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20話 くくり姫と月読ゆうな

意味深なタイトルですが今の所モブです。今後の活躍に期待して下さい。


日本神話のツクヨミはアマテラスとの壮絶な兄弟喧嘩の末、顔も見たくないと月に引っ込みます。たまに日中に月が出ている事を考えるとツンデレキャラですね。ちなみに男神です。最近の創作物で性別が逆転する事は良くある事なのであまり気にしないで下さい。

 熊野暦21年2月中旬


 冬の寒さも少し和らぎ梅の花が咲いて来た、もう少しで春だな。

 そんな中岐阜より人がやって来た。岐阜市周辺を治める土岐の耕一さんだ。

 熊野邸に何故か俺も呼ばれ、合って話す事になった。


「熊野様、食料の支援ありがとう御座います。お陰で冬に餓死者を出さずにすみました」


「食料支援の提案をしたのは、俺じゃなくそこに居る仁だ」


「お、俺ですか?」


「お前、紙の原料と食料を同じ重さで取引してたろ」


 そういえばそんな事していた気がする、海で釣りすれば魚が手に入るし最近オーク肉も出回ってるから元手はタダに近い、我ながらアコギな商売だと思う。


「もう少し、高く買い取りましょうか?」


「滅相も無い、春になれば山に入れますし今までの量で十分かと」

 そろそろ山菜の季節か……


「タラの芽やふきのとうが取れれば、十倍の量の米で交換しますけどどうです」

 kg3000円位が妥当な値段、いや安すぎるか?


「いえ、そちらでも取れる物にそんな値段を付けて貰う訳には行きません。半分で結構です」

 欲の無い人だな、熊野領の人には土木作業に従事してもらうため、山菜の入荷量は確実に減るから気にしなくても良いのにな。


「わざわざ礼を言いにここまで来たんじゃないんだろ」


「熊野神社で巫女を募集していると聞きまして、ぜひ私の娘をと思った次第で有ります」


 おお、探しに行く手間が省けたな、耕一さんが手を叩くと身なりの良い娘が入ってきた。うずめと同じ位か?


「くくりと申しますどうか良しなに」


 しっかりした娘だな。うずめに爪の垢でも飲ませてやりたい。


 その後の話合いで、岐阜市周辺でも現代式の田植えを広め、堆肥などの作り方を教える事になった。

 熊野領では姉妹の奉納舞による謎の力で、連作障害と言う言葉は無いが念のため使用している、牛を生産しているためどうしても堆肥が出来るから、もったいないと言う意味合いの方が強い。

 それと、木曽三川を利用した交易も正式に決まった。山菜の値段は5倍の重さの米、もしくはそれに順ずる魚の干物で手が打たれた。もしかしたら、現代と違い山菜はいっぱい取れるのかもしれないな。


 小難しい話は熊野さんに任せ、くくり姫を連れて熊野神社に向かった。


「あ~ お兄ちゃんだ~」


 うずめは走ってきて、俺に吉田沙織バリの殺人タックルをかまして来る。何時ぞやの組み手以来うずめのマイブームになっていた。最近慣れてきて手前で潰すがのだが、今回はフェイントを入れ横から来た。


「ぐふぅ」

 思わず情けない声を上げたが、倒される事は阻止出来た。


「うずめ、危ないでしょ」


「えへへ~」

 駄目だ全然反省していない。俺は後ろに隠れていた、くくり姫をうずめに紹介し天音さんを探した。


 天音さんは詰め所(おみくじとか売っている所)の裏に隠れていた。


「天音さん、こんな所でなにしてるんです?」


「ひゃん、じ…… 仁さんの方こそ、な、何でこんな所へ」

 まずいな何か警戒されてるぞ、最近奇兵隊の中での俺の立ち位地は、エロの伝道士になりつつ在る。

 多分隊員の誰かか、その彼女が「最近彼が凄くて」とか、のろけ話を聞かせたに違いない。あまり触れない方向で行こう。藪をつついたら何が出てくるか解らない。


「土岐の耕一さんと言う方から娘を預かりまして、天音さんに適正を見てもらおうかと」


 以前俺も試して貰ったが、体に魔力を通すと体の中で循環するかそのまま排出されるらしい。多少でも循環すれば魔法の適正有りと判断されているが、属性とかはまだ解明されていない。

