27話 超合金を作ろう 企画偏
チタンは伊賀で取れます
コレを書いたのは1/7です
熊野暦4月下旬
名古屋市周辺の都市に当たる場所の開拓が始まった。今年は、確実に安全であろう小牧・犬山地区を重点的に行なうのと、一宮地区にひろがる濃尾平野の未開発地域を岐阜との共同開発と言う形で行く事になった。
なんでこの辺りの人達、川の中州か川の横に住んでるんだろうな。水には苦労しないけど毎年家か人は確実に流されているだろ。それを見越して今でも竪穴式住居なんだろうけどさ、用水とか作ったら内陸部に移住してくれるかな?
中州とは川から運ばれる土砂が堆積して出来た島の様な物だ、故に川と川の間に挟まれる。織田信長の居城で知られる清洲も今は中州だ。復元された清洲城も大概な場所に建ってたけどそれよりもエグイ、恐らく梅雨時期の洪水を利用して田んぼに水を張ってるな。それは賢いと思うが不確定要素が多すぎる。何とか安全に農業をして貰いたい物だ、そのためには成功例を示さないといけない百聞は一見にしかずという奴だな。
そうそう名古屋の大須観音周辺は洲じゃないぞ、元々別の所に祭っていた観音様を火事か災害が理由で現在の位置に移転して名前もそのまま使っているのが語源だ、元有った場所に大きな洲が有ったのだろう。
名古屋市の中心部は既に人が住んでるのと、市内を十字に結ぶ交易路が欲しいと言う狙いも有るが、正直庄内川が怖い。俺の生まれた平成12年に一度堤防が決壊してるらしい。昭和初期の話なら工事が雑だったのかなとも思わなくもないが、これが平成の話になるとかなり脅威に感じる。ましてやこっちは堤防など無い。どの位の被害があるか未知数だ、梅雨と台風の時期が済んでから開発する事にした。
しかしこう考えると人手が足りないな、三河方面から移住者募って見るか隣の芝は青く見えるとか言うし、興味の有る奴はいるだろう。
一宮から岐阜に向かう途中でへんな物を見つけた、ラグビーボールくらいの縞々模様をした半分腐った瓜だ。
「見た感じどう見てもスイカなんだがある訳無いよな……」
割って見ると中は空洞になっていたのでスイカではないな、取り合えず種を保管し近隣住民に聞いて見る事にした、真桑村(現穂積市)と言う場所に行き話しを聞いてみた。
「ああ、それは真桑瓜と言って漬物とかにすると旨いぞ」
マクワウリ…… メロンの原種か、俺は意外な発見に驚いた。
もしかしたらまだ見つけて居ない植物が有るかもしれない。
「こりゃプラントハンターも必要だな、狩猟組合をさっさと作ろう」
あとは春の七草とかは確実にあると思うけど、スズシロ大根と芹以外は見つけてないな、というか春の七草を言えない、後で熊野さんに聞こう。
これは愚痴なんだが、俺の実家って日本料理店じゃん、おせちも当然作る訳ですよ何処ぞのおせち見たいに足りなくてスカスカな物を作る訳には行かず、それは大量に仕込むんだ。余ったおせちは当然家族で消費する10日位かけて……
だから俺は生まれてこの方七草粥と言う物を食べたことが無い。世間様が美味しい物を食べてる時に我が家はおせち地獄だ、こちらに飛ばされて来てその地獄から開放されたのは救いの一つだな、どうしてもと言われれば作らなくもないが個人的には二度と見たくない食べ物だ。さらばおせち俺は食べたい物を正月に食うぞ。
さっそく北畠の里に向かい真桑瓜の種を植える事にした。
「おに~ちゃん、何植えてるの~?」
「果物?の一種だな、うずめがお祈りすると美味しくなるかもな」
分類上は野菜だが果物で良いだろう。
「ほんと~、うずめがんばる~」
この時より北畠の畑には「おいしくな~れ」と言って作物に手を向けて話しかける、うずめが目撃される様になる。
数日後熊野さんと天音さんが帰って来た。
「熊野さん様子はどうでした?」
「あっちは基本的に漁師町だったから骨が折れたぞ」
「今までどうやって生活してたんですか?」
「何か和歌山市辺りと交易してたらしい」
「もしかしてあの山岳地帯ぶちぬいて道を作ったんですか?」
飛行機の窓からしか見たこと無いが、和歌山県の大半は山だ。面積が広い分開発は鬼畜モードだ
「ああ」
マジか名草さんやり手だな、もしかしたら優秀な土木系の魔法を使う人がいるかもしれないな。
俺は天音さんと神社の境内に行き青銅鏡を作って見る事にした、こういうのはこっそり作って渡す物だが天音さんがフラフト系が好きなので後ですねそうだ。その顔も見てみたいかも知れないがこの分野で蔑ろにするとガチでキレそうな気がする。
「今日は何を作るんですか?」
「青銅を使って鏡を作ろうと思う」
「鏡?」
「あれ、無かったっけ? 顔や姿を映す物だよ」
さあ作ろうか、青銅は銅とスズの合金で主に岐阜からの輸入品だ。これは870℃ほどで溶ける、なんとか炭火で叩き出せる温度だ。これが紀州備長炭だと1200℃まで出る砂鉄なら溶かせるな。
今回は、銅2:スズ1の割合で作って見る。スズの分量を増やせば堅くなる反面もろくなる、溶かした青銅を土魔法で生成した鋳型に流して固めよう。本来なら密閉した物を使うべきのだが上部が開放している物を使用した、どうせ表面は研磨するし構わんだろう。
十分に冷ましてから砥石で削って行く、摩擦係数を減らす為に水をつけて研磨する中性洗剤も作っておけばよかったな。
「さあ、これを削ったら完成だ」
シャ~リ シャ~リ 削るる音だけが場を支配する。業がらこの作業は得意だ、一日の終わりに自分と向き合い包丁とともに自分の心も磨けと親父が言っていたな。禅の教えでも取り込んでいるのかもしれない。
「で…… 出来ました」
ひたすら鏡を擦り続けること1時間半、ようやく完成した。
少し気になる事が有ったのでもう一工程加える事にする、竹槍に魔力が込められるなら鏡にも魔力が込められるかもしれない。俺は天音さんの幸福を願い、鏡に魔力を込めたすると手に淡い光が宿り吸い込まれる様に鏡に消えて行った。
「天音さん、幸せを願い魔力を込めましたお守りくらいの効果はあるかも知れません」
「じゃあ私もやって見ますね、えいっ」
本職の人だからかなりご利益は有るだろうな、魔力は俺とは桁違いだし、もしこの世界がなろう小説だったら、この人は何処に出しても恥ずかしくないチート主人公になってくれるだろう。
天音さんの手に神々しい光が集中し鏡に吸い込まれていく。魔力が可視化されて解ったんだが多分大気中とかから魔力を引っ張って来てるな、道理で無尽蔵な訳だ俺も出来るかな?
