31話 必殺技を考えよう
ほぼ日常回
熊野暦6月上旬
熊野領各地に設置された養蜂箱から蜂蜜が採取された。
中には取れない箱も有ったがそこは下手な鉄砲打ちゃ当たる方式でカバーした、取れた蜂蜜は熊野邸に集められる事になった。
「意外と取れない物だな」
「こんなもんでしょ」
量にして30ℓ程(一斗缶2缶)の量だ、蜂の巣は遠心分離にかけた後巣箱に戻しておいたので秋口にまた取れるかもしれない。
あんこを作る際にみりんを混入して蜂蜜の消費を抑えるとして、井村屋の主力商品の農村の母を何枚市場に流すかが問題か? クッキーに使用する場合草加せんべい位の大きさでも大匙一杯も使わないのでかなりの量が出来るな。
「仁と」「天音の」「「30分クッキング」」
「今日は農村の母を作ります」
「以前作ってくれた物ですね」
レシピ(薄力粉50g バター15g はちみつ15g あんこ適量)※あんこを入れない場合蜂蜜の量は倍
これの3倍量で作っていこうか、まずバターを溶かして小麦粉となじませた後蜂蜜を入れて麺棒で伸ばす、伸ばした生地の表面にあんこを塗りロールケーキの様に巻いて行き、適当な厚さに切って170℃位の温度で10分強焼いたら完成する。
「問題はどうやって焼くかが問題なんだよね」
オーブンシートが無い、しょうがないから水を含ませた木の板にバターを塗り生地を並べて以前作った石釜で焼いて行く事にした、木の板は何回も煮沸しないと木の香りが着くので気をつけろよ。
「意外と簡単に出来ますね」
「まあね、これを大量に作るのが問題なんだ」
「この前の石鹸を思い出しました」
なにかトラウマになって居るみたいだな。
何はともあれ完成だな、本当は生地の中にあんこを入れたかったが大量生産するならこの作り方がベストだろう。
「何かいい匂いがするです」
「食欲をそそられます」
「うずめもたべる~」
匂いに釣られてみんな来たようだな。
「俺はお茶でも入れて来るよ」
今回使用するのは柿の葉を乾燥させた柿の葉茶だ。
「おい、俺の分は?」
「ごちそうさまでした」
結構な量が有った筈だが、うずめはほっぺたがリス見たいになってるし……
こうして農村の母は完成した、製造販売は北畠の農家のご婦人を指導して行なう事にした。指導は罰ゲームとしてゆうなとくくりにやらせよう、販売の方は石鹸の販売で馴れているだろう、天音さんが適任なんだけど仕事が有るから熊野町から動かせない。鹿車も出来たので暇な日に様子を見に行く位は出来るかも知れない。
あと麦の収穫もされて居るので伊勢市に麦が集められビールの製造が始められた。北畠で取れた麦は主に製菓用に回される、こう考えると月に1000枚弱年間で1万枚位が限度かな蜂蜜が余るな。
北畠の狩猟組合の名物は蜂蜜酒にするか、世界最古のお酒と呼ばれる蜂蜜酒は蜂蜜に水を入れて放置と言う簡単な作業で出来る、急ぐ仕事でもないし酒が出来たら北畠の狩猟組合をオープンしよう。
今の所狩猟組合で出している依頼は食用になる草木の採取、油の材料になる胡麻や椿の実の発見、鉱物採取の3点だな
決め事も済んだし名古屋に行くついでに御在所の信長の所に行く事にした、面倒を見ると言った手前名古屋には足しげく通っている、そのつど信長の所に行きお供え物をしたりか挑戦していが……
御在所に行く途中猿田彦に合った、最近ロッククライミングに嵌っているらしい。お陰で簡単に登れるルートを発見出来た。
「旦那も懲りませんね」
「諦めの悪いのが取り得だからな」
今の所信長とは連戦連敗だ、最近ようやく動きのパターンが見えて来るようになった。相手からすると猫にじゃれ付かれている様な物かもしれないが、俺に取っては良い特訓に成っている。
「お~い、信長~」
呼ぶと信長が此方に顔を見せた、呼ぶと来るとは少しは友情の様な物が芽生えたかな?
さて始めるとするか、俺は竹槍に魔力を込め強度を上げ体勢を整えると信長が突っ込んで来た、オークと違い動きの微調整をして来るので大きく避けないといけないのが難点だが、一度避けてしまえば急な方向展開は出来ないので弧を描き戻って来る。こちらから突っ込んで行きギリギリで避け交差する瞬間竹槍で引っ叩く。
「やってる事は、狩猟ゲームと同じだな」
回復薬が無いのが痛い所だが……
あと倒すとしたら火力が足りないな、実際に狩るとしたら20人規模のレイド戦になるんじゃないかな?
奇兵隊全員で掛かって犠牲を出して何とかと言う相手だ、今後この手の相手と戦う機会は増えるかもしれない、今の内に馴れておこう。
「あ~ おに~ちゃんだ~ うずめも遊ぶ~」
何故ココにうずめが居る。
「こんな所に居たですか」
「仁様、探しました」
くくり達も来たか麓の温泉にでも遊びに来てたのかな?
