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29話 狩猟組合

主人公は家業の都合でドラフトマイスターの資格を持っておりビールの製造に関して一定の知識は有ります、ビールの製造期間は1ヶ月程ですが最短1週間で飲めるレベルの物が出来ます

 熊野暦5月中旬


 俺は猿田彦と共に伊賀の拠点に来ていた、この前仕込んだビールがそろそろ出来ているはずだ。


「旦那、今度は何を作るんで?」


「期待の所すまないが、普通の建物だ」

 最近猿田彦は俺の依頼する奇抜な物に興味を示している、曰くむずかしい物ほどやりがいがあるらしい。


「さて、出来てるかな」


 湧き水で冷やしている瓶から琥珀色の液体を掬い猿田彦に手渡した。


「うまっ、旦那何ですコレ喉ごしがかなり良いですが」

 炭酸は入ってるのかな?


「旦那も飲んで見て下さいよ」


 異世界だし未成年とか気にしなくてもいいか、現実世界でも隠れて飲んでいる奴もいるし気にするのも野暮だな。


「意外とイケるな」


 大麦ではなく小麦100%で作ったそれは苦味は少なくフルーティーな味わいで飲み易かった、プレミアムモ○ツの様な味だ、炭酸も入っているな蓋を開けたらそこから炭酸が抜けて行くのが難点だな、奇兵隊の連中も呼んでこの瓶は開けてしまおう。


「旦那、腕に赤い斑点が出てますね。最近見かけますが酒が呑めない体質ですか?」


「マジで旨いと思うのに酒に弱い体質なの?」


「大体酒だと2合位で倒れますね」


 ビールだと1ℓでノックダウンと言うことか、晩酌程度なら良いが飲み会には向かない体質だな、何か人生損した気分になったが安上がりで済むと思い納得するしかないな。


「ここに居酒屋兼宿屋を建てたいと思う、奇兵隊の拠点も拡張して猟師の寄り合い所の様な物も建てたい、支払いはこのビール飲み放題でどうだ」


「お安い御用でさあ 流石旦那太っ腹ですな」


 こうして猟師の互助会として狩猟組合の一号店が発足する、草花や鉱物の採取を常時依頼として獲物が取れなくても何とか食べて行ける保険の様なシステムと、大物を仕留めた時には一括払いも出来るが証書を発行して分割で支払う事を可能にして、町の間の移動を楽にする予定だ。


 紙の生産も軌道に乗って来ているのでようやく紙本来の使い方が出来るな、証書の偽造対策は割り印で対応する。奇兵隊のマーク(左右対称の稲穂に雀)の半分を証書に押し残り半分を組合側が照合して支払いをする方式を使おう。


 精巧に偽造された場合見分けが着かないが、帳簿を見れば異変に気付くので今後諜報部隊として活動するの奇兵隊にかかれば偽の組織は自然淘汰されるであろう。


 討伐依頼を出しても良いな、獣より人を狩る方が楽なので人気依頼になる。野生動物と違い拠点に行けば必ずそこに討伐対象が居るし、毛皮の採取を考える必要が無いので遠慮無しに攻撃が出来る旨い仕事だ、引く手数多に成る事間違い無しだ。少し可愛そうだが反抗勢力の討伐依頼は生死を問わずで行こう。


 今の所通貨は米だからな東海三県(三河地方除く)では専業で猟師をしたがる人間は減少傾向に有る、米俵担いで移動なんて正気の沙汰じゃないからな、この問題さえ解決出来れば狩猟人口は増えるかもしれない。


 多分日本国内にはまだまだ狩猟を主体とした縄文人と言われる人が居るので、その人たちに何とかこちらに移住してもらい生活基盤を作って貰いたい、店先に馴染みの深いであろう縄文式土器を飾る事で訪れやすい環境を作ろうと思う。


 今後伊勢と北畠に一軒づつと伊勢と友好関係にある尾張・岐阜・和歌山に展開していく予定だ、山野の多い岐阜と和歌山が実入りの多い地区になると思う。


 多分この分野では名草さん一人勝ちだな、まあ何でもかんでも伊勢の儲けにすると諍いの元になるから競合相手は居た方がいいかもしれないな。


 待つ事七日ほどで建物が出来上がった、猿田彦指示のもと奇兵隊の大工の息子が主体として作った残りのメンバーは尾張地区で開拓及び田植えの最中だ、何か特別手当を支払わないといけないな。


 こうして狩猟組合は出来上がって行く出来れば日本全国に進出を目指したい、九州までの移動の楽しみが増えるってもんだ、少年よ大志を抱けと昔の偉い人も言ってたしそれに乗っかって見るのも悪くない、苦労続きの異世界生活もだんだん楽しくなってきた。


 そういえば酒のつまみを考えないとな、伊賀はビールが主体だし枝豆の栽培もするかな、伊勢で流行りつつ有る牛肉料理を主体として行く方針でいいけどもう一つ何か特産物が欲しいな、やはりオーク肉だよな……


 この地方の燻製の仕方は主にスギの木を利用した物だ。保存法としては有用だが癖が強いため料理には向かないな、パルマプロシュートもどきでも作るか?


