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39話 神器製造 八咫鏡偏

 熊野暦9月中旬


 熊野さんにこっぴどく叱られ、例の神輿も伊勢市での使用は禁止されてしまった。勿論うずめを乗せるのも禁止だ。しょうがないから山間の集落(津市美杉村)でこっそりと使用しよう。とりあえず北畠の蔵に神輿は封印しておいて、ころあいを見て集落に持ち込むとするか?


 確か美杉村のごんぼ祭りは建国記念日の2月11日だったな。


 今度朱里さんと相談して奈良でも何か催し物をしようかな? あっちの暦はどうなってるのだろうか一度そちらのすり合わせを東海近畿の領主を集めて相談しないといけない。


 さて一つ問題が有る、今回の騒動の収集を付けないといけないのだ。

 天音さんの記憶が混濁している内に悪い夢でも見ていたと錯覚してもらおうと言う訳だ、人の噂に戸は立てられ無いとは言うが事実を元にしたフィクションを作って見ようと思う。主役はうずめで舞台演出と小道具は猿田彦が行なう、ほぼ伝承通りの天の岩戸を演劇で広めて行こうと思う。実物を見てたのは100人位なので各地で興行すれば噂の伝達より早く誤魔化せるかもしれない。


 細かいところまでは知らないが、祭りが気になって天の岩戸を少し開けウズメにこれは何の騒ぎだとアマテラス様が聞いたら、鏡を見せてもっといい神様が現れたからあんたクビと言って騙したんだよな? しかもその時のウズメの格好はほぼ全裸と言う酷い話だ、その時使った鏡が伊勢神宮のご神体の鏡だと言われている。


 この鏡だけは俺が作り、演劇の東海三県+奈良公演が終了次第伊勢神宮に奉納しよう。


 さて、猿田彦がうずめに振り付けなどを指導している内に俺は鏡を作るとするか、神器だし気合を入れないとな、神器の定義って何だ?


 良く読むファンタジー物の小説だと普通は1個しか付かないエンチャントが複数付いているとかだった気がする。ここは3個の鉱物に別々のエンチャントを施し合金にする事にしよう。


うずめがたまにやるおまじないに効果が有る事判明している。


 作物が美味しくなったり、傷が治ったりする。

 純粋な願いを元に魔力を込めるとなにかしらの効果が有るようだ。

 今の所奇跡と言うレベルの物を起こせるのは、うずめだけなんだけどな。


 以前青銅鏡を作った時に何かしらの効果が有ったのでそれに期待したい。

 身も蓋も無い事を言えば家の天音さんが毎日拝むんだ、そのうち神器と呼ぶに相応しい物になるだろう。


 まず海が近い伊勢でも腐食しない金属が第一条件だよな。

 色んな鉱物が俺の目の前に有るが何が何やらさっぱり解らん。

 奈良に行って聞いてみる事にした。


「朱里さん、どれがニッケルでどれが亜鉛か解る?」


「え~っと、ニッケルはこれやな。亜鉛は無いなぁ、奈良に有るさかい持っていき、所で何に使うん?」


「伊勢神宮のご神体を作ろうと思ってさ、黄銅か白銅をメインに考えてるんだけど何か良いの無い?」


「それなら三つ全部まぜたらええ 銅55%亜鉛27%ニッケル18%位やな、別に硬くのうてええんやろ」


「鏡だし別に良いかな、できれば純金か純銀が良かったんだけど……」


「金銀は甲賀か勝浦で取れるみたいやな。でも今から掘るとなると間に合わんやろからそれで我慢しとき、魔法込めるならそれでも十分やさかい」


 話によると魔力は電気と同じような性質が有り、金属でも通り易い物とそうでない物が有るらしい、熊野神社の神棚は木製だから神器化してないのか? 竹は電球に使われる位には電気との相性は悪く無い。何故エジソンは日本産の竹を電球のフィラメントに使おうとしたのかまでは解らんが、中国の孟宗竹じゃ相性が悪いのか?


 竹槍が魔法との相性が良いと聞き中々手放し辛くなった。

 このまま竹槍+99位の物を作り、都市伝説と言われる実際にB29爆撃機を落とせる位の竹槍を作るのも有りかもしれない。


 ケルト神話の神槍はやどり木製だが日本の神槍は竹製になるのか?

 やはり金属がいいよな。電気抵抗の少ない純金製か?


 早速、鏡を鋳造してみる事にした。

 銅には変わらぬ美しさ(対腐食性)亜鉛には厄除け(回避率アップ)ニッケルには材質強化を願い魔力を込め溶かして作った。


「何かデカく無い? 鏡と言うより盾なんだけど……」


「八咫鏡の咫は人指し指と親指を広げた大きさでな。約18cmで、その八倍の144cmの円周で直径46cmちゅうのが定説や」


 へ~ そうなんだまあ舞台演出にも使うしこの位の物でも良いか。


「さあ、磨くとするか。朱里さん水銀持ってない?」


「アマルガム法で磨くんかいな、まあ適切やろうけど気いつけぇや。そや梅のクエン酸使うとくすみが消えるでぇ」


 水銀は他の金属を溶かして結合し固まる性質が有る。

 それを利用して綺麗に磨こうと言う寸法だ、半練りのワックスみたいな状態の物が使い易いのでそれを梅の実につけて消しゴムのようにこすり付けていこう。


 某ロボット系シュミレーションゲームの敵組織の名前が格好良かったから、ネット検索して知っていたのはここだけの秘密だ。男は誰でも女の前では格好付けたがる物だろ。


 何とか出来たか鏡を水平にして目視した感じでは平らだな。

 職業がら和包丁の磨き具合を見るから普通の人よりかは自信が有るぞ、欲を言えば特殊な計測器で見ないと誤差が解らないくらいの物を作って未来の人間をビビらせて見たいが、これが今の技術の限界だな。