さっき信長に睨まれた、子供の躾はしとけと言いたいかもしれない。
まあそう怒るなよ、うちの子達は強いぞ。
「いくよ~」
うずめが俺の制止を待たず突っ込んで行った、俺もカバーに入るため慌てて駆けて行く。
「援護は任せるです、行くよくくりちゃん」
「了解」
うずめとくくりに纏わり付かれ信長は途惑って居る様だった。さっきからうずめが叩いているが厚い毛皮に阻まれ、ぽすぽすと間抜けな音を立てていた。
「うずめ魔力は使えるんだろ、手に集中させると少しは変わるかもな」
「うん、わかった~」
うずめが攻撃し始めると信長は寝転がり気持ち良さそうな顔をしていた。
うずめの攻撃はマッサージ程度にしかならないようだ。
まさかとは思うが回復系の魔力を手に込めてないだろうな?
うずめのせいで、緊迫した状況がほのぼのした感じになってしまった。
信長も次はこっちと言わんばかりに体制を変えているし……
うずめの持つ人懐っこさは種族を超えるみたいだな。
「なんか毒気が抜かれたな、風呂入って帰るか」
「そうですね」
「うずめ様は?」
「飽きたら勝手に降りてくるだろう」
「じゃあ、あっしが見て置きますよ」
「じゃあ、頼んだぞ猿田彦」
俺たちは麓に降りて風呂に入ろうとしたら、何故一緒に入ろうとするとゆうなが騒ぎ出した。しょうがないじゃないか湯船は一つしか無いんだし。
うずめやくくりの脱ぎっぷりを見習ってほしい物だ、
取り合えず前が隠れる手ぬぐいを渡して入る事で合意した。
「おかしいです、絶対におかしいです」
「そうか? 今頃海に行けば海女さんはほぼ全裸だぞ?」
機動性を重視してな。
「仁、水着を作るです」
「素材は? イタヤ貝の貝がらで良いなら作ってやるぞ」
色の付いたホタテみたいな貝だ、胸は隠せるだろうが下は知らん。
「何をバカな事を言ってるです、ちゃんとした物を作れです」
「麻の素材は伸縮性が無いから、サイドは紐になるぞ。泳いでいる内にアーマーパージしたいならそれで作るが?」
「くっ、アーマーパージは魅力的ですが水着ではしたく無いです」
その後、ゆうなと伊勢婦人会の手によってドングリの実を使用したボタンの様な物が発明される事になるがそれはまた別の話だ。
「ただいま~」
「うずめか信長は如何だった?」
「鹿さんとはお友達になったの~」
カモシカは分類上牛の仲間だけどな。
「それは良かったな」
俺はうずめの頭を撫でてやった。
本来の戦闘訓練は頓挫したが今度改めて奇兵隊の連中と演習しよう。
うずめ達を送り着けるついでに熊野さんに相談したい事が有った、攻撃の火力不足についてだ。最近くくりを真似てウエイトトレーニングを取り入れて筋力は上がっている物の人外相手では分が悪い、熊野さんに相談すると庭に鬼包丁を持って来た。
「仁、ちゃんと見とけよ」
熊野さんが鬼包丁を振りぬくと3m先の巻き藁が両断された。
「何ですかそれ?」
「カマイタチだ、話位は聞いた事は有るだろ? お前は魔法が使えるからもう少し効率的に出来るかもな」
いやいやカマイタチは少し切れるだけだって、色々と常識外な人だなホント……
でもコレが出来れば戦力アップに繋がるな、特訓メニューに加えるとしよう。
竹槍に魔力を込めて斬撃を放つと少しだけ巻き藁が切れた、何か斬撃を飛ばすと言うより槍の先端の延長線上が切れた感じがしたが、イメージが悪かったのかな?
「初回でそれだけ出来れば十分だろ、後は練習有るのみだ」
熊野さんは魔力を使わず放っていたな、それが出来ないと話にならないだろう、筋力の差なのか?鎌鼬は何らかの現象で生み出された真空が切断と言う事象を生み出すはずだ。力よりスピードが重視すべき項目だろう。
境内で練習しているとうずめがやって来た、「何をやって居るのか?」と尋ねられたので答えると驚きの返事が返ってきた。
「それなら、うずめも出来るよ~」
ゆうなから短剣を借りて来たうずめが巻き藁から距離を取り、
2~3歩急加速した後に斜め下から掬い上げる様に斬撃を放つと巻き藁を深く切り裂いた。なるほど蛙の子は蛙と言う訳だ。
この子の将来が不安になるな、頼むからムキムキマッチョに成らないでくれよ。
でも良いヒントは得られたな何も腕力だけで放つ必要はないもんな、今後は魔力有りと無しの二つのアプローチで練習して行こう。
試しに魔法のスペシャリストの天音さんに相談したら……
「こうですか? えいっ」
手刀を叩き込むと巻き藁が両断された、この人だけは絶対に怒らせない方がいいな。
仁の使う技は遠距離型の鎌鼬と中距離型の長槍の予定、後者はもう少し良い名前を付けたい
うずめの攻撃は今後、過回復による組織の破壊に期待しよう