 生ハムの最高峰であるパルマプロシュートの特徴は清流の近くと独特の気候が必要になる、山間部に有る伊賀は夏暑く冬は寒い、清流の近くで作る事により川より流れる涼しい風を利用し一定の保存環境を維持しようと言う寸法だ、少し標高の高い所で作ることも検討しよう。


 製作期間が18ヶ月と長いのが痛い所だが楽しみは後に取っておこう、そうなるとオークの家畜化を真剣に考えないとな、品質向上を目指しドングリや栃の実で飼育したオークならば味の方も期待できるし突然変異で豚も出来るかもしれない、どちらかと言うと岐阜地区向きの仕事だな開拓が進めば岐阜地区の主要産業になりそうだな。


 今の伊賀地区では川沿いで米を作り川から離れた所では麦の栽培を予定している、麦の種まきは秋口なので今はレンゲを主体とした花を植え養蜂をしているな、蜂蜜の採取は6月上旬の梅雨入り前を予定しているが天候を見て5月末にするかもしれない、伊賀上野では主に農耕用ではあるが伊賀牛の生産に着手している。


 もう1~2押し何か有ればこの地も栄えるんじゃないかな、牛も生産する事だし闘牛(日本式)の興行をして観光誘致を検討しよう、まあこれは奈良に行った後の話だな。


 さっさと奈良に行きたいのは山々なんだけど、米の収穫の目処が立ってからになるだろうなこの辺りの行動は戦国時代と変わらない、本来ならば田植えが済んだら一度遠征できるのだがまだ米の生産が安定しないから今年は大事を取って9月までお預けだしょうがないから出来る事をやっていくとしよう。




 おまけ 「天音さんとデート?」


 伊賀から帰ってくると天音さん達も帰って来ていた。


「仁さん お帰りなさい」


「天音さん帰って来てたんですね」


「ええ2日ほど前に」

 聞く話によると7日ほど休みが貰えるそうなので、気分転換に遊びに誘ってみた。


「あ~ おね~ちゃんと楽しい事するんでしょ、うずめも行く」

 楽しい事と言うと何か卑猥な響きが有る様な気がするのは俺だけだろうか?


 しょうがなく天音さんとうずめの三人で遊びに行く事にした。場所は海を隔てた渥美半島だ、伊勢から近いこの場所は漁業を専業としている集落が有り、熊野領とは米との交換で付き合いが有る。大きな川がないため稲作はあまりしていない様だ。


「この辺りと名草さんの住む地域は暖かい気候で、常春の地と呼ばれているんだ」

 主に暖流(くろしお)の影響だな。


「へぇ、私は寒いのが苦手なのでうらやましいです」


 人間暖房器具こと天音さんだが、意識が途切れると魔法が切れるので毎朝寒さで起こされるらしい、寝る時はコタツに来る猫の様に熊野家の女子達が天音さんの部屋に集まるとの事だ。


「おに~ちゃん、ここに何があるの~」


「もしかしたら椰子の木が有るかもしれない」

 島崎藤村か誰かの歌が有る見たいだが、沖縄県の石垣島から椰子の実を流したら無事渥美半島まで着いたと言う事が有るらしい。


「椰子の実ですか?」


「この位の大きさの木の実だな」


「凄く大きな木の実ですね」

 天音さん可食部分は少ないからあまり期待しないでね。


「うずめ、がんばる」


 近隣住民に聞いた所、椰子の木は有るらしいが実はならない様だ、多分オスの木か気候が合わないのだろう。

 椰子の実自体は幾つか流れ着いているので、パームたわし(かめのこたわし)を作って貰った。たわしは椰子の実を適当な大きさに切って、針金や紐などで固定して繊維を叩いて裂けば出来上がりだ。


 熊野領では竹を裂いたササラと言う物が鍋磨きに使われている、へちまは探しても無かったので亀の子タワシを作って貰った。クラフト系の好きな天音さんも一緒になって製作に協力している。


「これ、お鍋を磨くのに調度いいですね」

 そうだろう現代でも現役で活躍している位だからな。


「天音さんの作った物は持って帰って良いそうですよ」


「どうしましょう、もう少し作って置きましょうか?」


「天音さんのお好きにどうぞ」


「おに~ちゃん 見つけた~」

 うずめが椰子の実を持って来た。


「これたべれるの~」


「食べれるがそのままじゃ美味しくないな」


「え~」


 現地の人に割って貰いココナッツに溜まった水を飲んでみた。

 ストローは頑張って土魔法で作ったぞ。

 三人で飲んでみたが側から見たら、うずめのせいで恋人同士のイベントと言うより仲の良い兄弟に見えるだろうな、味は少し甘いが微妙な味だ炭酸飲料を知った俺とうずめには物足りない味だ。


「私はこの味好きですよ」

 天音さんの口には合った様だ。


「おに~ちゃん、この白いの食べれるの~」


「食べれるが加工した方が旨いな、今度旨い物を作ってやるから我慢してくれ」

 今度、蜂蜜とココナッツパウダーのかかったドーナツを作ってやろう。


 椰子の実を見つけたら高額で買い取る事を町の人に言い含め帰ることにした。


「きれいな 夕日ですね」


「ほんとだ~」

 伊勢では山に夕日が落ちるからな、水平線に沈む夕日を見るのは俺もこちらでは初めてだ。


「何か願掛けでもしとく?」


「いいですね」 「うずめもする~」

 さて何を願おうか?


「何時までもこの幸せな日々が続きます様に」

 横を見ると天音さんの耳が真っ赤になっていた。


「じ…… 仁さんは、私達と過ごす事が幸せですか?」


「ああ、これ以上は無いと思うよ」


 どうしよう天音さんがそっぽを向いてしまった、何か間違えたのか?


「うずめも幸せだよ~」


「そうだよな~」

 うずめが居て助かったな、居なかったらこの沈黙に耐えられなかっただろう。






縄文人はアルコール耐性が有りますが、弥生人や渡来人の中には酒に弱い人が居るのが特徴です、ヤマタノオロチや鬼退治の序盤で酒を飲ますのは、両者が人だと仮定するのであればその時の名残とも言えます


明日は伊勢神宮と猿田彦神社に行って土下座してきます、人が居なかったら五体投地も検討しよう

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