 熊野領には50名ほどの魔法適正者がいて、全て土木工事に従事している。


「天音さん、どうですか?」


「この子は高い適正が有りますね」

 それなら奉納舞をマスターすれば岐阜県は安泰だな。問題は愛知県だ、鶏肉も欲しいので顔を出して見ることにした。


「熊野さんちょっとあゆちの里まで行っていい?」


「適正者探しなら天音も連れて行け2月は暇だからな」


 個人的にはうずめの方が気が楽なんだけど、うずめに魔力適正を計る事は出来ない。

 俺は船であゆちの里に向かった。船を使うと4時間ほどで着く伊良湖水道から流れこむ海流を利用するため意外と早く着く、帰りは木曽川からの流れと離岸流を上手く利用すると、3時間位で北畠周辺に出るな。

 現代の原動機付きの船だと1時間かからないが、無いものねだりは止めておこう。


「天音さんあそこが常滑で、焼き物に使う良い土が取れるんですよ」

 俺は、現在中部国際空港が在る辺りを指差し天音さんに説明した。


「そんな物が有るんですか? 仁さんは本当に物知りですね」

 実家が日本料理店でよかった。職業柄焼き物には詳しい。あと焼き物と言えば瀬戸だよね、こっちで焼き物ブーム来れば尾張一帯も潤うかもしれない。


「着きましたよ天音さん、さあ手をどうぞ」

 天音さんの手を取り桟橋に登り、あゆちの里に入ると里の人が出迎えてくれた。


「おう、あんちゃん久しぶりだな えらい(すごい)べっぴんさん連れてどうした?」


「お久しぶりです、こちらは伊勢の熊野さんの娘さんですよ」

 俺は天音さんを紹介し、ここに鶏を分けに貰いに来たのと交易品を探しに来た事を伝えた。


 尾張、この地方は織田信長が清洲城の城主になった時点でGDPが70万石有った。津島と熱田神宮の利権が有ったとは言え、この辺りは肥沃な大地だと言えよう。ちなみに美濃・尾張・伊勢の三国で120万石だ。単純計算で伊勢の3倍の石高を誇っている。信長の親父は美濃の斉藤家・長野山梨の武田家・静岡の今川家と小競り合いを繰り返しながら家を守ってきた。清洲は斯波家だ。つまり地方領主の一部下が三国を抑えていた事になるな。


 今も昔もこの地方を悩ませるのは水害だ。伊勢湾台風の教訓を得て、日本屈指の排水施設を持つ名古屋市だが、毎年床上床下浸水が起こると言ったら理解してもらえるだろうか?


 時の権力者が試行錯誤しながら治水をして、現在の川の流れに成ったのは江戸時代中期(1755年)になる。施工したのは薩摩藩だ。名古屋城も薩摩藩が主な施工主だな。名古屋市民は鹿児島に足を向けて寝るなよ。


 度重なる水害に悩まされるが、山から運ばれる栄養豊富な土砂により、チートを使っている伊勢より肥沃な大地が広がっていると思ってほしいが、その生産は安定しない。

 非常に残念な土地が今の尾張地区の姿だ、何か交易品が有れば支援できると思う。東海三県の安定は天下取りの最重要項目だと言うのは歴史が証明している。


三河?そんな物は知らん、メタな話この物語のタイトルは西遊記だ。 


 俺はこの地方を何とかしたかった。あゆちの里長に断りを入れ近くを散策した。

 桶狭間周辺に有松鳴海絞と言う文化が有るので、藍染めの原料が有るかと思ったが無かった。仕方なく現在で言う名古屋市周辺を、熱田区から中区に当たる場所を歩いてる。


「場所的にこの辺りが古渡城跡かな?」


 現在の地図で言うと中区東別院か?名古屋テレビの横にあるこの城跡は、清洲に移り住むまでの織田家の居城だ。信長の親父の墓は大須観音周辺にある万松寺で、信長が仏前で末香を投げつけたエピソードで有名な寺だ。ゲーマーズの裏にあるから暇つぶしで良いので参拝してほしい。