 勘を頼りにそれをやってのける町工場の職人が未来には居るが、今の時代にはそこまでの職人は居ない。その道何十年で人はその域に達するのだから職人を育てればこの時代でも可能かもしれない。


 奈良湖と言う巨大な湖のお陰で農業用地の少ない奈良は工業系で生計を立てるのも有りかもしれない。現代の奈良に工業地帯はないので、すぐ愛知県に抜かれそうな予感がするがその時はその時で何か考えよう。


「朱里さん有り難う、おかげでいい物が出来た」


「うわっ…… なんやそれ、仁はん気合いれすぎやで」

 一般人が引く位の物が出来たか、とりあえず満足しておこう。


「朱里さん、もしかしたら剣の方も作るかもしれないから硬い合金が有ったら教えて」


「超強黄銅位やな、掘削機械に使える高力黄銅に魔術的強化した物ならすでに奈良で使ってるさかい、要る時はゆうたってくれたらええ」


 超合金は既に存在した。

 銅が主原料のため熱(1000℃以上)に弱い特性が有るが、俺が鉱物ごとにエンチャントを付けてたのをヒントにその問題も解決出来そうの事だ。今度ゆうなを連れてきて真のオリハルコン製造の瞬間を見せてやろう。魔法技術は奈良の方がかなり進んでるな、やはり学者肌のマレビトが居るのが大きい、落ち着いたら俺も魔法を教えてもらおう。




 俺が伊勢に帰ると舞台の準備が出来ていた。

 アマテラス役は天音さんが拒絶したため代役でくくりがする事になっている。

 鏡に魔力を通すと光る性能が有るので、魔力操作に自信の有るくくりが抜擢された。


 舞台はおおむね好評だった。

 みんな娯楽に飢えてるからな、今後も題目を考えて定期的に公演することにしよう。


 一座の名前を決めないとな……

 猿田彦の猿とうずめ(細女)から女の文字を貰って、猿女君か?

 字面が悪いな佐留女君(さるめのきみ)にしよう。


――


 こうして神事の前座に行なう神楽や舞いを司る集団佐留女君が出来上がる。

 猿田彦とうずめが一緒に居る事が多く後に夫婦では無いかと言われるが定かでは無い。

 この集団の始祖がうずめで有るのと名付け親が仁なのは間違いない。

 能の前身の猿楽の祖で有るのは言うまでもない。


 後世の歴史家に猿田彦は、天津神が国津神の下に付くなど有り得ない、きっと卑怯な手を使ったに違いないと風評被害を受けるかもしれないが又別の話で有る。

 この手の神話がごちゃごちゃして居るのは全て仁の悪ふざけが原因で有る。




 おまけ 「奈良での皆既日食の対応とか」


「朱里さん、この前皆既日食が有ったじゃない? こっちは如何だったの?」


「なんもあらへん、自称太陽を司るうちがおるさかい。文官の安部ちゃんは血相変えとったけど、原理を説明したら納得してくれたで、町の皆にも今日は私からのご褒美やゆうて誤魔化したわ」


「こっちは、うずめの姉さんが天の岩戸に引き篭もったタイミングで日食が起きたから大変だったよ」


「なんや伊勢にはアマテラスさんがおるん?」


「天音さんと言うんだけど既に現人神(あらひとがみ)として崇められてる」


「ああ、一人で数kmの広域魔法を使う化物がおるゆうとったな」


「化物って…… 本人の前で言うなよ」


「ほんでそれの後始末の為に伊勢神宮建てとるんかいな」


「伊勢学校とおかげ横丁も併設する予定だな」


「さき越されたけど、ウチの伊勢国作候補の中臣(なかおみ)使ってもええで」


「その時はお願いするかも、近いうちに領主会議やるから日程つめといて」


「了解や、安部ちゃんに相談しとくわぁ」


 と言う話が間に有ったとおもいねぇ







八咫の鏡の逸話から今後仁の持つレプリカと通信機能が付くかもしれない


仁はフルメタルパニックを原作では無くスパロボで知ってる世代、動力の問題さえ無ければ動く棺桶と呼ばれる装甲騎兵ボトムズを作りたいと密かに思っている


うずめの名前を平仮名にしたのは失敗か、読みやすくするには不自然な句読点が必要になるがもう後戻り出来ない位にうずめが出ている


伊勢の猿田彦神社に併設されているのが佐留女神社なので当て字を使っています

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