熊野家の伝家の秘法とかじゃないよな、うずめと熊野さんの強さに説明が付くが……
待つ事10分ほどようやく魔力を込め終えたようだ。
「仁さんの安全とこれからの活躍を祈願しました、これを私だと思って大切にしてくださいね」
「はい、必ず大切にします」
この人どれだけ魔力込めたんだ、鏡自体が淡く光っている。もしかしたら神器のレベルなんじゃないか?
神器といえばこの辺りでは、伊勢神宮の八咫鏡と熱田神宮の草薙神剣が有名だけど、神社も神器も今の所存在しない。
いっそ作るか神器精製か、ロマンが有るな。悪ノリして天野シリーズも作っても良い、素材を何にするかだな……
――翌日
一日考えたが、使えそうな素材が銅しかないのが痛いな、適当な合金から作ってみるか。
たしか日本の硬貨はすべて銅貨だったな。
十円玉が銅の比率の高い青銅製で、五円玉が銅と亜鉛の合金、この二つが有事の際に大砲の砲に使える様な事を聞いたような気がする。
通称ガンメタル、中二病的で実に良いな。
百円玉が銅とニッケルの合金で、五百円玉は昔は百円と同じだったらしいけ、ど色々な金属を混ぜている様だ。多分偽造したバカが居たんだな、粘土で型取って溶かした合金を流すだけの簡単な作業だ、マニアックな工業高校なら実習で鋳物の授業をするかも知れないしな。ウチの高校は鍛造の実習だったがアレは楽しかったな、無駄に折り曲げて伸ばしてを繰り返してダマスカス鋼風な物を作ったり……
「仁、何を作ってるです?」
「ゆうなか、超合金を作れないかなと思ってな」
「ガンダリュウム合金ですか?」
「ガンダニュウム合金は流石に作れないだろう」
「ガンダリュウムです、間違えるなです」
「わかった、わかった」
コイツの親か親戚は重度のガノタだと言う事がな。
「その合金は何で出来てるか解るか?」
「ルナ・チタニュウムと言って、チタンとアルミニュウムとレアメタルで出来てるです」
「そのレアメタルとやらが鍵だな」
「で、出来るですか」
そんなに目を輝かせて言うな女の子だろうが、とんだ英才教育をされたものだ。
「んで、ガンダムの重さは?」
「約43tです」
ガンダムの身長は解らないが。俺の10倍位だろう。
俺の身長のサイズで4.3tか、かなり重いな、何で出来てやがる。
多分チタンとかアルミとかは軽量化の苦肉の策だな。
するとレアメタルは元素番号のかなり下の方の奴だな、劣化ウランとかが兵器として使用されてるからその辺りか?
アムロ被爆してたんだな、劣化ウランを使うとニュータイプになれるのか?
「チタンが日本で取れたら考えておくよ」
放射性物質は却下だ、チタン合金なら考えてもいいが……
「絶対ですよ」
「取り合えず銅の合金で我慢してくれ」
ガンメタルと呼ばれる五円玉と十円玉の合金が軸だな。五円玉の素材は真鍮と呼び、別名貧者の金とよぶらしい、青銅器が鉄器を駆逐したと言う話は聞かないので真鍮ベースで行く。
「真鍮をベースに使用と思うんだが言い案は無いか?」
「オリハルコンですか?」
聞く話によると真鍮に使う亜鉛が900℃で蒸発するため、中世ではロストテクノロジーで、恐らくオリハルコンは真鍮製だというのが科学者の意見らしい、しょぼいなオリハルコン……
「俺達で真のオリハルコンを作ろう」
「おぉ、イイですね」
俺達はがっちりと手を取り合い意気投合した、危なくガンダムを作らされる所だった現実的な落とし所に落ち着いて良かった。
真桑瓜は縄文時代から存在していて、真桑瓜と言う名前が付いたのが2世紀だそうです、アフリカ及び中東原産誰が持ち込んだ、植物系のオーパーツですね
仁が最初から持っている短刀は布都御霊と言う設定ですが、仁は包丁としてしか使わないので気にしなくてもいいです