「かなり広い田園地帯ですね」


「でもこれの何割から米が取れるかが問題なんですよ」


 俺は天音さんにお願いして、近隣住人から魔法適性者を探して貰った。

 その間、俺は近くを散策していると何か光ったような気がしたので、そちらを探しして見ると人が倒れていた。

 これは現代人だな、セーラー服はまだこの世に存在しないから間違いないだろう。


「君、大丈夫か?」


「う~ん、お兄さん誰です」


「俺は天野仁と言う君は?」


月読(つくよみ)ゆうなです」

 月読さんは大須商店街の近くにある携帯ショップに寄った帰りに、こちらに飛ばされてきた。持っていた携帯の画面を見ると平成30年の2月13日だった。混乱をきたさないよう説明したが、納得したがどうかはわからない。とりあえず天音さんと合流する事にした。


「天音さん、ただいま」


「その子はどうしたんですか?」


「俺と一緒でマレビトだと思う、同郷なんだ熊野領で面倒見れないかな?」

 転生者と転移者とは違うかも知れないけど合わせてマレビトとして置こう。


「私は良いと思いますけど、お父様に聞いて見ませんと解りませんね」


 当初日帰りの予定だったが、月読さんが心配だったので1泊させて貰った。

 一晩3人で話合ったりした結果、月読さんは天音さんに懐いたみたいだ。今ではお姉さまと読んでいる。

 何故か俺の事は仁と呼び捨てだ。何か悪いことした?


 次の日の朝、俺達はあゆちの里で鶏を分けてもらい、かえる事にした。あゆちの里周辺には5人の魔法適性者が居たので土魔法を伝授し、里の南に位置する天白川から護岸工事を進めてもらい、後日熊野領からも人手を出すことを約束した。熊谷組は志摩地区の工事に当たる為、奇兵隊から人手を出すことになるだろう。地方になじみ情報種集する、当初の運用目的に近い仕事をしてもらう事になる。いい加減給料払わないとな。そろそろ仕込んだ日本酒が出来るから、それで手を打ってもらうかな?


 熊野さんの了承を得て、月読さんも熊野神社で働く事になった、この世界には魔法が有ると伝えた翌日には、どうやってるかは知らないが3個のお手玉を自由自在に飛ばしていた。


 くくり姫の方は適性は有る物の苦戦しているようだ。転生者特典みたいな物があるかもしれないな。

 俺にも何か特典ついてるのかな?体は丈夫だけど…… 俺一度トラックに引かれて、ミンチ状態から再生してるんだよね。腕とか切り落としたら生えてきたりするのかな?

怖くて試す気にはならないけど……


「仁様、ここに居ましたか、うずめ様がお呼びですよ」

 くくり姫が俺を呼びにきた。


「うずめが? また碌な事じゃ無いだろう」


「そう仰られると、うずめ様が悲しみますよ」

 うずめの悲しむ姿とか想像できないな。熊野神社に行くと元気に鹿に乗るうずめと、倒れているのは月読か?

「おい 大丈夫か?」


「もう…… 駄目です」うぷ

 これアカンやつだ、以前の北畠の子供達と一緒だな。


「くくり悪いが水を持ってきてくれ」

 俺はそう言いつつ月読の背中をさすってやった。この後の描写は乙女の名誉のため控えておく。

 鹿に乗ってたら俺もこうなるのか? 明日は我が身だな、移動手段の確保は必須だけど何か手を考えないとな。

 結局うずめの用件は、この倒れた月読の介抱だった。やはり碌な事じゃない。


 そうして、熊野神社に二人の巫女候補が増え2月が過ぎて行った。





くくり(きくり)姫は岐阜県と石川県にまたがる白山のご神体と言うか擬人化キャラです。

岐阜出身の女性の名前に良いのが浮かばなかったので、この名前になりました。熊野姉妹の側使えで暫く進めます。

名前の呼び方は好きな方で脳内変換して下さい。作者もたまに間違えるかもしれません。


月読ゆうなは何となくです。名前は沖縄の方言で月の意味のゆぅなからですね。

機動戦士ガンダムを生み出した名古屋テレビ周辺で見つけたので、金属製の杭を自在に飛ばす方向で行きますがビームは出ません。紙装甲の天音さんの護衛役かな?


次回から くくり ゆうなと呼び捨てにします


湧き水が出る所をあゆちと言いその訛ったのが愛知県の由来です

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