は人が作った物を食べるのが好きだ、まだ食材も乏しく素人が代用品を使うと碌な事にならない為、大半が俺が作り、出来る物はくくりやゆうなに任せているな。まあ職業が大工の奴が日曜大工をしないような物だ、間食位は自分で作ってもらいたい。良い花嫁修業にもなるだろう。
「いいんじゃない、結構イケてるよ」
「何か物足りないです、何とかするです」コイツ以外に拘るタイプか? バニラに変わる代用品か・・・
梅干の種の中身でも使うか、通称天神様と呼ばれる種の中身(仁)は、学業の神と呼ばれる菅原道真が好きだったらしく、大宰府天満宮には梅干の種を奉納する場所が有るらしい。杏の種の中身は杏仁だな、本当はこれを使いたかったが杏はまだ見つけていない。
さあ作って行こう、ゆうなに梅干の種をすり潰して貰い、その間に俺が卵液を作っていく(卵3個、牛乳360g、蜂蜜90g)、隠し味に味噌を使いコクを出す方法もあるので両方作って見るとしよう。味噌県民の、ゆうなの口に合うかもしれない。
ちなみに、牛乳を生クリームに変えて作ると口当たりが滑らかになるが、バターを食べてる様な物なのでカロリーを気にするなら牛乳と半々位にした方がいいな。
卵液に梅干の種のすり潰した物を入れ、適当な大きさに切った竹筒に入れて蒸し器で蒸す、蒸し器は竹で編んだセイロを使用しているな、この時注意する点は、せいろの内部温度が100℃を越えると、すが入る為蓋を少し開けて置く事と、プリンに水が入らないように何かで蓋をする事だな。今回は切った竹の上の部分を使用した。
本来、湯煎をした状態でオーブンで作るべきなのだが、卵に含まれるタンパク質が固まれば良いので、温まれば何でもいいな。
蒸す事20分プリンが出来上がった。荒熱を取った後、冷却魔法で冷した水に竹筒を漬けて冷やしたら完成だ。一気に冷やすと表面がひび割れるから気を付けろよ、まあ自分で食べる分ではそこまで気にする必要はないが、ゆうなの将来のためしっかりとした作り方で教えておこう。
適当に冷えた所で試食してみよう。梅の種を使った物は杏の近類種だけ有って良い香りがする、バニラの様な甘い香りではないが、風味付けには十分だろう。
そして、味噌味のプリンなんだがコレが旨い、微妙な塩味が甘みを引き立てているが、味噌の味がプリンの味を阻害する事無く、独特の風味を出している。
「仁、これ何入れたですか?」
「味噌だな」
「な・・・ 何て物を入れたんですか、でも美味しい」
「流石味噌県民、味噌には敏感だな」
この発言には、ゆうなもイラっとしたらしく激しく抗議してきた、曰く味噌が有名なのは三河で尾張地区はそうでもないとか、実家の味噌汁はあわせ味噌だとかだな。でも合わせてるんだろ? 一緒じゃないか? まあ俺の実家も合わせ味噌だが・・・
確かに、徳川家康は味噌のイメージが有るが、織田信長は甘党のイメージが有るな、家康も東京の八丁掘りでも八丁味噌を作っていれば、ここまで愛知県がネタにされる事は無かっただろう、何故しなかったのかは、日本料理史に置ける最大の謎だろう。
そんな言い合いをしていると、エキサイトしたゆうなが悔しかったら自動車で世界を席巻して見ろと、のたまった。
ほう、それは聞き捨て成らないな、俺はゆうなの頬を両方に引っ張りこう言ってやった。
「そんなに自動車が自慢なら、名古屋でF1開催してみろよ。 片側5車線なんてキチガイ道路を持つ名古屋市ならば、モナコよろしく市外コースも出来るだろう? ほら、どうした? 出来ないのか?」
「き~ ああ言えばこう言う、ムカつくです」
「ゆうなちゃん・・・」
くくり何時からいたんだ? このやり取りを人に見らると恥ずかしいな。あまりゆうなを、おちょくるのは止めておこう。少し冷静になった俺達は話題を変えることにした。
「くくりも、プリン食べるか?」
「これがプリンですか・・・」
くくりは、未知の食べ物に少し途惑っていたが、一口食べると恍惚の表情を浮かべ「美味しい」と小さな声をあげた。くくりのお墨付きも頂いた事だし、熊野神社に持って行き天音さん達にも食べてもらおう。
天音さんと、うずめにも好評だったので、ゆうなが作れる事を伝えた所、今度みんなで作って建設中の伊勢神宮に差し入れしに行くと言っていたが、どうなっても知らないぞ? 石鹸の時みたいに地獄を見る事になるだろうな。人が良いと言うか、脇が甘いと言うか、まあ利益には繋がるからだまっておこう。
生産性の事を考えると、日持ちのする物に関しては奈良に案件を持って行った方がいいかもしれない。奈良の銘菓ってなんだ? 鹿のふんか? アレ何で出来てるんだろうか、今度朱里さんに有ったら聞いてみよう。
杏は、この時期にも有るかもしれない。桜と桃は確実に有る。
味噌プリンは上記のレシピに味噌を大匙一杯位入れると出来ます、生クリームを入れるかどうかはご随意に
ゆうなは、仁の事をどう思っているのだろうか? 何だかんだ言って頼れるお兄ちゃん的なポジションを獲得してるのかな? 作中のケンカは三重県民と愛知県民に有りそうだなと思い書きました。
愛知県の豊田市に日本有数の自動車メーカーの本社が有り、三重県鈴鹿市に日本有数の自動車メーカーのテストコースが有り、そこでF1グランプリが開催される。




